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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
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77 罠

激動の組織対抗戦三日目が過ぎ去り、次の日になった。

既に日は高く、そんな空の下を私は走り回っている。

背後には私を追いかける魔導教導院の職員達。

加えて、姿は見えないけど町のあちこちに魔導開発局第一と第二の連中も潜んでたりする。

そしておまけとばかりに前方の十字路からは魔導学院の一団までもがやって来ている。

この分だと近くの建物の中に中央議会の手の物も居る事だろう。

対抗戦に参加する五つの組織、その手勢がほぼこの場に集結している。

いよいよ決着かと町の人達は静かに様子を見守っているけれど、残念ながら外れである。

これは昨日の話し合いで私が提案した、帝国の暗殺者達を誘い出す為の陽動だ。

陽動と言っても大した事をする訳ではない。

見ての通り、各組織の人員を私に差し向けてもらっただけ。

彼らは私を追っている、と見せかけてその実それぞれの得意分野を用いて不審人物を探っている。

そもそも、暗殺者達がオーフェを狙うのは彼女を捕らえる為なのは間違いないのだけれど、アドネアが襲われた理由が分からない。

これがダゲッドであったなら彼と繋がる謎の人物の手の者か、繋がりを断つ為の工作だと判断出来るのだけれど、彼女にはそういう繋がりは無い。

であるなら、可能性としては二つ。

彼女個人に何かしらの価値を見出しているか、そもそも各組織の長全員が標的か。

それについても当然話をしたけれど、結論としては後者の意見が有力だろうと判断した。

だからこそ、彼らの傍から可能な限り人を排して連中がどう動くかを見ようとしている。

当然、襲われた際の対策もしてある。

彼等にはそれぞれの拠点に待機してもらい、その部屋に私が結界魔法を施してある。

この結界は襲撃を防ぐだけでなく、それに対して攻撃が加えられると私を始めとして他の面々にも襲撃を知らせる事が出来る連動した物であるのだ。

まるで魔導具の様な複雑な働きをさせていると思えるけれど、実際大した仕掛けではない。

この結界はそもそも一つの魔法でしかない。

かつて、魔王として私が活動していたころに編み出し活用していた物で、複数配置を前提とした感知魔法の一種なのだ。

そこに少し手を加えて結界の機能を追加した即席の魔法で、今回の様に複数個所に同時に攻撃が来る可能性を考慮して作っていた。

まぁ今の今まで忘れていたのは秘密ではあるけども、それがあるのを思い出したからこそこの作戦を思い付いた。

あとは敵が喰い付けばいいけれど、多分現状では間違いなく動く。

これはダゲッドからの情報で、どうも帝国国内の情勢が不安定になっているらしく、こちらに居る人員との連絡が少し前から途絶えているらしい。

何かが起きていると判断した暗殺者達は早急に結果を出すべく動き出した可能性があるのだ。

であれば、この見え透いた状況であろうとも彼らは動かざるを得ない。

標的が分散しているのであればなおの事、好機であると踏んで最後の攻勢に打って出てくるだろう。


結界に反応があった。

しかも五ケ所全部。

これは流石に予想外だったかなぁ、と思わず苦笑いと溜め息が同時に漏れ出る。

まぁここで愚痴を言ってもしょうがないし、とりあえず。

「結界反転っと」

感触的にはそれぞれ三人づつってところかな?

それぞれ設置していた結界を操作して結界の内側に下手人達を閉じ込める。

これで向こうは一安心、と行きたいけど連中を拘束して貰わないといけない。

すっと右手を頭上に掲げて閃光を放つ。

それを合図に私を追っていた人達が一斉に散っていくが、勿論これも事前の打ち合わせ通り。

襲撃が起きたらこちらに居る全員を主の下に向かわせて守りを固める。

敵が動きさえすれば小芝居をする必要も無くなるから、当然本来すべき事に集中出来る。

そして。

「やはり貴様は厄介な存在だな」

予想通り、最大の本命が釣れてくれた。

「一度ならず二度までも計画を邪魔されるとは、流石は聖痕の聖女と言った所か」

物陰から姿を現したのは何処にでも居そうな、特徴の無い男だった。

でも、纏う雰囲気は明らかに尋常ではないし、何よりも既視感を感じている。

「その言い回し、もしかしてフェオールに知り合いでも居た?」

「それなり優秀ではあったが、まさかああも簡単に敗北するとは思わなかった。ただそれだけだ」

つまり、フェオールで私を襲撃した五人組。

ベオークの私兵だと思ったあいつらの正体はこの男と同じく帝国の者だったという訳だ。

恐らくは内部に潜り込んで色々とやっていたのだろう。

あの時の魔導具も裏があるとは思っていたけどまさかここでこうして繋がるとはね。

「で、のこのこ出てきたアンタはどれ程なワケ?」

「期待している所悪いが、俺は基本裏方でな。せめてもの敬意の証としてこうして出張ってきた訳だ」

そう言うや否や、男は自然な動作で懐から何かを取り出す。

何かの魔導具のようだけど、、、

「まさか!」

「さらばだ」

それが何かを認識した瞬間、急いで駆け出すけど遅かった。

男が魔導具を起動すると瞬間的に膨大な魔力が膨れ上がり、それが弾けると男の姿は消えていた。

「クソ。信じられない、まさか()()する魔導具まで作っていたなんて!」


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