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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
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43 予定は乱されるもの

その後も院長直々の学院見学を堪能し、さらには予定になかった魔法の講義も見学させてもらったりと大変充実した一日を終えて、私は院長が勧めてくれた宿に泊まった。

何故かグウェイブ院長に偉く気に入られたようで、かなり良い宿を紹介してくれ、さらには特別だと宿代まで少し安くしてもらってしまったのは流石に恐縮してしまった。

最初こそ遠慮はしたものの、若者の世話をするのは年寄りの生き甲斐だと押し切られてしまい、仕方なくも有難く受けさせてもらった。

豪勢な食事に舌鼓を打ち、部屋に備え付けられたこれまた豪勢なお風呂で疲れを癒やした私は、今はベッドに寝転んで明日からの予定を考えている所だ。

「学院の見学は期待以上だったわね。まさかあんなに盛り沢山になるなんて」

今日一日を思い返して堪らず独り言ちる。

兼ねてから楽しみにしていた学院見学がこうも実りあるものになったお陰で、明日からの予定が逆に難しくなってしまった。

「魔法教導院は部外者お断りだし、魔導開発局はオーフェが居るから近寄りたくないしなぁ」

魔導具の地図を展開しながら行き先をどうするかひたすら唸る。


魔導学院は学院と名乗るだけあって人の出入りが自由である。

だけど、その他の組織は当然だけどそうじゃない。

魔法教導院は魔法の研究開発をしているだけあって機密の塊そのものだから当然、人の出入りは厳しく制限されている。

そして魔導開発局も第一は同じ理由で入れず。

ただし、第二は国民からの魔導具の持ち込みなども受け付けているから、ある程度の見学は許されているはず。それでも見れる範囲は限られていたと思うから、あまり意味は無さそうでもある。

「うーん、まぁ悩んでもしょうがないか」

パタリと掲げていた腕をベッドに下ろして、あくびを1つ。

いい感じに微睡んできたので明かりを消してそのまま眠気に身を任せてしまおう。


翌朝、爽快な目覚めを味わい、美味しい朝食も堪能した私は早速町へ繰り出した。

思えば、ここしばらくはなんやかんやで野宿やら、泊まれても安宿。

それも、常に気を張り続ける必要のある状況だったから心から休まる時がほぼ無かったものだから、今日の朝は何とも感動を覚えてしまう程だった。

何て事を感慨深げに思い返しながら、今は特に目的も無く町を探索している。

大きな目的を達成した事もあるけど、オーフェに頼まれた魔導具の感触を確かめる為にもしばらくは動き回る必要もあった。

なので、散歩と探検、あとは自由を満喫するべく今日はのんびりと過ごす事に決めたのだ。

とは言え、この町は来た時にも思ったけどあまりにも造りが酷い。

フェオールでしばし過ごした身としては、特にそう感じてしまう。

王都は規則性のある、悪く言えば遊びの無い造りとなっていたけど、ここは反対に遊び心しかないような印象だ。

所々にある程度規則性のある部分もあり、それは大体が人の集まる場所となっているのは把握出来た。

けど、それも曲がりくねった道の先に唐突に現れるものだから、結局は違和感しか齎さないのである。

朝から町を巡り歩き、昼時に差し掛かろうかという頃まで歩いた感想がこれである。

だけど、それを悪いとは思わない。

つまりは、それだけこの町は歩みを続けてきた証拠でもある。

そして何より、ここに来るまでにすれ違ってきた人達が皆生き生きとしているのだ。

それこそが、この町が長く親しまれた証なのだろう。


何て事を考えつつ、今は昼食を食べる為に訪れた店で寛いでいる最中である。

町の中央にある広場、その一角にある店のテラス席から広場の噴水と人々の歩みを長めながら優雅なひと時を過ごしていた。

紅茶の注がれたカップを片手に、テーブルに運ばれたホットサンドに舌鼓を打つ。

モグモグと口を動かしながら軽く上を見上げると、今日は快晴な空模様だ。

しかし不思議な事に、あの魔導具の空から注がれる日差しはただの光のはずなのに本物のように暖かさを感じる。

その辺りも調べてみたいな、と思いつつ視線をテーブルへ戻す。

「、、、」

「へへへ~」

うん、気のせいだろう。

ホットサンドをもう一口。

「いや、無視しないでくださいよぅ」

何やら幻聴が聞こえた気がするけど、気にせず噴水の方へ目を向ける。しかし、

「お昼を邪魔したのは申し訳ないですけど、そうもあからさまにされるとさすがに落ち込みますよぉ」

ズイっと、視界に入り込む闖入者を軽く睨み、大きく溜め息をつく。

「何の用よ、オーフェ」

「いやぁ、通り掛かったら偶然知った顔を見つけましてなぁ」

ニコニコと嬉しそうに話す彼女の前に、店員が料理を運んできた。いつの間にか頼んでいたらしい。

それを半目で見つめて、一つ頷いてみせる。

「じゃあ会計はよろしく」

「いいですよぉ、その代わりこの後お付き合いくださいな」

「それが目的だったのね」

口いっぱいに頬張るオーフェに、既に食事を終えた私がトドメに一杯食わされたらしい。

残念ながら、午後の予定はオーフェに振り回される事が確定してしまった瞬間である。

世の中予定通りにいかないね〜(他人事

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