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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
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75 一難去ったその先に

アドネアに使い魔を向かわせて、私はリーフェと共にオーフェの居る魔導開発局第一へと向かった。

私の少し後ろを歩くリーフェはどこか気まずそうな表情を浮かべてはいるものの、足を止める様子もまた無い。

多分、本人も何処かで話をしたいと思っていたのだろう。

こんな面倒な状況が後押しをする事になるとは流石に思わなかっただろうけども、まぁきっかけなんてのはそういうものだろう。

無言のまま目的地に辿り着く。

先の襲撃以来、他の研究員達は念の為にという事でまだ戻ってきてはいない。

まぁ肝心の襲われた当人が当たり前の様にその日から舞い戻ってきているのは笑えない冗談ではあるけども。


相変わらず人気の無い入口を通り、階段を上がって唯一人気のある部屋へと向かう。

「あの子、まさかあれからずっとここに居る?」

「オーフェはそれが普通よ。とにかく研究大好きだから」

「まぁ分かっていたつもりだけど、大変ね」

妙な所で共感を得てしまった。

そして当の本人であるオーフェは白衣を着て研究室内を忙しなく行ったり来たりしている。

私達が居るのに微塵も気付く事無く、何やらブツブツ呟きながら作業をしている。

「怪我人が何してるの」

我慢出来ずに呆れた声音でリーフェが声を掛ける。

「うひゃあ!おやや!リーフェにリターニアさん!いつの間にこちらへ?」

「さっきから居るけど。アンタは何してるの一体」

姉妹がやいのやいのとやり始める。

一見しただけでは違和感も何も感じないけど、確かに何処かぎこちない。

暫く様子を見ていると、お互い何か気まずいのか段々と口数が減っていく。

とは言え、私も口を出す気は無い。

姉妹の問題だし、オーフェに至ってはそもそも私達がここに来た理由も分からないだろう。

それでも、一応は何かを感じ取っているのか口は閉じてしまったが手を止めてチラチラとリーフェの方を窺っている。

リーフェも同じようにどう切り出すか、いつ話始めればいいか、気を窺っているようだ。

「あのぉ」

「ねぇ」

二人の声が重なり、互いに目線で相手に譲っている。

(付き合い始めの恋人かしら?)

呆れ半分面白半部な感想が浮かんで口元が緩みそうになる。

それを何とか我慢してると、ようやく二人が動きを見せる。

「、、、気付いていましたよ、父さんとリーフェが私の為に頑張ってくれているの」

「、、、そう」

「私に言わなかったのは、、、」

「余計な事を背負わせたくなかったから。聖痕の事を知ってしまったら、もっと早くに今みたいな事が起きてたでしょ」

何処かたどたどしく、けれでしっかりと言葉を交わす二人。

それを少し離れた所で見ながら、私は考える。


聖痕は謎の存在だ。

歴史の表舞台に出てきたのは100年前の戦いは言うまでも無い。

けれど、実際それよりも以前からあるのもまた周知の事実。

だけど、その起源が分からない。

誰が、何の為に作り出したのか。

或いは、人智の及ばぬ神が賜った物なのか。

でも、それでは何故こうも人を惑わせ、周囲に混乱を齎すのか。

()()()()()()()()()で、そんな事を考えても答えは出ないのだろう。


物思いに耽っていた私の意識を引き戻したのは、仲良く語らう姉妹の声だった。

「そしたらなんと、それが過剰反応して爆発しましてねぇ」

「それで私の部屋も吹き飛ばしてくれたのね。今度やり返しておくわ」

硬かった表情も自然な笑みを浮かべられるほどに、二人は楽しそうにしていた。

これならもう大丈夫だろう。

そっとその場を離れようとした時、足元に一匹の猫が寄り添っているのに気付いた。

首から何からをぶら下げているその子を抱き上げて、それを確認する。

(これは予想外の展開!)

使役魔法を解いた猫を逃がしてあげると、寄り添う姉妹を少しだけ見つめてからそっと離れて次の場所へと向かった。


少しだけ急いで中央議会の建物へとやってきた私は、入口で待ち構えていたアドネアに挨拶もそこそこに中へと案内された。

向かった先はいつぞやの会議で使われた議場だった。

開け放たれたドアの先、室内にはグウェイブ院長と、なんとダゲッドも来ている。

院長は私に気付くと頷きで挨拶をしてくれた。

ダゲッドは腕を組んで苛立たし気に右足のつま先で床を叩いている。

「お待たせしました」

務めて平静にアドネアが挨拶をして、返事もそこそこに席に着く。

「で、一体何が起きている!?対抗戦どころではなくなっているではないか!」

開口一番、ダゲッドが吠える。

まぁ気持ちだけは分からなくもないけれど、ここで騒いでもどうにもならない。

「はいはい、そう騒がないで。大体の状況は教えたでしょう」

子供をあやす様にダゲッドを落ち着かせるアドネアの手腕も慣れた物。

それを見ていると妙な気分になるけれど、とりあえず全体を把握できている私が話を進める。

「もう聞いているとは思うから細かい所は省けど、対抗戦の裏でウルギス帝国が動いている。狙いはオーフェ、正確には彼女が持つ聖痕ね」

グウェイブ院長もアドネアも神妙な表情を浮かべる中、唯一人ダゲッドだけがその顔を怒りに染めていた。

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