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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
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74 親子の愛、姉妹の愛

「父さんは、オーフェが聖痕に縛られた人生を送らないようにと研究を始めた」

彼女の口から語られたのは、つい先日オーフェから聞いた内容と見事なまでに鏡映しだった。

リーフェはやはりオーフェに何かがあると勘付いていた。

それが何か分からないまま、ごく普通の姉妹として過ごしてきた。

だけどある日、偶然父親の研究室でその魔導具を見つけてしまった。

妹と同じく魔導具に詳しい彼女は、それを見てすぐに特殊な物だと気付いた。

その後、父を問い詰めた彼女は事の次第を聞き、決意した。

「、、、オーフェを守る。父さんと共に研究をした。本人に気付かれない様にこっそりと」

そうして何年も過ぎたある日、悲劇が訪れた。

「父さんが死んだ。表向きは事故として」

「表向き?それはどういう意味?」

穏やかなまでに静かに語ってきた彼女が、初めてその表情を変えた。


それは、怒りだった。


「あの子は知らないけど、私は聞いた。父さんは殺されたの。ウルギス帝国の奴に」

元より父の死を不審に感じていた彼女は、それを調べる為に当時調査をしていたであろうダゲッドを問い詰めた。

最初は渋ったダゲッドだが、リーフェの鬼気迫る態度に折れたのだろう、彼が独自に調べ上げた事を話してくれたという。

そして、それを聞いたリーフェは。

「怒りよりも、焦りが勝った。父さんが殺された事は勿論悔しいけど、その理由に私は心当たりがあった」

ダゲッドでも調べきれなかった真実。

敢えてそれを明かさなかったという彼女が、今始めてそれを口にする。

「帝国の連中の狙いはオーフェ。正確には姉さんが持つ聖痕。父さんは、私達が生まれてすぐに連中から接触を受けたそうなの」

私は何も返す事が出来ずに彼女の顔を見つめていた。

私が想像してよりも、遥かにややこしい事が起きていると、そう感じていた。

「理由は分からないけど、奴らは何故かあの子に聖痕がある事を突き止めてた。父さんも最初はしらを切ってたらしいけど、あまりのしつこさと、何よりもそいつらの確信を持った言動に危険を感じたらしい」

もはや考えるまでも無い。

ウルギス帝国は二十年以上も前に聖痕に関する研究と、それを用いた魔導具の開発を成功させている。

もはや脅威何てものじゃない。

「帝国は既に検証段階に移っていたのね。魔導具が他の聖痕に対しても機能するのか」

「恐らく。聖痕を探し出せる魔導具も、オーフェが作ったのよりも多分性能が高い。何せ、父さんが聞かされた話では連中、海の向こうからその魔導具を使ったらしいから」

「探知範囲が広すぎる。それでいて居場所まで正確に掴めたの?いくら何でも」

「ええ、異常が過ぎる。だから父さんは敢えて連中と取引をした」

「オーフェの安全と引き換えに検証に協力する、と?」

静かに頷くリーフェ。

ここまで聞けば凡その見当はつく。

彼は大っぴらに行動できない帝国に代わってアンスリンテスでの魔導具の実験を引き受けた。

でもそれは建前で、恐らくはその魔導具の解析をしていたのだろう。

そして、それを基に聖痕の力を抑える魔導具の開発を始めた。

オーフェの力を隠す為、平穏な人生を歩ませる為。

だけど、それを実証する為の情報が無かった。

いえ、娘を利用すればそれは出来た、でもしなかった。

当然だろう、そもそも彼は娘をそういった扱いにさせない為に敵に協力するフリをしたのだから。

そして多分、帝国もそれを承知の上で彼の口車に乗っている。

互いに相手を利用する状況。

そして、それが崩れた結果が、彼の死。


ようやく、全体像が見えた。


「つまり、貴女達のお父様はオーフェを守る為に敢えて危険な連中の技術を受け取り、それを使って逆の効果の魔導具を作ろうとした。貴女はそれを知って協力した、、、妹を守る為に」

「、、、そんな大層な物ではないわ。何も知らずに居るあの子を少なからず憎んでいるのも本当、、、聖痕なんて宿さなければ良かったのに」

複雑な感情の入り混じったその声は、それでも後悔の色は滲んでいなかった。

だけど、残念ながらリーフェの思いは一部だけ既に果たされなくなっている。

何せオーフェは既に裏事情を把握している。

父親の研究資料を持っているのだ、それに目を通せば彼女程に優秀ならすぐに答えに行き付くのは当然だろう。

でも、それをリーフェは知らない。

いや、敢えて積極的に係わろうとせずにいたのだろう。

それが擦れ違いを生んだ。

これまではそれでもまだ問題なかったのだろうが、今回の騒ぎでそれが表面化した、という所だろう。

ややこしい事情が絡み合っているけど、それでも私は思う。

(これ、結局私は何も関係ないわよね。まぁきっかけ事態は作ってしまったかもだけど)

何だかやり切れないような、でも完全に無関係を決め込む訳にもいかないし、めんどくさい状況である。

「とりあえず、リーフェ」

「なんでしょう」

ともあれ、この状況を解決する手段は唯一つ。

「貴女はちゃんとオーフェと話をするべきよ。今すぐに」

ビシッと指を向けて、逃げるなと告げる。

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