表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価500&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第一章 フェオール王国逃亡記
4/342

4 聖女は思い馳せる3

フェオール王国の王城にやってきてから私は、様々な所に連れて行かれあれこれ調べられた。

特に聖痕については、根掘り葉掘り聞かれた。下手に隠しても後が面倒だと思った私は肝心な部分を除いて説明する事にしたのだった。


 ・・・聖痕自体は幼い頃から認識していた。使い方も分かっていたし、無暗に使うものでもないと理解していた。だから特に意識せず、力を揮うことも無くこれまで過ごしてきたのだ・・・


そう説明し、聖痕を所持してい事を証明するために1つ息を吐く。

体内を巡る魔力に意識を向け、少しだけ考えた後、()()に刻まれた聖痕へと流し込む。すると淡い輝きを放って聖痕がその背に浮かび上がり、私が聖痕を持っていると聞いて集まった貴族達がそれを見て声を上げる。

聖痕に魔力が回っていく感覚に意識を向けつつそれとなく周囲に目をやると、

(この貴族共、いくら何でもあからさま過ぎない?)

さっきの声に加え、その視線や態度にまで様々な感情や思惑が隠す事なく含まれているのを感じながら、私は力を抜いて聖痕を再び不可視状態に戻した。


ちなみにこの聖痕、普段は目には見えないモノなのである。こうして魔力を流し込んで初めて輝きと共に浮かび上がるのだ。なので一目見ただけで誰が聖痕を持っているかは分からないのだ。ではなぜレオーネ王子は私が聖痕を持っているのに気付いたかというと、厄介な事に聖痕同士は共鳴するのだ。慣れ親しんだ相手だったり、あるいは聖痕に意識を向けていたりと幾つか対応する術はあるけど、先日のように不意を突かれるとハッキリと共鳴してしまう。

それはレオーネ王子も同じだったようで、あんな所でまさか聖痕を持つ者に出会うなんて思っても見なかったのだろう。それもそのはず、この国には聖痕に纏わる伝承がいくつもある。その中で特に有名なのが、古くから残された1つの予言だった。


 ・・・聖痕を受け継いだ者が産まれし時、即ち魔王が甦りし時・・・


100年以上前、当時のフェオール王国の国王と6人の仲間達はその身に宿した聖痕の力を以って世界に牙を向いた魔王を討ち滅ぼしたのだという。そして無事に帰還を果たした7人の若者達は後にそれぞれ英雄や聖女、救世主など様々な呼び名で称えられたという。

特にフェオール王国では国王自らが先陣を切って戦ってきた事から大いに歓喜に沸いたのだが、その時に彼は告げたのだ。


 ・・・魔王は最後に怨嗟の声を残した。いつか必ずや蘇り、聖痕を導に復讐を果たす・・・


それはやがて予言として伝えられるようになり、いつか聖痕を宿した者が生まれ落ちたなら、それこそが魔王が蘇った証であると、彼の王の血を受け継ぐフェオール家は代々受け継いで来たのだった。

そうして今、フェオール王家に聖痕を宿した子が誕生し、ついにその時が来たと王家やそこに連なる貴族達は世界情勢に目を向けてきたとの事なのだが。

「この15年間、どこにも魔王の復活を示す痕跡が見つからぬのだ」

ようやくあれやこれやの確認が終わった私は、息つく間もなく国王との謁見に臨む事になった。

前国王が病にて急逝し、若くして国王となったレオーネの父は我が子に聖痕が刻まれているのを知るや否や直ちに情報収集を命じ、魔王の足取りを探していたのだという。しかし、

「恐ろしい程に世界は平穏に包まれている。それはそれで決して悪い事ではないのだが、、、」

国王の言葉に私は静かに頷く。まさにその通り、平和ならそれが一番、だから早く帰してくれと、そんな意思を込めて。

「だが、ここに来てかつての英雄の血族以外の者に聖痕が刻まれた。過去の文献を調べさせてもグレイスという名の者が魔王討滅に同行したという記録はないのだ」

この短時間の間によくそこまで調べたなぁ、などと思いつつも、国王の言葉に間違いがあった事を心の中で指摘した。

他の誰もが知らずとも、私は、私だけはその間違いに気付き告げる事が出来るのだが、そんな事をすればそれこそ大混乱となるのは必至なのでそのまま胸に秘めた。

「聖痕については謎が多い。一体いつ、何のために刻まれてくるのようになったのか。歴史上にはっきりと登場するのはまさに100年前の魔王との戦いが初めてなのだ」

傍らに控えていたレオーネ王子が1つ頷いて後を続ける。

「俺は、聖痕とはこの世に危機が訪れた時に現れるモノだと考えてる。であれば当然、それが刻まれるのもかつての英雄達の子孫という事になる。フェオールから旅立った他の英雄達の子孫にも、恐らく聖痕が刻まれている事だろう」

そこで言葉を切った王子は、ビシッと私を指さした。

「だが、お前は違うであろう。血族で無いにも関わらず聖痕を宿しているお前は、一体何者だ!?」

そう、私と出会った時に王子もまた戸惑ったのであろう。あんな所に、伝説に出てくる聖痕を受け継ぐ者が居た事に。

そして、そんな王子の声が響き渡る中、私は大いに悩んだ。なぜなら、、、


(いやぁ、バカ正直に言った所で信じないでしょ。私が()()してるなんて)


心の中でベェっと舌を出しながら私はどうしたものかと首を捻る。そして何か勘違いをしてくれたのか、そんな私を見て国王も同情的になってくれたようで、王子の腕を下ろさせつつ再び語り始めた。

「ともあれ、そなたが何者であろうと聖痕を宿しているのも事実。強引に連れて来た事は王子にも厳しく言い付けるが、それでもあのまま放置しておく訳にもいかぬのだ。相応の待遇は約束する故、王宮にてしばし過ごしてくれ」

その言葉に私はガックシと肩を落として答えた。家には、しばらく帰れそうにないみたいだ。

そこでようやく国王は表情を和らげると何人か人を呼び、何やら話し込み始めた。そんな中、王子だけは私の事を見つめ続けていたのだったが、私はそれを無視する事にした。

(あぁ、面倒事に巻き込まれそうだなぁ)

謁見の間の、高い天井を見上げながら私は溜息をついた。

なんか少しづつ文字数が増えておりますが、お付き合い頂ければと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ