表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第三章 イングズ共和国動乱記
89/361

89 厄介事

アグルの言葉が室内に響く。

私は勿論の事、ランデル達五人も目を丸くしている。

「あー、その、なんだ。今のは言い方が悪かった。まずは落ち着いてくれ」

またしても坊主頭を撫で回しながらアグルが苦笑いを浮かべる。

もしかしてだけど、事ある毎にそうやってるから坊主なのでは、なんて若干遠い目になりつつ、またしても厄介な事になっていそうな予感に知らず嘆息してしまう。

「とりあえず話してくれる?どういう状況なの?」

固まってしまった五人の代わりに私が先を促す。

相変わらず頭を撫でながらアグルが頷く。

「何と言ったらいいのか、要はアレだ。議会を牽制する為の方便というかだな。一応魔物自体は居るっちゃ居るんだが、本当の目的は協会の意志を無視するなって見せつける為の示威行為だったんだ」

「つまり、本当に意味も無くハンターを呼び寄せて、それを見せつけただけだったの?」

「まぁそうなる。ああ、一応だが、アイツとは事前に話をしてある。じゃなきゃこんなバカげた事はしねぇさ」

なるほど、ハルヴィルも共謀していたのか。

でも、結果としてはそれが裏目にでてしまったという事になる。

「俺の引き締めが甘かったせいで余計に対立が激化しちまった。尻拭いみたいでワリィが、ウソをホントにせにゃならなくなっちまった。その分報酬は弾むし、嬢ちゃんは特に部外者だし大っぴらに出来ねぇがそこも含めてちゃんと謝礼は出す。だから、この通りだ」

机に両手をついて深々と頭を下げるアグルに、ランデル達が慌てて声を掛ける。

それを眺めながら、私は少しだけ考え事をしていた。


アグルは苦労性ではあるけど、その分信頼感があるし実際ランデル達も敬意を払っているのが分かる。

私も大して言葉を交わした訳ではないけど、それでも彼がそれなりに信頼に値する実直な人物である事は何となく分かっている。

そんな彼の下に居るハンターが、幾ら不満が積もったからと短絡的な行動に出るだろうか。

協会と議会の関係性まで把握してはいないけれど、以前から続いていたという軋轢がそれぞれの組織にどこまで浸透しているのかは正直分からない。

普通、組織の規模が大きくなるにつれ、細かい機微は下の者になる程に薄れるものだ。

もしハンターによる議員への襲撃がランデルと同じ位の熟練者が行ったのだとすればまだ理解できる。

古参になればなるほど、組織との考え方は一致していくはずなのだから。

でも、実際はそうじゃなかった。

魔物の脅威が大したことではないと理解出来たからか、ここに至って私は少し違和感を感じ始めたのだ。

「それなら一つ提案があるわ」

机を軽く叩いて六人の注目を集める。

少しは落ち着きを取り戻した彼等の顔を見回す。

「少し気になる事があるの。魔物の方が大した事が無いなら、それはランデル達に任せたいの」

「お前さんは別行動をするって事か?」

アグルの言葉に頷いて、チラリと窓の外に目を向ける。

「議員の襲撃が気になるのよ。それを調べたいの。出来ればコッソリとね」

渋面になるアグルと、逆に合点が行ったように頷くランデル。

「つまりあれか。表向き君は俺達と同行しているとする訳か。それを隠れ蓑にあの件を調べると」

「ええ、理解が早くて助かるわ」

「しかし、どう誤魔化すつもりだ。ランデル達はともかく、コッチにゃお前さんの姿を見た奴がそれなりにいるんだぞ」

その心配は最もだけど、私には何も問題にならない。

口で説明するよりも見せた方が早いと、この場で髪の色を黒に変え、瞳の色も変化させる。

リューカとリューナの双子が目を輝かせているのに少しだけ笑みを浮かべてしまうけど、気を取り直して話を続ける。

「この通り、見た目なら幾らでも変えられるから問題ないわ」

「むぅ、ならまぁいいが。しかし、何が気になるってんだ?」

「ランデルなら分かると思うんだけど、その襲撃をしたのが若いハンターってのが少しね」

腕を組んで暫し考え込んだランデルが、何かに気付いたのか顔を上げる。

「グランス。確かやらかしたのってまだ新人だったよな」

「そうだね、まだ数か月で訓練中だったはずだよ」

流石、調べてはいたのだろうかすぐに情報が出てくる。

「人となりとかは?」

「詳しくは調べてないけれど、特筆するような事は無いはずだよ。襲撃についても、衝動的だったと話してるそうだし」

「なら、これは分かる?」

目を細めて、声を少しだけ潜める。

「彼らはどうして議員が通る道を知っていたの?」

一瞬で室内に緊張感が奔る。

アグルは顎に手を当てて考え込み、ランデル達もそれぞれが理解したと言わんばかりに頷いたりしている。

その彼等に向けて私は指を二本立ててみせる。

「私が気になったのは二つ。一つは、彼らが襲撃する場所をどうやって決めたのか」

各々が頷くのを見て、さらに続ける。

「二つ目が、彼らは本当に自分の意志で襲撃を計画したのか」

「おい、まさかそいつぁ、、、」

「ええ、何者かが協会と議会の対立を企てた可能性もある。私はそれを調べる」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ