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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第三章 イングズ共和国動乱記
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86 生じた軋轢

話が一度落ち着いた所でハルヴィルがお茶を淹れ直してくれた。

コイツは人当たりも良くて気も利いて一体何なのだろうか、いや議員か。

冗談はさておき、二人から得られた情報は大きい。

経緯はどうあれ、議会と協会の対立は決定的となってしまった。

ハルヴィルとアグル、二人がどう立ち回った所で最早どうにもならない段階にまで来てしまっているし、だからと言って何もせず手を拱いている訳にもいかない。

なるほど確かに頭を抱える状況だ。

しかも、それに加えて魔物の狂暴化まで起きているとあれば、特にアグルの気苦労は想像すら出来ない。

(魔物の狂暴化ねぇ)

実を言うと、それに関しては一つ思い当たる事がある。

言うまでも無く、フェオールでのあの戦いだ。

アルジェンナによって生み出され、暴走させられたあの魔物の群れ。

今この国で問題になっている魔物達は間違いなくその時の影響を受けたのだろう。

断絶山脈に溜まった魔力が周囲の生き物達に影響を及ぼし、結果こうして溢れ出始めている。

なら、私としてもそちらについては他人事として放置は出来ない。

多分だけど、私の放った魔法も少なくない影響を与えているだろうし、何より。

「こうして出会ったのも何かの縁だしね」

私の呟きに二人が訝しげな表情を浮かべる。

それを軽く受け流してお茶を飲み干し、頷いて笑みを浮かべる。

「魔物の方は私が対処してあげる。そうすれば貴方達は自分の事に専念出来るでしょ?」

「それは幾ら何でも了承できん!数もそうだが、とにかく手を付けられん程に暴れてるのもいるんだぞ!」

「その為にハンターを集めたのです。議会としても流石に了承する訳には参りません」

二人の言い分は理解できる。

偶然出会った見ず知らずの女に国の危機足り得る状況の解決が出来るなどと考えが及ぶ訳がない。

だけど、それはあくまで普通の人が相手ならば、であろう。

私が普通かと言うと、それはあり得ない。

自分で思っても笑ってしまう位には埒外の存在なのだ。

まぁ、そうであるが故に信じてもらうのも理解してもらうのも至難ではあるが、幸いな事に私には便利な肩書がある。

あまり名乗りたくも無いし、大っぴらに喧伝されるのも困りけど、こういう時にこそ都合良く利用しない手もない。

「心配は無用よ。フェオールの話は知ってるでしょ?聖痕に選ばれた英雄と聖女」

「それは、まぁ。詳細は流石に伏せられてましたが、彼の者達が現れた、とは通達が」

「俺もハル坊から聞いたな。んでもって、何がどうしたかは知らんが聖女は行方不明になってるだとか」

どうやら王子様はやるべき事をやってくれているようだ。

それなら話は早くて済む。

「ええ。その聖女だけど、どこに居るか知ってるって言ったら?」

私の言葉に目の前の二人が目を丸くして見つめてくる。

細かい事は知らずとも、あの北平原での戦いはハンターも参加していたのだ。

そこから聖女の活躍については聞き及んでいるだろうし、その噂の人物の助力が得られるなら彼等も否応はないだろう。

という訳で、ネタ晴らしと行こう。

「まぁ知ってると言うか、今目の前に居るんだけどね」

理解の追い付かないであろう二人をニッコリと笑顔で見つめ返す。

トドメとばかりに胸の聖痕に魔力を流して浮かび上がらせると、いよいよもって二人の顔が面白い事になる。

ついでに、私は一つの疑問に答えを得た。

当人も違和感を感じてはいるのだろうけど、それ以上に目の前の私の事で一杯一杯なのだろう。

隣のアグルなんかはいよいよ表現のしようがない表情変化を目まぐるしく繰り返しているし、そろそろ落ち着いてもらおう。

「とりあえず、私についてはここだけの話にして欲しいの。それだけ了承してくれるなら魔物は私が対処してあげるわ」

ニッコリ笑顔に魔力を乗せて凄む。

ハルヴィルはともかく、アグルならこれで私の実力も正体も骨身に染みて理解できるだろう。

事実、さっきまでは何だかんだまだ何処か余裕があったその顔が一瞬で戦場でのそれに切り替わっている。

「アンタ、マジモンだな。聖痕まで持ってやがるし、全く。しかしなぁ、、、」

まだ何か気になるのか、アグルがまたしても渋面で腕組をしてしまう。

「アグル。もう体裁を気にしてる場合ではないのでは?議員としては、これで協会が引き下がってくれればお歴々の説得も早く済みますよ」

「それは分かっちゃいる。だがなぁ」

なるほど、アグル個人としては私に投げてしまえば一挙解決。

でも会長としては、それではここまで大々的に動いておきながら外様の者に解決を頼んでしまったら色々と不都合が生じるワケか。

なら、折衷案でも出してあげた方が話が進みそうだ。

「なら、ハンターを何人か貸して。人選は任せるけど、私のついての秘密を守るのだけは徹底して。これならいいでしょ?」

暫し考え込んでいたけど、最終的にはそれでいいとようやく頷いたアグルと握手を交わす。

ハルヴィルもならば、と自身のやる事を定めたのか爽やか笑顔で頭を下げてきた。

さて、またしても奇妙な事に巻き込まれたけど、果たしてどうなる事か。

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