394 甘美なる毒
フェオール王国第一王女 ミーリス・フェオール
プリエール様の苦悶に満ちた、しかしそれ以上に満たされた快楽の嬌声が壁越しに聞こえてきます。
「あちらは楽しんでいるようですねぇ。ホラホラ、王女サマも早く堕ちて下さいな?」
フェアレーターの細長い指が私の裸体を撫で回し、そこから流し込まれる未知の感覚を歯を食いしばって堪えます。
囚われた私とプリエール様は別々の部屋に連れて行かれました。
プリエール様は別室で、外に居たゴロツキ達に慰み者にされているようなのですが、何故か縛られてもいないのに無抵抗のままでした。
そして、その答えは最初にフェアレーターの口から語られました。
「不思議ですか?あの女が何故ずっと従順なのか。アレはですね、昔々私によって徹底的に躾けられたからですよ。それにそれだけじゃなくて、そもそも今のプリエールはメルダエグニティス様の眷属に近い存在で、眷属の間には明確な序列が存在します。そして、私の上には2人しか居ない・・・つまり、アレは私の前では萎縮してまともに思考すら出来ないのです。過去の記憶と序列による恐怖、そのせいでアイツは私の側では何も出来ないお人形なんです!オモシロイですよねぇ、アッハハハハ!」
一体何が面白いのでしょうか。
ですが、今の私がそれを言ったとて何の抵抗にもなりません。
せめてもの抵抗として、軽蔑の眼差しで彼女を睨み付けます。
「アァ、その目!いいですねぇ、プリエールも初めはそうやって抵抗していたんですよ?でも、私の調教で今じゃあの通り、浅ましいケモノ!フフ、おバカですよねぇ、私が気付いていないとでも思ってたんでしょうか。向こうは気付けなくても、私はちゃあんと把握していたっていうのに」
まさか、プリエール様の気配を捉えていた?
いえ、そもそもとして私達はまんまと罠に嵌った?
「ん〜?ああ!何を言いたいか分かりますよぉ。いえいえまさか、お気付きでなかった?だってだって、あれだけ盛大に出迎えてあげたんですよ?」
・・・そういう事ですか。
途中の街での襲撃、あの時点で既に私達は捕捉されていた。
そしてそれに気づく事無くノコノコとここへ来てしまった、という事ですか。
確かに、今にして思えばもっと用心深くなるべきではありました。
自分の迂闊さを今更悔いますが、それを嘲笑うように止まっていたフェアレーターの手が再び私の体を這い回り始めます。
胸を撫で回され、先端を弄ばれ、無防備に晒す腋をさすられ・・・やがて、その手が下腹部へと伸びていきます。
必死に首を振り乱し体を捩りますが、まるで吸い付いたかのように彼女の手は離れません。
「アラアラ、そんなに必死になって・・・まぁ、もしかしなくても処女ですもんねぇ。さぁ、全てを私に明け渡しましょうねぇ・・・フフ」
フェアレーターの甘い囁きが頭を、体を、そして心を蕩かせていき、何も考えられなくなっていきます。
そのまま自ら足を広げ、彼女を受け入れ・・・
・・・
「ミーリス様?大丈夫ですか?」
プリエール様の声で顔を上げます。
どうやら少しぼんやりとしていたようで、先に探索を終えたプリエール様が様子を見に来てくれたようです。
「ええ、少し気が抜けていたようです」
「そうですか・・・そちらはどうですか?」
視線の先を指差し、先程の状況を説明します。
「一度何者かが中に入り、少しした後に出ていくのを確認しましたので、後はそこを調べれば終わりです」
それに頷いたプリエール様と共に建物に駆け寄り、中へと忍び込みます。
2人で中を検めましたが、大きな成果は得られませんでした。
ただ、壁に掛けられていた地図のある一点に印が付けられており、どうやらここに居た者達はそこへと移動したようです。
「先程の者は足取りを掴めそうな物を処分しに来たのでしょうか?」
「そう考えるのが妥当でしょう。地図を残した理由は分かりませんが、どの道これを見たとてどうにもならないでしょう」
プリエール様が外へと出て行き、それを追って私も足を踏み出します。
そのままドアまで向かい、外へと出る前にもう一度地図を睨みます。
「・・・要塞島。そこに居られるのですか、聖女様」
地図に付けられた印、それが指し示す地を改めて言葉にし、外へと出て行きます。
もぬけの殻となった街を出て、一度最寄りの街まで移動します。
次に向かうは要塞島、となれば船を調達しないといけませんし、装備も整えねばなりません。
それに、ここまでまともな休息も取れていません。
今後の事を考えると、宿で心身を休める必要があります。
プリエール様も私の案に同意されたので、真っ直ぐに宿へと向かいました。
夜遅くではありましたが、幸いにも1人部屋が2つ空いていたので、それぞれ休む事にしました。
翌日の段取りを確認し、自分の部屋へと入るとすぐにお風呂に湯を張りました。
私も年頃の女です、流石にそろそろ、色々と気になりますからね。
そうして体を湯で洗い流し、湯船へと体を沈めます。
「はぁ、やはりいいものです」
文明の進歩は素晴らしいもので、こうした宿ですら一部屋づつにお風呂が備えられるのが当たり前となっていますが、ずっと昔ではお風呂は貴族の物であり、市民は水に濡らしたタオルで体を拭いたり、後年になって少しづつ公衆浴場などが整備されたりと、不便な時代もあったそうです。
ゆっくりと体を温めた後、ベッドへと飛び込みます。
久々の柔らかな布団に包まれ、あっという間に眠気に襲われて私は深い眠りへと落ちていきました・・・




