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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価500&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第一章 フェオール王国逃亡記
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7 そして聖女は逃亡する

早いもので、私が王宮に来てから3年の月日が流れた。

今ではすっかりどこぞのご令嬢よろしく礼儀作法にも慣れ、日々の鍛錬と、何より王宮の御馳走のお陰で心身共にしっかりと成長を果たした、、、身長はあまり伸びなかったけど!


つい先日、私は18歳になった。この三年間、ありがたいことに国王陛下は毎年ささやかながらもお祝いをしてくれた。無理やり連れて来た上、ほぼ軟禁生活を強いている罪滅ぼしなのか、その辺りは抜かりなく手厚く対応してくれた。それ以外にも、外部から商人を呼び込んで色々買い物をさせてくれたり、時に息抜きをさせてくれたりと気を使ってくれた。

そして私もまた、抜かる事なく逃亡の準備を整えていた。15歳までに得てきた全てを駆使し、商人とコネを作り、息抜きにと招いた楽団を乗せてきた馬車の御者とも懇意にし、果ては決して表には出せないような人と繋いでもらって必要な物を揃えてもらったり、時間を掛けて少しづつ確実に計画を進めていった。


そんなある日、レオーネ王子から話があると声を掛けてきた。自身の誕生日が近づいてきて忙しい中、わざわざ何だろうかと思いつつも付き合うことにした。

「2日後には俺の誕生日が来る」

席に着くなりいきなり話を進めてきた。私は頷きだけで返事をして続きを促す。

「いよいよ魔王を探し出し、打ち滅ぼす旅に出る。だがその前にお前に最後の確認をしなくてはならない」

いつになく真剣な眼差しに、私は既に面倒くさいなぁと思い始めた。そんな私の心情などにお構いなく、彼は一度だけ右手の甲に目を向けた後、

「俺は聖痕に選ばれた事を誇りに思っている。この身に聖痕が宿っていると知ってから今日までそれだけを胸に生きてきた。だが、お前は違うだろう。俺の目には、お前は未だに使命への覚悟が見えない」

「ムリヤリ連れてこられるきっかけを作ったあなたがそれをいうんですか?」

彼の言葉に私は不機嫌な声音を隠す事なく言葉を放つ。

「私は普通に過ごしていたかったんですが。どこかの誰かさんがムリヤリ、誘拐紛いな勢いで引っ張っていったせいで3年もこんな所に閉じ込められる事になったんですが?」

その言葉に彼は顔を強張らせる。だがすぐに気を取り直して反論してくる。

「聖痕を宿すものならば使命を果たす義務がある。お前の出自が如何なるものであろうとそれは絶対のはずだ!」

(あぁ~、この人はホントに周りを見ずに生きてるんだなぁ)

この清廉潔白な王子様は自身の周囲でどれだけ陰謀が渦巻いてるのか知らないらしい。周りが上手い事避けているのか、あるいは自ら目を逸らしているのか。それに加えて、町での予言に関する噂すら把握していないようだ。そろそろバカ王子呼ばわりしてもいいんじゃないか?

「人は誰もが果たすべき役割を持っている。俺も、お前も!それに、、、」

その後に続くであろう言葉を私は知っている。時々彼はその話題を口にするのだが、正直それに付き合わされるこちらからすれば知ったこっちゃない内容でもある。

「許嫁さんですか?まさか今年の誕生日にも会えないと?」

いよいよ私はテーブルに頬杖をついてしまう、半目でバカ王子を睨みながら。

「結局私はその人がどこのどなたかすらお名前も、お会いする事も無かったわけですが。ですが貴方がおっしゃったんですよね?彼女は幼い頃から病弱だったと。一時は良かったけど3年ほど前から家からも出てこれなくなったと」

バカ王子の惚気なんだか愚痴なんだかよく分からない話に毎度付き合わされた結果、ついに記憶に刻み込まれてしまったのである。

「体調が悪いのは仕方がない事だ。だが彼女もじきに成人を迎える。俺が魔王の討伐を果たせば正式に婚姻を結ぶ事になる。つまりは未来の王妃だ、そんな人物がいつまでも己の役目を果たせないなど!」

その言葉に、ほんっとうにこいつは!なんて、見ず知らずの許嫁さんに同情してしまう。

「不摂生が元の病ならばともかく生まれ持ってしまった病でそこまで言うのは品位に欠けるかと思いますがね!」

つい声が大きくなってしまった。彼が目を見開いて押し黙っている所にさらに追い打ちをかけてやる。

「そりゃ王妃になるなら公務や、世継ぎの事を考えないといけないんでしょうがね、その前に考えてあげないといけない事があるのでは?」

「な、何を!私はこの国を!そして世界を!」

「それは大変結構、ご高尚なお考えですことね!でもそうやっていい歳して自分の事しか考えないからいつまで経っても物事の本質に気付かないのでは!?」

ここまで来たらもうどうでもいい。どうせあと数日で私はこの国から去るのだから、いっそこの3年間溜まりに溜まった鬱憤を晴らさせてもらおう!

「使命?役割?世の中そんな事で回ってはいないのよ。ごく普通に生きて、平凡な日々を過ごして、それこそが幸せってもんでしょ!それとも何?この世に生きる人すべてが何かを成し遂げなきゃいけないワケ?ならそれを果たさずに死んだ人は生きてた事すら否定されるの?それとも死ぬ事が役割だったとでも?それこそふざけるなって話よ!」

一気に捲し立ててから、私はすっかり冷めてしまったお茶を一気に流し込む。バカ王子も、背後に控える侍女達も近衛兵達も、今まで見た事のない私に目を見開いて驚いていた。

一息ついて少しだけ冷静になった私はもう一度口を開く。

「彼女さんが病でっていうけど、じゃあアンタは何かしてあげたの?お見舞いを送ったり、それこそ良い医者を紹介したり。どうせ何もしてないでしょ?言われた事そのまま鵜呑みにして、勝手にイラついて。見てくれは大人かもしれないけど、アンタの中身は3年前どころか、もっとガキのまんまなのよ。そんな奴が王になんてなったらこの国はあっという間に滅びるわね」

「なっ、きっ、それ、をっ!」

王子が顔を真っ赤にして私を睨みつける。周りの人達は、、、反対に真っ青になってるなぁ。

「正直、18になるまでには多少はまともになると思ってたんだけどね。これ以上の成長は期待できそうにないわね。まぁ、もうどうでもいいわ。あと少しでここから出られるんだし、その後の事なんて私の知ったこっちゃないわよバカ王子」

そう言い放って私はスッと席を立った。これ以上このバカ王子に付き合う気はないと、全身でそう告げるように歩き出し、そこで一度だけ立ち止まる。そして、

「そうそう、聖痕の式典でしたっけ?せっかくの晴れ舞台なんですから、心行くまで楽しみましょうね?」

それだけ告げると今度こそ私は歩き去る。こうなれば自棄だ、思い切り台無しにしてとことん混乱を招いてやろう、そう密かに決意しながら。


2日後、レオーネは18歳を迎えた。そして翌日には私達は旅立つ。あらかじめ決まっていた通り、魔王は現れず、しかしこれ以上国民の声に応えないワケにもいかない、と。

その日行われた王子の生誕祭は例年以上に豪勢で、そこで国王と王子は決意を新たにし、当然私はその場に参加する事はなかった。


そして、ついにその日はきた。

旅立ちの日、正午から聖痕の式典が開かれる。聖痕に選ばれし者を前に、予言が真実であると国民に知らしめる為に。

朝から式典の段取りや、宣誓とやらを叩き込まれ、慌ただしく時間が過ぎていく。そんな中、バカ王子はというと、時折こちらをチラッと見はするけど目が合うとすぐに顔を逸らしてしまう、一言でいえば挙動不審だった。

(少しは薬になればいいけど、まぁホントどうでもいいか)

そうしていよいよ時間となり、私達は城門前広場に設置された式典会場、その真ん中に据えられた舞台の壇上へと登った。

バカ王子が宣誓し、司祭のおじいちゃんの言葉を受けていよいよ私は言い放った。


 ・・・使命を拒否いたします、と・・・


隣のバカ王子が驚愕の表情のまま固まり、広場に集まった国民達がザワザワとし始める。

「ですので、後の事はレオーネ王子殿下へ全てお任せいたします」

ご健闘を、と優雅に一礼し私は魔力を聖痕へと流し込む。次の瞬間、フワリと風が体を包み込み、

「聖女が消えたぞ!」

誰かの声に一気にその場が騒然となる。レオーネも何が起きたのか分からずに周囲を何度も見回しながら近くの近衛に口早に指示を飛ばす。

その様子を私はすぐ近く、具体的にはさっきから立っていた壇上から一歩も動かずに眺めていた。

そう、私はどこにも行っていない。ただ聖痕を使って魔法を発動し、姿()()()()()()()()しただけなのだった。

広場が大騒ぎになる中、私はのんびりと人が居なくなるのを待った。すぐに国王へ報告が行ったのか、とうとう王国騎士団の騎士達が馬に乗って飛び出していき、そうして1時間もしないうちに広場から人は居なくなり、私は姿を隠したまま悠々とその場を後にしたのだ。

その後はもう簡単だった。

誰も居なくなった城を堂々と姿を現して歩いていき、与えられていた自室に戻ると式典用にと着せられていた法衣を脱ぎ捨てて逃亡用に用意していた地味な服へと着替える。

瞳の色も地味な黒色へと変化させ、最後に髪の毛に魔法を掛けて黒く染めると、纏めておいた荷物を抱えてこれまた堂々と城内を進み、あらかじめ目を付けておいた裏口から静かに出て行き、城下へと降りたのだった。

いよいよ話が繋がりました。まだまだここからなので続きをお楽しみに!

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