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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
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76 立ち上がる時

さっきまでの苛立ちとは明らかに違う怒りの感情を浮かべているダゲッド。

これは一体どういう事だろうか、なんて思っていたら、同じ感想を抱いたのであろうグウェイブ院長が声を掛ける。

「ダゲッド君、どうしたんだね。彼の帝国に思う所でも?」

その質問にダゲッドは答えない。

「その質問には私が答えましょう。いいですね?」

代わりにアドネアが声を上げる。

だけど、

「いや、これは私が話さねばならない事だろう」

それを遮ってダゲッドが重々しい声で口を開く。

「私はとある御方の協力の下、長年帝国の動向を探っていた」

「はっ?」

「なんと、、、」

予想外の告白に院長もアドネアも驚いている。

かく言う私も衝撃を受けていた。

勿論内容にではなく、それを自ら話し始めたダゲッドに対してではあるけども。

そしてそんな私達を置いて話し続けるダゲッド。

「そも、きっかけはローディアナ、あの小娘共の父親の死が始まりだ」

「待ちなさい、あれは事故ではないのですか?」

「私も最初はそう思っていたのだ。だが、よくよく調べてみたら不自然な点があってな。それを追っていたら帝国の関与が浮上した。そして、そんな時に私はあの御方から接触を受けたのだ」

アドネアも、長い付き合いがあるにも関わらず知り得ない事が明かされて更に驚いている。

だけど、ここに来てグウェイブ院長が対照的に落ち着きを取り戻している。

何か思案するように顎に手を当てて何やら考え込んでいる。

「ダゲッド、そんな重要な事をどうして今まで黙っていたのです!」

「仕方がなかろう、敵の全容が計り知れんのだ。ローディアナとて無抵抗だった訳ではない、娘の安全やら何やらで色々と立ち回っていたようだが、帝国側もそれを承知で利用していたのだろう。結果としてあいつは暗殺されたのだ」

「もしかしてその暗殺者って、今もまだこの国に居るの?」

二人の会話で気になる点があったから口を挟ませてもらった。

アドネアは自身が襲われた事を思い出したのか、少し驚いていたけどダゲッドは然りと頷いた。

「確定ではないが、恐らくは。あの御方も帝国での大きな動きが無いと仰っていたから、つまり追加の人員も来ては居ないと考えて良いだろう」

「なら残りの暗殺者さえどうにかしてしまえば一安心ではあるのね」

「ああ。元より、貴様を引き込んだ暁にはそれをするつもりだったのだ。状況が変わったが、やる事は変わらん」

これでようやく合点が行った。

私が巻き込まれた原因があの暗殺者達なら、それを排除さえすれば平穏が取り戻せる。

「分かったわ、協力しましょう。ただし、それが終われば私は好きにさせてもらうわよ」

「私は構わん。為すべきを為せればそれで良い。まぁ欲を言えば残ってもらって色々させたかったがな」

色々と白状したからか、ダゲッドがいつもの調子を取り戻している。

アドネアも、まだ少し顔を青くしているけど私の言葉には頷いていた。

そして、ここまでずっと考え込んでいたグウェイブ院長がようやく顔を上げた。

「ダゲッド君、一つ聞きたい事がある」

「は、何でしょうか先生」

うわ、畏まったダゲッド何て初めて見た。

違和感が凄いけど彼もまた魔導学院の出身、グウェイブ院長の教え子であるのか。

場違いな事を思わず考えてしまったけど、改めて院長の話に意識を集中する。

「君の協力者は帝国の者だな?」

「それは、、、はい、仰る通り。あの御方は帝国の者です。詳細は聞いてませんが、それなりの地位に居る者ではあるそうです」

つまり帝国も一枚岩ではない事が確定したのか。

それにしても帝国国内の協力者となると、遠隔通話魔導具でもあるのだろう。

それも、海を越えての遠距離でも使える性能の物だ、それだけでも帝国の魔導具技術の高さが改めて浮き彫りとなる。

「しかし先生、それが何かあるのですか?」

「いや、ただの確認だよ、気にしないでくれ。それよりも、国内に潜む暗殺者をどうするかだ」

少し気になる言い回しだけど、今は確かに院長の言う通り、やるべき事がある。

気を取り直して話を進めようとしたその時だった。

「そういう事なら!」

「私達も加わった方がいいのでは」

オーフェとリーフェ、二人が揃ってこの場に現れた。

二人の雰囲気に院長は嬉しそうな、アドネアは何とも言えない不思議な表情を浮かべている。

そしてダゲッドに至ってはそれはもう見事なまでの無表情。

ついさっきまでの得意げな顔が何処へ行ってしまったのか、という勢いだ。

大方、さっきの話が聞かれていないか、もし聞かれていたらこれまた面倒になると思っての無表情なのだろう。

「もういいの?二人とも」

「ええ、お陰様でこの通りですよぅ!」

「引っ付かないで」

ニッコリ笑って抱き着くオーフェと、それをひょいと払いのけるリーフェ。

それを見て私も頷いて、それならと一つ作戦を思い付く。

「なら丁度いいわ。ここに居る全員で一つ罠を張るとしましょう」

全員の顔を見渡して、私は笑みを浮かべて見せる。

上手く行けばこれで全て片が付く、私の旅行を潰した報いを受けてもらうとしよう。

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