表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
55/361

55 対話と対峙

サラリと告げたアドネアはまた一口紅茶に口を付けると、改まって話し始めた。

「アンスリンテスでは3年毎に組織対抗戦というものが開催されています。目的としては、研究成果を披露してそれを国民に評価、審査させて内外に喧伝する事なのですが」

「国内においては、最高責任者に足る者の見極め、って所かしら?」

「そうです、流石ですね。いつもは最高責任者となった者が居る組織は除外され、それ以外の4つの組織で競うのですが、、、今は些か厄介な状況でして。詰まる所、今回貴女を巻き込んでしまった原因がここなのです」

ここにきて一気に情報が増えてきた。

一度言葉を切ったアドネアの様子を窺うと、彼女もそこから先の事情を話すべくか悩んではいるようだった。

だけど、さっきまでの私の警戒心のある態度を見ているからか、意を決したようにこちらに向き直る。

「貴女はオーフェ・ローディアナが聖痕を持っている事は存じておりますね?詳しい事は今は置いておくとして、彼女の両親は魔導開発局の局長をそれぞれ務めていたのです。つまりは、オーフェとリーフェの先代が彼女達の父と母が第一と第二の局長で、3年前にほぼ同時に代替わりしているのです」

これまた新情報である、というか、あの二人にそんな事情があったのか。

いや、それ以前に代替わりと言ったような、、、

「代替わりって、どの組織も世襲制じゃないわよね?何か起きたって事なの?」

「ええ、あまり他言する事ではないのですが、、、ローディアナ夫妻はどちらも亡くなっているのです」


アドネアの話では3年前、オーフェ達姉妹の父、当時の魔導開発局第一局長がとある事件に巻き込まれてしまい亡くなったそうだ。

当時まだ学生だった姉妹はまだ何とか堪えたそうだが母親、魔導開発局第二局長が心労により倒れてしまい、そのまま帰らぬ人となってしまったそうだ。

立て続けに両親を亡くした二人もさすがに精神的に参ってしまったそうだが、当時既に聖痕をある程度使いこなしていたオーフェが周囲の支えもあって立ち直り、それに引っ張られる形でリーフェも回復、当人達の強い意志もあり、また緊急事態という事も鑑みて彼女達がそれぞれ後を受け継いだ、という事らしい。

いや、ちょっと思っていた以上に重い過去過ぎてどう反応していいか分からないんだけども、、、

というか、今この状況でこれを伝えてくるとか、アドネアは想像以上に強かである。

うん、コイツに対する警戒度は最大にしておいた方が良い。

密かにそう考えつつ、今はとりあえず流れに任せておく事にする。

「あの二人の事情は分かったわ。で、それが私のこの状況とどう関係があるの?」

「組織対抗戦は3年毎に行われると言いましたが、実は今現在において最高責任者が空席となっているのです」

色々と繋がってきた。

彼女は私が理解しやすいように順序だてて説明してくれたから、自ずと答えが導き出せる。

「それってもしかして、亡くなったローディアナ夫妻のどちらかが当時の最高責任者だったと?」

私の答えに彼女は深く頷いて先を促してくる。

「しかも、就任したばかりで彼らが亡くなり、どちらも組織の長。空席が2つも出来てしまい混乱が生じたのね。幸い、娘達が後を継いだからその混乱自体は収まったのでしょうけど、最高責任者の席はそう簡単に決められない。そうして3年経ってようやく次の最高責任者を決めようって時になってそこに一石を投じかねない存在が現れて混迷を極めてしまった、そんな感じかしら?」

「素晴らしい御慧眼です。試すような事をして申し訳ありませんでした」

ニコリと微笑みながら頭を下げるアドネア。

やはり彼女は私がどれ程の者かを試していたようだ、喰えない人であると再認識せざるを得ない。

しかしながら、ある意味では信頼できる点も見れたとも言える。

まぁ、腹の内を完全に見せていないのも確かだから、全幅の信頼を寄せる訳にもいかないけれど。

とは言え、ある程度態度を柔らかくしてもとりあえずは問題なさそうだと判断しておこう。

「いえ、私も同じようなものですから。無礼な態度を謝罪します」

「そんな!寧ろにべもなく追い返されてもおかしくないと思っていたのですから!」

互いに頭を下げあってしまい、何となく苦笑いが浮かんでしまう。


そんな訳で気を取り直し、改めて本題の話を進める。

「さて、だいぶ逸れてしまいましたが話を戻しましょう」

新たに淹れてもらった紅茶に口を付けつつ、彼女の言葉に耳を傾ける。

「結論からいいますと、ダゲッドはこの国を軍事国家にしようとしています。近年、多くの予算を割いて軍備強化を図っています。彼が最高責任者になってしまうとこの国は破滅へと進む可能性が高くなります。それは中央議会と看過できることでは御座いません」

キナ臭い、どころではない話だ。

しかしながらそれだけで、はいそうですかと頷く事はしない。

「その根拠は?何故そんな上場を今日まで許していたのですか?」

「きっかけ、と言えるかは分かりませんが1つ言える事は、彼が強硬な態度を取り始めたのはまさしく3年前からになります」

どうやら、事は思った以上に厄介なようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ