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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
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72 不穏な影

結局の所、一時間と経たずに男は屈した。

いや、それも当然かな、と目の前の惨状を見ながら他人事のように考えてしまう。

まぁ具体的には言及しなけども、見せつける様に体が切り刻まれていけば誰でも耐えられないだろう。

とはいえ、得られた情報は大したものではない。

所詮、切り捨てられる為だけに雇われた連中という訳だろう。

とりあえず男の()()を処分して、飛び散った血やらを綺麗に消し去り、今は執務室内でアドネアと向かい合っている。

まだ少し混乱している様子ではあるものの、幾分かは落ち着きを取り戻した彼女に判明した事を告げる。

「とりあえず、連中は西()から来たとあるお貴族様に雇われたらしいわ。心当たりはありますか?」

私の問いに、彼女は沈黙で応えた。

「言いたくないなら構いません。ですが、私はある程度の事情を把握しています。ここに来たのは、それを裏付ける為です」

怯えるような瞳で私を見つめる彼女に、私は少しだけ表情を和らげて続ける。

「あぁ、勘違いしないように。別に貴女達が何をしようと構わないんですよ。でも、直接的ではなくとも私を巻き込んだ。なら、その分だけは取り立てないと、でしょ?」

「それは、、、」

「私が知りたい事は一つだけ。あの連中とリーフェに繋がりがあるか否か、だけです」

そう、オーフェの襲撃とアドネアの襲撃。

状況だけを見ればこの組織対抗戦の裏で暗躍する何者かが本格的に動き出したようにしか見えないだろう。

正直、私もアドネアの襲撃に偶然立ち合うまではそう考えていた。

でも、二件の襲撃を比較してみると違和感がある。

それに気付いた時、私の中である仮説が浮かんだのだ。

さっきアドネアに対して事情を把握していると言ったけど、勿論ハッタリである。

私の中に生じた違和感と仮説が正しいのかどうか、そしてアドネアがどこまで関わっているのかを確かめる為に。

黙り込むアドネアと、それを真っ直ぐ見つめる私。

重苦しい沈黙が場を支配する事暫し。

「、、、正直なところ、私にもそれは分かりません」

固く閉ざしていた口をゆっくりと開いた彼女が訥々と話し始めた。

「私が狙われた理由は、、、口封じでしょうかね。ある物を借り受けただけなんですが」

「それって、これと同じもの?」

尋問した男から奪った魔導具を机に置くと、彼女は驚いた様にそれを見つめた。

そして思い出したように懐から同じ様な形をした魔導具を取り出して、机に置いた。

その二つは細部にこそ違いはあるものの、基本的な造りは共通している。

つまりこの二つの魔導具は同じ所で作られ、アドネアと暗殺者の渡された物だろう。

「貴女も端から使い捨ての駒としか見られてなかったのですね」

「結局はそうなのでしょうね。利用してやるつもりが、寧ろ都合よく使われていたなんて、滑稽でしかないわね」

自嘲するように呟いて魔導具を見つめる彼女の前で私はそれを回収する。

両手でそれぞれを持って改めてアドネアに見せつける様に掲げる。

「詳細は省きますけど、実はこれと似た魔導具を私は見てます。私がわざわざここに来たのは、裏でコソコソしてる連中を探る為です」

「まさか、彼らはアンスリンテスだけでなく、この大陸自体を狙っていると!?」

「そこまでは分かりません。ですがその言葉で繋がりました。協力者は西の大陸、ウルギス帝国ですね?」

私が声を鋭くさせて問うと、彼女が取り繕う事も出来ずに狼狽える。


その後、彼女の口から語られた事と、私の立てた推測を擦り合わせた結果分かった事。

まず、魔導具を流し込んでいるのは西の大陸にある大国であるウルギス帝国。

国自体が関わっているのか、或いは違う意思が働いているのか、そこまでは流石に計り知れない。


次に、これは私の感じた違和感通りでリーフェと連中に繋がりは無かった。

オーフェの襲撃はアドネアを襲った暗殺者の仲間で、寧ろリーフェはオーフェを助けた形となるそうだ。

これは密かに接触していたアドネアがオーフェ自身から聞いた事らしい。

まぁ、二人の繋がりについては薄々勘付いていた事だし、話す当人もバツが悪そうにしながらも話していたので後で追及してあげるとしよう。


そしてアドネアの目的。

結論から言うと、彼女は野心家であった、その一言に尽きる。

で、ある時接触を受けた謎の人物から魔導具を譲り受けた。

その時点で魔導具の効果も分かっていたそうだし、渡した人物に裏がある事も当然承知していた。

それでも、その時の彼女は敢えてそれを受け入れた。

自らの目的を達したら、それで手に入れた力で降りかかる火の粉を振り払う。

そう決意して彼女は己の道を邁進していった。


ところが、ここに来て事態が急速に動き出した。

事の始まりは数日前、私がこの国に来る直前。

つまり、フェオールでの一件が間違いなく関わっている事が確定した。

私がアルジェンナの企みを阻止した事が、まさかこうしてまた私の身に降りかかってきたのだ。

(つくづく、聖痕の呪いってヤツは傍迷惑ね)

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