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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
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45 魔導開発局第一

オーフェに連れられて進んだ先、階段を登り廊下を進み、ようやく辿り着いた場所は魔導具開発の心臓部とも言える研究室だった。

「やあやあ諸君ご機嫌はいかがかな?私はいつも通り絶好調だとも!」

ドアをぶち壊す勢いで開いたオーフェが、これまた鼓膜を破壊せんばかりに声を張り上げて室内に挨拶をする。

ちなみに隣に居る私はそれを察知して耳を塞いでいた。

まぁ軽く貫通してきたのは驚いたけど、恐らく無意識に聖痕でも使っているんじゃないかなコイツは。

そして中に居た職員の人達もまた慣れているようで、いつの間にか耳に何かを付けていたようで、気にする事なく仕事を続けていた。

「いやぁ、皆仕事熱心だねぇ。局長として鼻が高いよ」

「みんな苦労してるのね」

彼らの姿に同情心が沸いて思わず呟いてしまった。

加えて当の本人が気にするでもなく相変わらず部屋の中を進んでいくものだから、彼らはどちらかというと私の姿に驚いているようだし。

まぁ、部外者が突然局長に引き摺られてきてる訳だし、それも当然なんだけども。

そんな珍妙な光景が広がる中、1人の男性がこちらに近付いてきた。

「局長!何処ほっつき歩いてたんですか!早く書類にサイン書いてくださいよ!」

「あれれ、モグルス副局長殿!私のサインなら例の魔導具で複製しちゃえば良いではないかね~」

全身から草臥れた雰囲気を滲ませるこの男性はどうやら副局長さんらしい。

いかにも苦労人な感じで、目の下に出来てる影がその気苦労さを物語っている。

対するオーフェは、ホホホと笑いながらそれでも私を引く手の力は微塵も緩まない。

そんな私に今気づいたのか、モグルス副局長はオーフェの隣に居る私に目を向けると、みるみる内に驚愕の表情に染まっていく。

「な、、、あ、、、きょきょ局長!なんで外部の人を連れ込んでるんですか!バレたらまたダゲッド院長に好き勝手言われますよ!」

「あのおっさんは適当にあしらえばダイジョブですって。寧ろアドネア会長の方が私はメンドウですよぅ」

「いや、それは確かにそうですけど、、、って、そうじゃなくてですね!」

何やら盛り上がる2人だけど、巻き込まれてるだけの私からしたらどうすればいいのか分からないから本当に困っている。

「うーん、詳細は言えませんがこの方に技術協力を依頼してましてねぇ。上手くいけば日用魔導具の改良が出来るんですよぉ~」

「いや、それは第2の領分でしょう!またリーフェ局長に怒られますよ!?」

「あの子は私が何をしても最近は怒ってばかりですし、もう気にしてはいませんですよぅ?」

盛り上がりが止まらない。

それどころか完全に私の事を忘れて普段通りの感じで言い合いになってる気がするんだけど。

とりあえず近くにあった椅子に腰掛けて2人のやり取りを眺める事にした。

そしてそんな私に、

「お茶でもどうですか?」

いつの間に用意していたのか、女性職員が紅茶の入ったカップを差し出してくれた。

「あ、すみません。なんか気を使わせてしまったみたいで」

「いえいえ、私達的にはいつもの事なんですがね。さすがにお客さん放ってまで始めるとは思いませんでしたよ」

困った様に笑いながら話す職員さんが、ごゆっくりーと手をヒラヒラさせて離れていく。

そしてまだやいのやいの言い合うオーフェ達を無視して、改めて室内を見回してみる。

職員の数はざっと見た感じ10人位。

皆最初こそこちらを気にしてはいたけど、今はもう自分の仕事に集中しているみたい。

その事からも、この2人のやり取りがいつもの事なんだと理解出来る。

寧ろ、興味の対象は私だったのだろう。

まぁ、副所長さんが言った通り、ここは部外者立ち入り禁止な訳だし、今もって私が連れてこられた理由がハッキリしないのだから、どうすればいいかも分からないだろう。

何せ、他ならぬ私がどうすればいいのか分からないのだから。


で。

ボーっと窓から外の景色を眺めて幾らか時間が過ぎて。

「あ!こんな事してる場合じゃないですよぅ!」

突然叫んだオーフェがやっと私に向き直る。

どうやら思い出してくれたみたいだ。

「で?散々放置した偉大なる魔導開発局第一の所長様に置かれましては、この無駄な時間をどう埋め合わせて下さるんですか?」

頬杖をついて半目でオーフェを見つめると、すっかり肩を丸めて縮こまったオーフェがしおらしく頭を下げる。

「うぅ、面目次第もございません~」

「とりあえず今夜のディナーは期待させてもらうわ」

そう言うと、何故か嬉しそうに笑みを浮かべてブンブンと頭を振るオーフェに若干引きつつも、椅子から立ち上がる。

「ではではこちらにっと、その前に!一つ確認しないといけない事が!」

「うん?何かあった?」

思い立った様に私と向き直るオーフェの言葉に、思わず首を傾げてしまう。

その私に合わせるように首を傾げたオーフェがニッコリと笑って、

「貴女のお名前をまだ伺ってなーい!」

「「「なんでだよ!!!」」」

おおう、職員総出でツッコんだぞ。

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