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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第一章 フェオール王国逃亡記
5/362

5 聖女は思い馳せる4

国王との謁見から一晩経ち、客人ではなく要人として扱われている事がイヤでも分かる豪勢な部屋で私はくつろいでいた。今まで見たこともない調度品や着替えの数々にはさすがに感嘆の声が漏れてしまう。

家に帰りたいという思いは残ってるけど、これはこれで、それこそ今後2度と味わえないであろう環境に満更でもないかなと思い始めているのだった。

そうして、何はともあれようやく落ち着けるかと思って一息ついた私の許にある人物が訪れた。

フェオール王国にて宰相を務めているというその人は国王からの言付けとして、挨拶もそこそこに今後の事について語り始めた。

「まず、現状魔王の行方は判明しておりません。それについては周辺諸国と連携して情報を集めておりますので今しばらくお待ちください。それに関連しまして、魔王の動向が確定しない内は魔王討伐へは出立せず、王宮にて鍛錬や勉学に励んで頂きます。これは殿下と聖女様がまだ未成年である事にも配慮しまして、成年となられる18歳まで無理をさせる訳にはいかないという陛下からのお達しでございます」

(なんか普通に聖女様とか呼ばれた気がするんですが、、、)

聖女という言葉に私は反射的に苦虫を噛み潰したような表情をしてしまう。だけど宰相さんは手元の紙に目を落としたままこちらには一瞥もくれないまま続ける。

「無論、それまでに魔王の動きが判明、早急に動く必要があると判断された場合は討伐隊を編成、魔王の許へと向かって頂きます。万が一魔王について情報がなく3年経過した場合、成人を迎えられた時を以って出立、協力国を経由しつつ魔王を探して頂く事になります」

宰相さんの言葉に思わず口を半開きにして固まってしまった。

年齢に配慮してくれたのは助かる、少年少女が世界を救うなどお伽話か町で流行りの創作物語程度だろう。

それに15歳の少年少女をいきなり放り出せばそれこそ世界中から非難されてしまうのだから、それはいい。

そして万が一何か動きがあって世界に危機が迫っているとしたら、むしろ出し惜しんだりすればそれはそれでまた人々は混乱するだろう。特にこの国は、王子が聖痕を持っていると大々的に喧伝してきたのだ、魔王の動向が確定したのに王子が動かねば国民を見捨てたと言われ兼ねないのだから、それもいい。

だが一番最後のはなんだ?成人したら旅立たせる?つまりそれは、私は()()に3年間この王宮に閉じ込められる事になる!

その後にも宰相は何やら説明を続けていた。出立の際は式典をやるだとか、城門前広場で大々的にパレードをやるだとか言ってた気がするが、そんな事はどうでもいい。

私はどうにかここから脱走できないか真剣に考えていた。

逃げ出す事自体は大して難しくはない、部屋の前には護衛の兵士が二人居るだけで、そもそも私は閉じ込められてる訳でも捕らえられてる訳でもない。逃げようと思えばいくらでも逃げられる。

だけど問題なのはその後だ。国王も言ってたように、聖痕を持つ私が何の管理下にもなく野放しになっているのは国としては面白くはないだろう。加えて、もう既に城下町では私の事が噂になっているらしく、身の回りを世話してくれている侍女達が教えてくれたのだ。


 ・・・国民の間では、ついに聖痕の聖女が降臨したらしいという噂で持ち切りになっているんですよ、と・・・


そりゃ、あれだけ厳重に護衛がついて、私自身も姿が見えないようローブを頭から被せられていたから、たまたまそれを見掛けた人からすれば明らかに重要人物がそこに居ると思われるだろう。

そんな中で城から外に出たりしたら、私自身の事について知らなくともまた色々な噂が広まりこうして国王達の耳に入る事となるだろう。それでまた見つかりでもしたら今度こそ囚われの身にされ兼ねない。

どうしたものかと唸ってる内に宰相さんは出て行っていたのだが、私は気付く事なく頭を抱えていた。


ちなみに、数日後に聞いた話では例の噂にさらなる尾鰭がついて、なんと西の町目掛けて侵攻していた魔物の群れを聖女、つまり私が1人で殲滅したとまで言われてるのだそうだ。どうにもこの国の人達は想像力が豊か過ぎる気がするんだけど、気のせいだろうか。


結局、無駄に足掻いて自分の立場を苦しくするよりも、3年間しっかりと準備をして来るべき日に備える方が賢明だと判断した私は、この王宮の中で出来る事をしようと決めたのだった。


かくして、次の日から早速聖女としての教育とやらが始まったのだけど、その内容はあまりにもあんまりだった。

この国の歴史や聖痕の英雄達の伝承、魔法の使い方や魔物との戦い方、座学や実技を交えつつ思っていた以上にしっかりと教えてくれたのには驚いたけど、それ以上に困ったのが、なぜか叩き込まれる貴族としての礼儀作法だった。

それこそ魔王と戦う為のあれやこれやなんかよりも明らかに重きを置いた教育に私は困惑しまくった。それこそ来るべき日の準備など忘れてしまう程に。

15年間ただの田舎娘として育ってきた私にとって貴族社会の事などまるっきり関係ない世界だったのに、たった一夜にして私は上流階級の一員になる事になったのだ。そしてそこには当然私の意志など関係なく、王宮に渦巻く陰謀に知らず知らず巻き込まれていたのだった。

元々、生きる為に出来る事は何でも身に付けて育ってきたからか、ここで教えられる事を一つ一つ覚えるのにいつの間にか一生懸命になっていたのだ。自分の性格が恨めしくなってしまう。




 ・・・そうして、気が付けば王宮に来てからあっという間に1年が過ぎた・・・

舞台が王宮へと移りますが、そもそもリターニア視点なので細かい所があえて雑になってます。

お貴族様とか興味ないからね!


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