表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
50/364

50 もう一人のローディアナ

嵐の様な一幕が過ぎ、私とオーフェはようやく落ち着きを取り戻していた。

とはいえ、あの飄々としたオーフェが珍しく疲れ切った顔で天井を仰ぎ見ている。

まぁ、かく言う私も同じような顔になってると思うけど。

「はぁ~。ともあれ、リターニアさんにはご迷惑をお掛けしてしまいましたねぇ、今更ですけど、申し訳ありませんでしたよぅ」

「私も油断してたわ。まさかたった1日でここまで状況が動くなんて考えもしなかったわ」

グッタリしながら言葉を交わす私達に、そっと近付いてきた職員が飲み物を置いてくれる。

とりあえず目線で感謝を伝えてそれを一口飲んで、何とか頭を切り替える。

考えるべきはこれからの事だ。

あのダゲッドの事だ、必ずすぐに次の行動を起こすだろう。

しかも、オーフェから聞いた話が間違いないのなら、多分これだけで終わらない可能性もある。

「ねぇ、オーフェ。聞きたい事があるのだけど」

「おや、何ですか。あのオッサンの事以外ならお答えしますよぅ」

その返事に乾いた笑いが零れる。

「その前に話してた事よ。総責任者をこの国の5つの組織の長から選ぶ。それでダゲッドが動いたのは理解したわ。でもそれって、他の4人にも言える事なんじゃないの?」

少しだけ目を細めてオーフェを見極めようと見据える。

その視線を受けた彼女が少しだけ表情を整え、

「私を含め、ですよね。そうですねぇ、ダゲッド程過激な奴は居ない、とは言っておきましょうか。ですが何かしら動く、という事ならば確かにリターニアさんの言う通りです。今回の一件で既に関係者には色々と知れ渡ってしまったでしょうから」

一度だけ呼吸を整え、先を続ける。

「状況が動けば私も動かざるを得ないでしょう。それは否定しません、ですがアイツのように貴方に害意を以って対する事はありません。これはお約束します」

しばし視線をぶつけ合う。

彼女の瞳の中にある思惑を読み取ろうと思い、

「どうも、疑り深くて駄目ね」

ギュッと目を閉じて自嘲気味に呟く。

「分かったわ、とりあえずオーフェの事は信じるわ」

右手を差し出して頷く。

その手を呆けたように見つめ、そのままもう一度私の顔を見つめてくる。

「何よ」

「いえいえ~、それではそれでは!」

喰いつくように両手で握り返されて少しだけ引いてしまった。

というか、その締まりの無い顔は女としてヤバいからやめなさい。


というわけで、オーフェと共に状況の整理をする事とした。

彼女曰く、差し当たって危険なのはやはりダゲッド。

彼が院長を務める魔導教導院は魔法を研究する組織ではあるのだが、同時にアンスリンテスの治安維持を担う役割も持っているのだ。

つまり、ダゲッドがこれを動員して力尽くで私を捕まえようとする可能性があるらしい。


次いで気にすべきなのが中央議会らしい。

議会の会長を務めるのはアドネア・シューレーン・アンスリンテスという女性らしい。

この国の基本的な舵取りをするだけあって清廉潔白として通っているそうではあるが。

オーフェ曰く、どうやらダゲッドと繋がりがある可能性があるらしい。

無論、大々的ではなく、それを感知している者も少ないそうだけど、それはつまり知られたくない関係である可能性があるとも言えるだろうし、気に留めておく必要はありそうだ。


そして魔導学院の院長であるグウェイブ。

彼とは既に関わっているし、その人となりも少しは知っているからとりあえずは様子見でいいだろう。

オーフェも元教え子として彼が事を起こすのは考えにくいと考えているようで、とりあえずここは後々考える方針でいいだろう。


魔導開発局第一はオーフェ以下、私に対して友好的にしてくれているので、当面は彼女達の庇護下で行動していこうと再確認した。


そして最後の魔導開発局第二であるのだけど、、、


「う~ん、あそこはどうなんでしょうかねぇ。そこの所どうなんですかぁ?」

「別に、興味ないからどうでもいい」

背後から声に驚いて振り返ると、そこにいた人物に私は思わず言葉を失ってしまった。

「貴女いつの間に、って言うか、、、」

「突然すみませんねぇ、騒がしいので様子を見に来た次第でして」

その喋り方はオーフェとどこか似通い、だけどオーフェよりもかなり落ち着いた雰囲気を醸している。

その女性はゆっくりと歩を進めると、慣れたようにオーフェの隣に座る。

その二人の姿は、服装と髪型以外は()()()()だった。

「貴方達、双子なの?」

「そうなんですよ~、驚きましたかぁ?」

「オーフェ、まずは紹介して」

ニコニコ笑みを浮かべるオーフェに冷めた感じでツッコむ女性。

全く同じ顔に同じ声で頭が混乱しそうだ。

一応、喋り方も違うから声だけでなら多少は判断できそうではあるけども、これは何とも。

などと思っていたら、そこでようやくオーフェが改まって私に向き直った。

「こちらはリターニアさん。まぁ色々と巻き込んでしまって現在はこちらで保護をしています。そしてリターニアさん、この子はリーフェ。私の双子の姉で、魔導開発局第二の局長をやってるんですよぉ」

「騒がしい妹がご迷惑をお掛けしてます。リーフェ・ローディアナ・アンスリンテスです、まぁよろしく」

皆大好き双子ちゃんでした!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ