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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
49/362

49 闖入者

一旦休憩を取った私達は改めて話の続きを進めた。

「私のような隠れた聖痕所有者が他にも埋もれていないか、そしてその存在を一早く確保したい。そうした思惑の下現在の彼らは行動をしていました」

「ところが、まさかの観光客に聖痕所有者が居た、と」

「はい、連中からしてもあまりにもあっさりと見つかった事で逆に疑いを持ったようで、私に直々に話をしに来てたんです」

運良くというか、偶然というか、その時私は魔導学院に居たお陰で直接絡まれずに済んだらしい。

「ていうか、まだ1日しか経ってないのに動きが速すぎじゃない?」

「あのオッサン、誇りと執念の塊ですからねぇ。新しく手に入れた玩具を弄ってたらまさかの反応、大急ぎで姿を確認させたら私の試作魔導具を持つ観光客。きっとあの禿げ頭の中で愉快な妄想でも繰り広げた挙句なんでしょうねぇ」

もはや隠す事無く馬鹿にするオーフェに私も同じ様な反応をしてしまう。

とはいえ、その結果こうして厄介な状況に進みつつあるのもまた事実だから、そういう意味ではその執念深さとやらは馬鹿にでき無さそうでもある。

「今日貴方と接触したのも、ここにお連れしたのも、連中にリターニアさんが捕まる事を危惧しての事です」

何となく察してはいたけど、やはりそういう事だったか。

まぁ、実を言うと変な気配は朝から感じてはいた。

特に何かを仕掛けてくるでもなく遠くから様子を窺っているだけだったから無視していたけど、まさにそいつ等がダゲッド氏の目だった訳だ。

オーフェもその事に気付いて私を保護するべく接触、ああまでして私をここに引っ張ってきてくれたみたい。

であれば、一応は感謝しておくべきではあろう。

「朝から見られてる気配はあったから、途中まではオーフェが何か悪戯してるって思ってたわ。まぁこうして色々話してくれたからもう理解したわ。ひとまずはお礼を言っておくわね」

「いえいえ、私も迂闊でしたから、これは当然の事ですよ。とはいえ、まだ完全に安心出来るという訳でも」

オーフェが話しているその時だった。

部屋の外が急に騒がしくなり、それが段々と大きくなってくる。

何人かが大きな声で怒鳴り合いながら、それに負けないくらいの足音をドスドス響かせながら歩いてくる。

オーフェ達を見ると、何人かは頭を抱えたり肩を落としたりと、何だか慣れたような反応であった。

「すみません、リターニアさん。厄介なのが来てしまったようです」

オーフェが心底イヤそうな顔をしながら私に告げるのと、この部屋の扉が弾けるように開かれたのはほぼ同時だった。

「ローディアナ!貴様よくも抜け抜けと!」

「あーはいはい、気安く呼ばないでくださいな。あと、そちらで呼ばれると私とあの子のどっちに用があるか分からないですよぅ」

無駄の声のデカいオジサンの咆哮に、慣れた態度で嫌味を返すオーフェ。

普段の飄々とした態度とは違う、明らかに攻撃的な意思を込めた言葉に少しだけ驚きを感じた。

対するオジサンは、それはもう見事な青筋をこめかみに奔らせながらドスドスとこちらに近付いてくる。

「その女が例の聖痕持ちだな!隠し立てなぞ舐めた真似はさせんぞ!」

私とオーフェを遮る様にやってきたオジサンは、なるほど確かにオーフェの言う通りの容姿だった。

でっぷりとしたお腹に、反り上げたかのように光を反射する頭。

しかし威厳を出そうとしているのか、口元には立派な髭が生えていて何とも言えない雰囲気を作っていた。

何て事を思いながらぼんやりとオジサンことダゲッド氏を観察していたら、

「貴様が聖痕持ちの女か?」

案外鋭い目がこちらを射抜くように見下ろしてきた。

なんと、見た目は癒し系だけどその眼は獰猛な獣であったか。

とは言え、初めて会った女性に対する態度としてそれは如何な物なのか。

「自己紹介も出来ないような無礼者に語る言葉なんて無いと思わない?」

「喧しい!この私が貴様を有効活用してやろうというのだ!黙って傅け!」

物凄く訳の分からない理論を振りかざしながら怒鳴ってくるもんだから、少しイラっと来た。

と思っていたら、その無駄に大きな手を私の肩に伸ばしてきた。

(コイツ、正気なのかしら?)

余りにも傍若無人な振る舞いに目を細める。

そして、彼の手が私の肩に触れようとしたその瞬間に、

「ぐあああああ!?」

溜息を吐き出すと共に魔力を奔らせてその手を弾き飛ばす。

そのまま後退った彼に向けて、私は右手を突き出して掌を向ける。

「今のは見なかった事にしてあげる。けど、また舐めた真似をするならその無駄に膨れた腹に風穴を開けるわ」

痛んでいるであろう右手を摩りながら私を憎々し気に睨むダゲッド。

何か言いたげに何度か口を開こうとして、だけど舌打ちだけして案外軽やかな身のこなしで立ち上がると集まっていた職員達を押し退けるようにして部屋から出て行ったのであった。

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