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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第三章 イングズ共和国動乱記
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82 魔獣討伐協会

イングズ共和国に滞在して数日が過ぎた。

その間に何があったかと言うと、実は全くの平和だった。

私も正直驚いているのだけど、ハンター達は特に問題を起こす事も無く日々を過ごしていた。

ある程度の依頼はあるのか、ハンター達の出入りはそこそこにあった。

それでも、集まっている大半の人達はここに留まって、時折訓練の為にか街の外へと出掛けて行く程度だった。


かく言う私は何をしていたか。

一言で言えば情報収集である。

次の目的地については勿論だけど、やはり今のイングズ共和国の状況も気になる。

一見落ち着いて見えるけれど、どこか不穏とも思える空気が感じられもする。

これは殆ど勘みたいなものだけど、これと似た雰囲気をつい最近も体感している。

そう、アンスリンテス魔導国。

海の向こう、ウルギス帝国による謀略が謀られていたあの国の雰囲気と、どこか似ているのだ。

正直まさかと思った。

同時に、あり得なくないとも思っている。

元を糺せば、フェオール王国ですらもその影は見え隠れしていたのだ。

帝国の手は既に中央大陸全域に及んでいると考えてもおかしくはない。

だから、それを確認する為に暫く留まると判断した。

とは言え、伝手がある訳でも無い私が情報を集めるのはかなり難易度が高い。

しかし、それを覆せる可能性のある物がこの国にある。

それこそ、魔獣討伐協会だ。

残念ながら私はこの国の住人でもないし、そもそもハンターになる気も無い。

だけど、依頼人としてならその限りではないし、そもそも本当に依頼を出す必要も無い。

つまり、そういう体で協会へと赴き素知らぬ顔で情報を集めてしまえばいいのだ。


という訳で私は魔獣討伐協会の本部へとやってきた。

やって来たというか、実は泊っている宿の目と鼻の先に協会本部はあったりする。

もちろん、ハンターの動きを観察する為でもあるし、そもそもここは町の大通りに面しているから全体の動きを見張るにも適している。

ちょうど、今は人が少ない時間帯らしく要らぬ注目を集める事も無さそうなのでこれ幸いと出てきた。

「しかしまぁ、立派な建物だこと」

分かってはいたけど、こうして目の前で見上げると本部の建物は横にも縦にも大きい。

まぁ世界中の依頼を受けて、それを適任なハンターに割り振っているのだし、勿論それ以外にも様々な手続きやらを行っているのだから当然と言えば当然ではあるのだけど。

とは言え、このまま見上げていては何も始まらないのだし、さっさと中へ入るとしよう。


入口を潜り中へと足を踏み入れると、広々とした室内に落ち着いた雰囲気の光景が広がっていた。

正面には受付窓口が六ケ所あり、今も何組かのハンターが何かしらの手続きをしている所らしい。

右手側にはまた別の窓口が設けられていて、どうやらそっちは依頼の受付をしているようだった。

左手側には休憩所を兼ねた喫茶室があり、そちらにも数組のハンターが屯しているようだ。

その彼らの視線がふらりと入ってきた私に集中する。

困惑混じりの、同時に値踏みをする様なそれを受け流して右手側の受付に足を向ける。

窓口に居るお姉さんが私に気付いたのか、書類から顔を上げて掛けていた眼鏡の位置を直した。

「いらっしゃいませ。依頼の手配でしょうか?」

「初めてだから色々聞きたいんだけど大丈夫かしら」

「はい、大丈夫ですよ。どうぞお掛け下さい」

備え付けられた椅子を勧められてそこに腰を下ろす。


それからあれこれと質問したり相談したりとしながら、それとなくこの国の状況を聞いたりした。

お姉さんもここ最近は大した仕事も無かったらしく、喜んで色々と話をしてくれた。

お陰で色々と分かった事がある。

今は宿に戻り、夕食もお風呂も終えて得られた情報を纏めている所だ。

「しかしまぁ、思っていたよりも厄介そうな状況ね」

受付のお姉さん曰く、今の協会の状況について誰も把握できておらず、全て協会長からの指示なのだという。

それも、いつもなら詳細の説明があるのに今回は何故かそれも無く、ただハンターを呼び戻せと言ってきただけだという。

魔獣討伐協会の会長、アグル・ラグル。

自身もかつては優秀なハンターとして活躍し、何なら今でも時々飛び出して行って魔物を刈ったりすしているという豪胆な人だ。

しかしながら知略にも長けており、幾つもの作戦にて陣頭指揮を執って成果を上げたりもしてきているらしく、そういった実績もあって数年前に会長になったのだそうだ。

それだけ成果もあげて、実績と信頼も積み重ねたはずの協会がなぜ今になって不穏な動きをしているかと言うと、どうやら横槍が入り始めたらしい。

それはもう何年も前、実際には魔獣討伐協会が本格的に軌道に乗り始めた頃からあった事で、特にここ数年はそれが顕著になっているという。


即ち、この国の議会が、自身の成果以上に他国との信頼関係を築いている協会に対し危機感を抱いて、干渉し始めているのだという。

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