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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価500&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第一章 フェオール王国逃亡記
6/344

6 聖女は思い馳せる5

この1年でいくつか分かった事がある。

まず1つ、それは王族と王族に与する派閥の人達と、それ以外の派閥との、予言に対する考え方の違い。

よく分からないので前者を仮に王族派閥と私は呼んでいるのだけど、その王族派閥は予言を文字通りの意味、つまり魔王によって世界に危機が訪れるという事に目を向けていた。

特にレオーネ王子は、自身が聖痕を持っているという事からその意識が人一倍大きいらしく、この1年の間に何度となく私の許に来ては、やれ使命がどうとか選ばれし者がどうとか喚いていった。

彼以外にも、定期的に魔王についての報告をしてくれる宰相さんや、月に1度ある国王との謁見でも直々にご高説を賜ったりしたのだから嫌でもその考え方が分かってしまったのだ。

だからこそ私に対しても好待遇で、特に私が聖女などと呼ばれる事を嫌がってると知ってからは名で呼ぶようにしたりと好意的に接してくれているので、まぁ悪い気はしなかったのはナイショである。


そして後者の王族派閥以外の人達、こちらも仮に権力派閥と呼んでいるのだけど、彼らは王族派閥以上にあからさまに私に擦り寄ってきた。彼らは予言を象徴的なもの、端的に言えば聖痕を持つ者がこの国を治めるべきなのだという主張をする一派だった。

なら当然次の国王はレオーネ王子となるのだけど、そこはまさにお貴族様、100年もの間最高権力者として玉座に座ってきたフェオール家に対して一矢報いたい、いや、最高権力を独占させたくないと思っているようだった。

はっきりと口にはしてないけど彼らの思惑を要約すると、今の内から何も知らない小娘に便宜を図っておいてこの先魔王を倒す時が来たら王子を出し抜いて私に倒させ、それを基に国王一派を追い出し、私をお飾りの国王に据えて自分達が裏から国を支配する、という感じらしい。

あまりにも杜撰すぎる計画にさすがに私も呆れてしまうのだが、逆を言えばそれだけ今の状況を好機と捉えているのだろう、細かい事など後でどうとでもなる、王族派閥を追い落としさえ出来ればそれで良いと、本気で考えているのだろう。

だけど何よりも、私は単純に彼らが気に食わなかった。

彼らは私の言葉になど耳を貸さず一方的に好意を押し付け、私が確実に魔王を倒せると信じ込んで、様々な思惑を以っているにしろ私に希望を見出し、それ故に当然のように下卑た笑みで私を聖女と崇めてくる。


 ・・・それがもう本当に本当に、心の底から、()()()だった・・・


そして2つ目は、この国の国民達についてだった。私も直接町に下りて話を聞いたわけではないけど、どうやら国民もまた、予言ついて本気で信じ込んでいるようではないらしい。

予言については誰もが知っているのだが、それもほとんどの人がせいぜいお伽話としてしか考えてないようだった。

さらにはここ数年の間に、予言は噓なのではないかという声すら上がり始めているそうだ。

レオーネ王子が聖痕を持っていると知らされ、幾らかは予言が本物だと話す人は居るそうだが、それも今だに極少数でしかないらしい。

そして、普通なら飛躍した陰謀論にしかならないが、現状そんな風に思ってしまう理由が確かにあった。


 ・・・未だ動きを見せない魔王・・・


魔王の復活と共に聖痕を持つ者が生まれる、にも関わらず未だに魔王は行動するどころかその存在さえ示さない。その事が予言の信憑性を疑うのに拍車を掛けているのだ。

そして、それだけで済まないと身を以って感じているのが他ならない、王族派閥の方々だった。

これまで、予言を絶対の物として国の運営をしてきた彼らにとって、予言が覆されるのはまさしく国が国民を騙ってきたと捉えられないと思っているのだ。

このままでは求心力を失い、果ては最悪の事態にまで考えを巡らせた彼らは、だからこそ最低でも3年後には私達を魔王討伐に送り出すと決めたのだった。

そしてその時におそらく彼らは国民に告げるのだろう、魔王が遂にその姿を現したのだ、と。

対する権力派閥はこの状況を最大限利用しようとしている。

私に対して取り入ろうとする動きもそうだし、もしも魔王が本当に現れずこのまま国民感情が昂るとしたら、、、いや、恐らくだけど現状における予言に、そして王族達に対する疑惑の声も彼らが扇動しているのだろう、、、それらを最大限に利用して革命でも起こそうと画策しているようだ。

だから誰も彼もが焦って、事を急いでいるのかもしれない。


そしてその革命に関する気付きこそが3つ目、私が直接的に係わって知る事となったのだが、件の権力派閥の中に、その意と違って明らかに私を疎んでいる者が居るのだ。

しかもそのほとんどがこの国の貴族の中でも有数の大貴族達。そしてその中でもとりわけ、明確な敵意を向けてくる人が居た。

「未だに陛下はお前のような小娘に未来を託そうとしている。実に嘆かわしい」

ある日の午後、一息ついた私の許にきたその人は開口一番、そう言ってきた。


 ・・・ベオーク家当主、ランヴェルト・ベオーク。フェオール王家に次ぐ最大規模の大貴族の当主・・・


後から侍女に教えてもらったその人は、半年ほど前から名乗りもせずに私の所へやってきて、それ以降も時折現れては毎回こんな感じで捲し立ててくるのだ。

「1年経っても魔王などという愉快な存在は現れない。なればこんな者は捨て置いて国民の心を取り戻せば良いのだ。だというの、一体何をお考えなのか。やはり今こそがその時か、、、」

言いたい事だけ言って去る、そんな事を続けているのだが、当の私はというと、

(あの人ヒマなのかぁ)

などとお茶を飲みながら適当にあしらっていたのだった。

話を本題に戻すと、彼のランヴェルト氏とやらは革命を画策する一派の首魁らしい。

表向きは忠臣として振舞いつつ、さっきのように裏では国王に対する不敬も辞さない。そして王家に次ぐ権威を持っているとあって、彼に付き従う者が続々と出てきている。

さらに付け加えるなら、その王家に次ぐ権威というのが最大の決め手らしい。

100年間ひたすらフェオール家の下、目の前に最高権力という果実がぶら下がっているにも係わらず手が届かなかったのだ。今の情勢が最後の好機と踏んでいよいよ動き出したようだ。

おまけにあのお貴族様、どうやらネチネチ小言を言うだけでなく裏からも何かしら手を回しているようで、何度か私の周りも騒がしくなる時があったのだが、その全てが国王の一声で解決したので実害は全く無かったりもするのだ。

そのうち、気が付けばランヴェルト氏は直接顔を見せなくなり、代わりに彼の意を汲む連中がアレコレしてくるようになったんだけど、血気盛んな彼らがある時ポロリと呟いたのだ。


 ・・・やはり国王はランヴェルト様こそが相応しいのだ、と・・・


私に聞こえてないと思ったのか、思い通りに行かない現状に苛立ちを隠す事なく彼らはそう呟いて去って行ったのだ。

そして当の私はと言うと、なんだか穏やかじゃないわね、なんて思いながら事の成り行きをのんびり眺めていたのである。


結局、その後も何度となく阻まれる裏工作に、しかしランヴェルト氏もその仲間もそれ以上の行動をする気がないのか、時折思い出したように何かしてくるけど直接的な害は無く、いつしかそれも当たり前の日々になっていった。

何よりも、他ならぬ私自身がそもそも貴族のいざこざに興味がないのだから、すっかり忘れ去る事になるのだが。


それ以外については思い出すことは特に無い、せいぜい王子が時折来ては1時間ほどお茶を飲みながら話を、といっても彼が一方的に聖痕について力説したり、自身の婚約者についての不満だとかを話して終わるくらいだった。


そうして代り映えのしない毎日が過ぎていった。2年、、、そして、、、

ようやく回想も終わりです。次回、ようやくプロローグと繋がりますのでお楽しみに!

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