表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
79/363

79 エピローグ・目指すは東

結局の所、一晩中逃げ続けて賑やかと言うよりも騒がしい一日が終わった。

まぁ結果としては私が逃げ切り、晴れて正式に自由の身となったのだけど、ダゲッドやアドネアの本音としては胸を撫で下ろしているようだ。

まぁ色々とあったけども、結論としては聖痕持ちは一人居れば十分という事らしい。

私としては有難いけど、同時に、この数日間のアレコレは何だったんだと叫びたい所でもある。

何て事をつらつらと思いながら、今は街の真ん中にある広場で休息を取っているところだ。

周りにはオーフェ達を始め、各組織の人達も休んでいたり、或いは何かしらして動き回っていたりと様々であるけど集まっている。

少し前まで何やら忙しそうにしていたアドネアが戻って来て、私の周りには代表者が勢揃いしている。

「ふぅ、やっと一息付けますよ」

優雅に紅茶を飲んではいるけど、私を追っている時は結構はしゃいでた気もする。

今更そこに触れるのも野暮ってものだろうし、何よりも。

「リターニアさん、もう行っちゃうんですかぁ?」

「それなりに楽しめからね。とは言え面倒事も増えそうだし、これ以上引き留められる前にさっさと次に行くわ」

準備は既に終わっている、と言うか、この話をしたら何故か色々と貰ってしまったのだけど。

お陰で手間が省けたし、こうして出発前にゆっくりしていられたのだけど。

「むぅ、残念ではありますが仕方がありませんねぇ。それで、何処へ向かわれるんですか?」

「元々は帝国に行ってみようと思ってたんだけどね、こうもキナ臭いんじゃそんな気にはなれないから、南か東よね」

「あの国についてはこちらで調べる。こうも好き勝手されたのでは舐められたままになるからな」

静かに闘志を漲らせるダゲッドが拳を突き上げる。

それに呼応するように魔導教導院の人達も声を上げ始める。

気合が入っているのは大変宜しいと思うし、そちらで対処してくれるなら私としても大歓迎ではあるけど、それはそれとして煩いのはどうにかならないだろうか。

そんな思いを込めた視線をアドネアに向けると、流石は慣れた物という事なのか、彼女はしっかりと耳を塞いで素知らぬ顔をしていた。


ようやく騒ぎが一段落して、私は町の出口前へと来ている。

見送りにはオーフェとリーフェ。

他の三人はやる事があると、広場で挨拶をして別れている。

「偶然とはいえ、お会いできて良かったですよぅ」

「面倒事に巻き込んでしまって申し訳ありません」

仲良く並ぶ二人と向き合いながら、町の景色を目に焼き付ける。

結局、あまりゆっくり出来なかったけどそれはそれとして楽しめはしたから良しとしよう。

「ま、横槍が入ったってのもあるからね。それよりも、一応は気を付けるのよ」

「ええ。しっかりとリーフェを支えますよぅ」

「何故か知らない内に私が総責任者にされてたのは納得してないけれどね」

そう、一晩明けた今朝方に、リーフェは唐突に総責任者に任命された。

しかも、オーフェやグウェイブ院長はともかくとして、ダゲッドとアドネアまでもがそれを支持した。

というか、リーフェを推したのがまさかのダゲッドだったのだ。

今回の件で帝国の脅威を再認識した彼は、自身が上に立つよりも現場で陣頭指揮を執る方が鬱憤を晴らせると息巻き、アドネアもフェオールやイングズとの同盟を打診したりと、外交官として動く事を決断したらしい。

グウェイブ院長は後方支援体制を整える為に学院生をさらに募るという。

そしてオーフェは、リーフェなら自分を上手く使ってくれるだろうと暢気に構えている。

既に疲れ切っているリーフェの今後の気苦労が想像できてしまうが、まぁ今までと違ってそれを支える人達が居るのだし、きっと大丈夫だろう。

部外者である私がそこに入り込んでも邪魔にしかならない。

「じゃ、そろそろ行くわね」

「はい、お元気で~」

「旅の無事を祈ってます」

二人の見送りの言葉を受け取って、私は歩き出した。

広大な魔導具に覆われたアンスリンテスの外に出ると、そこには突き抜けるような青空が広がる。

吹き抜ける優しい風に揺れる髪を抑えて、私は次なる一歩を踏み出した。






中央大陸最西端。

アンスリンテス魔導国に備わる大きな港は、海を隔てた西側大陸との貿易港として有名である。

しかし、今その港には多くの船が停泊し動く気配は無い。

時折出入りする船もその全てが中央大陸の南海に浮かぶエオロー連合国との交易船だった。

行き交う船乗りや商人は忙しそうにしつつも、時折海の方へと目を向ける。


突然封鎖された玄関港。

人も商品も、全てのやり取りが途絶え沈黙に沈んだ西の大陸に、誰もが言い知れぬ不安を抱いていた。

特に、中央で起きた騒動の噂が伝わって来てからは特に。


今はまだ平穏な空気が満ちているが、誰もが言い知れぬ不安と共に一つの予感を抱いていた。


 ・・・大きな嵐が巻き起こる・・・


太陽の日差しを受けて輝く海は、今はまだ静かに揺れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ