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〈第二部開幕〉転生聖女の逃亡放浪記  作者: 宮本高嶺
転生聖女の逃亡放浪記・第二部

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391 死なずの聖者

フェオール王国第一王女 ミーリス・フェオール

何かが割れるような音が鳴り響き、その直後、

「遅くなって申し訳ありません」

静かな声と、それとは正反対の激しい風が私を中心に吹き荒れ、襲撃者達を吹き飛ばしました。

私の隣にゆっくりと降りたったのは、

「プリエール様!」

魔導車で一人待機されていた彼女でした。

「突然、街が結界に覆われたので動いたのですが、結界が想定以上に頑強でして」

「いえ、お陰で助かりました。ありがとうございます」

一時はどうなるかと肝を冷やしましたが、お陰で何とか捕らわれずに済みました・・・ですが。


プリエール様の魔法で吹き飛ばされた襲撃者達は既に体勢を立て直し、私達を取り囲んでいます。

ですが、何故かそれ以上動く事は無く、代わりに、

「・・・よもや、こんな所でお目に掛かれるとはな」

相変わらず何処から聞こえるのか分からない声が聞こえてくるのですが、初めてそこに何かしらの感情が込められたように感じました。

「貴方方と会うのは初めてですが・・・」

「ああ。だが我等は皆貴様を知っているぞ、プリエール・ファラウス・・・いや、死なずの聖者」

それが聞こえた途端、プリエール様が纏う雰囲気が変わりました。

「・・・邪教神団」

「皆の者、見るが良い。我らが麗しき祝福の乙女、偉大なるメルダエグニティス様の加護を賜りし不死なる存在!」

高らかな語りに、襲撃者の間にどよめきが広がります。

ですが、対するプリエール様は隠す事無く怒りと殺気を放ちます。

「・・・ミーリス様、どうか耳をお塞ぎに」

「いいや、姫君にも知って頂くぞ。貴様の浅ましき本性をな」

プリエール様が飛び出し、最も近くに居た敵に魔法で創り出した剣を振り下ろします。

しかし、相手は敢えて避けずにそれを短剣で受け止め、そのまま鍔迫り合いに持ち込みました。

「憶えているのだろう?貴様が我等に囚われていた間に受けた事全てを」

「黙りなさい」

「ありとあらゆる拷問、実験、果ては慰み者に獣との交わり」

「黙れ」

「全て記録が残されているぞ。最も激しかったのが魔獣との交尾か、ケダモノ共の嬌声が響き渡ったそうじゃないか」

「だまれええええええええ!」

怒りの声を上げたプリエール様が魔法の剣に雷を纏わせ、そのまま敵を切り伏せます・・・が、

「100年にも渡る我らの教えに、何故貴様は最後まで屈しなかった?挙句逃げ出し、今日に至るまで姿を隠していた?」

「我が使命は300年前より変わりません。救わねばならない人が居て、その為に邪神を葬る。私が今も生き恥を晒す理由です」

平静を取り戻したプリエール様が静かにそう語り、再び魔力を高めていきます。

「哀れな・・・メルダエグニティス様の偉大さを理解出来ぬとは」

「必要ありません。そして貴方方も、みすみす見逃す手などありません」

彼女の体から青白い火花が放たれ始め、それに呼応して地面から同じ色をした光の玉が浮かび上がっていきます。

そして、それは予兆すら無く四散し、襲撃者達を瞬きの間すら無く貫いて消し飛ばしていったのです。

あれ程の者達をあの一瞬で・・・いえ、それよりも前に確かめなければならない事が出来てしまいました。

「あの・・・プリエール様」

「・・・はい。ですが、それはここではし辛い話でしょうし、まずは」

・・・そうですね、まずは私を護り散ってしまった彼女達を弔わねばなりません。


聞けば、街の人々は先んじてあの襲撃者達によって脅迫を受けていたらしく、更には見せしめとして何人かの方が犠牲になってしまったそうです・・・その中には子供も居たそうです。

その襲撃者を撃退した事で街の人々も解放され、私達の手伝いをして下さいました。

皆さんは何度も謝罪を口にし頭を下げられましたが、あのような者達にいきなり襲われ、目の前で人が殺されるのを見せつけられてしまったのでは仕方がありません。

そうして勇敢に戦ってくれた兵士達の墓を街の近くに立て、街の人々からお詫びとして幾つかの物資を譲り受け、魔導車へと戻ってきたのです。

「・・・」

「・・・」

何だか気まずい沈黙の中、プリエール様が静かに口を開きました。

「・・・今から話す事は他言無用に願います」

その言葉に私は頷きを返し、続きを求めました。

「先ほど見せたのは魔法ではありません。あれは神力と呼ばれる、極限られた者のみが扱える力なのです」

「神力・・・」

「はい。神に祝福されし者が扱える強大な力、かつてのミデン様もそれを操り自ら戦いに赴かれていました。しかし、この力は神の力故代償も大きい。そして、私が揮うそれは邪神の力・・・何故ミデン様がこれまで私の存在を秘匿されていたか、お分かりですね?」

あの時見せたミデン様の表情はそういう事だったのですね。

確かに、どうあれ邪神の力を持つ物を側に置いているなどと知られればそれは大混乱を齎すでしょう。

ミデン様は、そのような重大な秘密を私達に託されたのです。

「はい。ですが、何故私達にお力を貸して頂いているのですか?」

ミデン様のご意志とは言え、プリエール様自身がその気で無ければこの捜索にも来られなかったはず。

私の質問の意図に気付かれたプリエール様は目を閉じ、答えられました。

「・・・あの子を、リターニアを救いたい。私の願いはただそれだけです」

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