表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
63/363

63 組織対抗戦・開幕

準備を終えた私は宿で朝食を済ませると、主人に礼を言って宿を後にした。

対抗戦が始まるのは正午、それまでは最後の自由時間だ。

そんな訳で私は街の様子と、他の組織がどんな動きをするのかを観察する為に指定の待機場所へと移動するついでに歩き回っている最中なのだ。

とは言え、この五日間の間に準備を進めて来たし、その合間に相手方の様子も密かに窺って来たから凡そは予測がついている。

案の定、ダゲッドとアドネアは裏で連携している様子だし、グウェイブは教師や生徒に任せて自ら動く気配は無し。

オーフェはこれ幸いと色んな魔導具の試験をするようだからある意味警戒が必要。

そして不気味なくらい動きが読めないのがリーフェだった。

初めて会った時にも感じたけど、彼女だけは底の知れない雰囲気を纏わせていたし、この準備期間中に至っては全くと言っていい程動きが無かった。

というよりも、恐ろしい事に彼女の居る場所にだけ使い魔の入り込む余地が微塵も無かったのだ。

他の四人の元には私の使い魔を送り込んで情報収集をしたのだけど、リーフェだけはまるでそれを予期していたかのように完璧な守りが施されていた。

だけど当然、それが私の使い魔対策などではないのはすぐに分かった。

つまりリーフェは、そこまでの対策を施すほどの何かを密かに為してきていたのだ。

そして恐らくだけど、今回の組織対抗戦でその何かを使うのだろう。

何故かは分からないけど、私の直感がそう告げている。

故に、この組織対抗戦に於いて最も警戒すべきなのは彼女だろう。


などと色々な事を考えつつ過ごしていたら間もなく開始の時間だった。

各組織はそれぞれの拠点が開始地点となっており、私はそれぞれの場所からちょうど中央に位置する地点から動きだす事になっている。

今回の組織対抗戦はいつもとは趣が違うという事もあってなのか、家の中からこちらを熱心に見つめてくる人達や、沿道に立って声を上げて応援している人までいる。

しかも、それだけではなくどこからか紙吹雪のようなものまで降ってきている。

見上げると、本当に空から降ってきているので間違いなく魔導具によるものだろう。

(いや、紙吹雪を降らせる魔導具ってなんなのよ)

自分で突っ込みを入れてしまう位に訳の分からない状況だけれども、実際そうなのだから仕方がない。

それにしても町の雰囲気はとても明るく賑やかだ。

裏の事情を知る私からすれば何を暢気な、とも思わなくもないけれど逆に言えばそれだけこの行事に期待が集まっても居るのだろう。

軽く触れただけでも、この国はこの数年間で色々とややこしい事が重なってしまっている。

その鬱憤を晴らそうと誰もが思っているのだろう。

それ自体は悪い事ではないし、今後の為にも良い息抜きともなるだろう。

だけども、当事者側となった私としてはまぁ何とも微妙な所でもある。

楽しもうとは思っているけれど、裏を知ってしまった身としては他の連中がどう動くか次第で私も立ち回りを考えていかなければいけない。

それだけでも厄介なのに、万が一にでも負けてしまえば向こう一年はこの国で過ごす事になる。

そんな事態だけは絶対に避けなければいけないから、いつもの最終手段は準備しておくつもりでいる。


指定された待機地点はなんて事は無い、私がこの国に足を踏み入れた入口の前だった。

あらかじめ交付されていたからか、そこにもまた多くの人が詰めかけ私に向かって歓声を上げたり手を振ってくれたりしていた。

流石にこれは恥ずかしいな、なんて思いつつ手を振り返したり軽く微笑んでみたりと一応らしく振舞っておく。

しかしながら、私と彼らが言葉を交わす事は規定で禁止されているのでそれ以上の事は互いにできない。

少しだけ残念に思いつつ空を見上げて開始の合図を待つ。

時間が来れば空を映し出す魔導具が何かしらの変化を始めるらしい。

詳細は知らされていないけど、一目でわかる物らしいので少し楽しみでもある。

時間が迫ってきているのか、周囲の喧騒が少しづつ収まり始める。

耳を澄ますと遠くの方から気合の入った掛け声やらが響いてくる。

何処かしらの組織が士気を高めているのだろう。

少しするとそれも聞こえなくなり、代わりに町全体が緊張感に包まれていく。

その雰囲気に、私も知らず緊張と興奮に包まれる。

そして。


抜けるような青を映していた空が、一条の稲妻に切り裂かれた。

同時に、お腹の奥にまで響くような重低音が町全体を揺らし、何かしらの魔導具が発動したのを感じた。

少しだけ探ってみると、建物やらに強化を施す魔法が掛かったらしく、先ほどの音はその魔法を掛けたであろう魔導具が起動した音のようだ。

恐らくだけど、空を映す魔導具と同じ原理が使われているのだろう。

たった五日でそれを設置するとは、感服するほかない。

(って、そんな事を考えてる場合じゃないって!)

脱線しかけた思考を切り替えて、顔を正面に向ける。

さぁ、組織対抗戦の開幕だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ