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〈第二部開幕〉転生聖女の逃亡放浪記  作者: 宮本高嶺
転生聖女の逃亡放浪記・第二部

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393/405

393 潜入

フェオ―ル王国第一王女 ミーリス・フェオール

二手に分かれた私達は、それぞれ街の東と西に回り込んでの潜入を試みます。

私は東、プリエール様は西にそれぞれ向かい両方向から同時に街へと侵入するのですが、プリエール様に掛けて頂いた魔法の効果は1時間程度、ですのでその間に聖女様を探し出さねばなりません。

街の造りと現在の状況から推測出来る、人を捕らえておけそうな場所は既に頭に叩き込んであるので、後は気付かれないよう最短距離でそれらを捜索するだけです。

一度深く呼吸をして昂る気持ちを抑え、静かに門を超えていきます。


門番らしき者は立っていましたが、こちらはだらしなく壁にもたれ掛かって居眠りをしていたので簡単に通り抜けられました。

移動しながら周囲を見回してみますが、今の所怪しい場所はありません。

途中、薄明かりの漏れる建物を横切る際に中から女性の小さな泣き声が聞こえましたが、その方以外にも人の気配を感じたので恐らく中では・・・いえ、ここで飛び込んでしまえば全てが無駄になってしまいます。

心の中で何度も詫びつつ、最初に目標とした建物へと突き進みます。


何とか順調に最初の建物に取り付く事が出来ました。

壁越しに中の気配を窺いますが物音一つ無し、窓から中を覗いてみてもやはり人影は見えません。

もう一度周囲を確認し、ゆっくりとドアを開けて中へと滑る様に入り込み、ドアを閉じます。

そのまま中を確認し、隠し通路の類が無いのも確かめて外へと出て次の建物へと向かっていきます。


同じ事を何度か繰り返し、私の担当する建物はあと一つ。

その建物の周囲を確認し、中へ入ろうとした時でした。

ふと視線を感じて顔を上げてみると、ちょうど向かいの建物に侵入しようとしていたプリエール様がこちらを見ていました。

そして、何かを伝えるように身振りをされます。

(誰かが近付いている・・・でしょうか?)

何となくですがそう感じ取り、静かに建物から離れて物陰から様子を窺います。

少し間を置いて何者かが現れ、今まさに私が入ろうとしていた建物へと足を踏み入れていきました。

向かいに居たプリエール様は既に別の建物内へと入り身を隠されていたので問題無し、ですが私の方は暫く身動きは出来ません。

探ろうとしていた建物に人が入ってしまったからではありますが、こんな時間に、それも1人で訪れるのは不自然な気がします。

それに加え、

(さっきの人・・・いえ、本当に今のは人だったのでしょうか)

月明かりが届かない場所だったせいでその顔は見えませんでしたが、背格好からして恐らくは女性と思われる・・・のですが、それ以上に感じたのが何故か体の奥底から湧き上がる嫌悪感でした。

まるで、あの何者かは関わってはならないのだと魂が警鐘を鳴らしているかのようで、思わず身震いしてしまった程です。


暫く様子を見ていたのですが、先程の人物はまだ出てきません。

「ミーリス様」

背後から声を掛けられて飛び上がりそうになりましたが、今私を認識出来るのはただ1人。

「プリエール様、驚かさないで下さい」

「申し訳ありません。そのご様子では、まだ中に人が?」

「はい。全く出てくる気配がありません。多分、あの者はここで休んでいるのでしょう」

相変わらず表情の変化が見えないプリエール様ですが、その眉根がやや寄せられているのは分かりました。

「・・・妙な気配を感じます」

計らずも、私が抱いた感覚と同じ事を彼女は口にしました。

その事を伝えようとし、

「プリエール様、その事なのですが・・・」




「ネズミさん、みーつけたっ!」




次に気が付いた時、私は薄暗い部屋に転がされていました。

手足はキツく縛り上げられ、口も布で塞がれていて言葉を発する事も出来ません。

何とか首を巡らせてみると、すぐ側にプリエール様も居られてホッとしたのですが、すぐにそれも違和感に飲まれてしまいました。

(プリエール様は何故縛られていないのでしょうか。いえ、そもそもそのような状態なのに何故座り込んだまま動かれないのでしょう・・・)

何だか嫌な予感がしますが、それを確かめる術はありません。

「お目覚めですか?ミーリス王女」

暗がりから妖艶な女性の声が響き、ゆっくりと何かが近付いてきます。

地面に転がる照明魔導具に照らされて浮かび上がってきたその姿は、一見すると普通の人のようでした・・・が、すぐにそれは違うと気付かされます。


良く良く見るとその肌はやや青白く、恥じる事無く晒す裸体には鱗の様な紋様が浮かび、そしてその背からは翼が生えていました。

そして、最後に見えてきた顔を見て、私は確信しました。

(魔者!それもこの威圧感、間違い無く眷属・・・)

瞳孔は裂けたように縦に長く、艶かしい赤色の唇からは鋭い牙が2本伸びていて、更には額からも刃のような角が2本生えていたのです。

その異様に目を見開いている私に、その魔者は視線を合わせるようにしゃがみ込み、

「初めまして。お察しの通り、私は偉大なるメルダエグニティス様の眷属。名を」

「何故、貴女がこんな所に居るのです・・・デゾイト」

プリエール様が遮るように呟かれました。

ですが、デゾイトと呼ばれた魔者はその鋭い瞳を更に細めて、プリエール様の首を何かで掴み取りました。

「アハッ、懐かしい名前ですねぇ。でも、もうそれは捨てた名、今の私はフェアレーターです。次にあんなつまらない名で呼んだら、また気が狂うまで遊んじゃいますよ?」

無邪気な声音なのに、体の芯が凍てつきそうな殺気を感じて身が竦みます。

そんな私に気付いたのか、フェアレーターを名乗る魔者はプリエール様を放り投げて私を優しく抱き起こしました。

ですが、その手付きや視線には明らかに異様な感情が込められていました。

「あぁ、怖がらないで下さい。貴女は特別なオモテナシをしないといけないのです」

その両手が私の顔を優しく包み、彼女の瞳と真っ直ぐに向き合わされ・・・




「さぁ、快楽に身を委ねて。その果てに、貴女は私のオモチャになるのです。そしてそして・・・愛するフェオールを、メチャクチャにしちゃいましょう」

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