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〈第二部開幕〉転生聖女の逃亡放浪記  作者: 宮本高嶺
転生聖女の逃亡放浪記・第二部

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388/408

388 語られる過去

フェオール王国第一王子 レオニル・フェオール

フェオールの王城、その一室。

マンベルから戻ってきた俺達は父上達に報告をして、他にもやらないといけない事を片付けて、次の出立に備えて準備を進めている。

これでも俺は次期国王として既に王位後継が決まっている。

ミーリスも第一王女ではあるし継承権は持っているけど、実は大分前にそれを手放している。

気遣いの出来るアイツの事だ、早々に身を引いて無用な争いを起こさない様にしたんだろう・・・全く。

まぁ、そんな訳で後継者としてやらなきゃいけない事もあるから、聖女捜索にだけ時間を割いてはいられないのが本音ではある・・・のだけれど。


次の旅に備えて勉強が詰め込まれ、クタクタになって部屋に戻る。

そんな日々が続く中、

「レオニル」

「ミーリスか、こんな時間にどうした?」

既に時刻は夜の十時過ぎ、そんな時間にミーリスが俺の部屋の前で待っていた。

「疲れてる所にすみません。あの人が話をしたいと言ってるのです」

あの人・・・ミデン様から俺達の下に遣わされたプリエールとかいう女か。

「・・・言っちゃ悪いが、あの人なんか不気味なんだよなぁ。何というかこう・・・」

「生気が無い、ですか?」

「そうそう。って、お前もそう思ってたのか?」

・・・返事が無い。

どうしたのかと見てみると、何故かミーリスが顔を強張らせて固まっている・・・いや、そもそもさっきの返事はミーリスの声じゃ無かった気が・・・

「レオニル・・・今の声は・・・」

「・・・ああ、やっぱりか」

ミーリスが横へと移動しながら振り返る・・・その背後に、予想通りの人物が立っていた。

「プリエール・・・さん」

「お気になさらず。その感覚は正しい事ですので」

最初に会った時もそうだが、表情が一切変わらないのが不気味さを増してるんだよなぁ・・・いや、それよりも。

「正しいって、どういう事でしょうか?」

ミーリスが先にそう問いかける。

そうだ、俺もそれが気になったんだ。

「・・・場所を変えましょう。まずは、それについてお話いたしましょう」

プリエールはそう言うと、ゆっくりと振り返り歩き出した。


予め場所を確保していたのか、案内されたのは城内でも人気が少ない物置などが集中する区画だった。

そこにある一室で、俺とミーリスは並んで椅子に座り、向かいにプリエールが立ったままで口を開く。

「では、お二人が私に抱く感覚についてお話ししましょうか」

そう言うと、徐に彼女が服を脱ぎ始める。

「ちょっ!?」

「何をしているのです!?」

慌てて止めようと立ち上がり、だけど俺もミーリスもその動きはある物を見た瞬間に止まってしまった。

「・・・なんだ・・・それ・・・」

「・・・何という・・・」

躊躇いなく裸になった彼女の体、その左肩辺りから右の腰辺りにまで刻まれた一筋の傷跡。

そしてそれ以上に目を引くのがその傷が通る胸の中心、まさに心臓がある辺り、そこだけがドス黒く変色しているのだ。

そしてそこで脈動する何か・・・まるで自らが心臓であるかと主張するかのようなそれが余りに不気味で、同時にそれこそが俺達が感じていた彼女に対する感覚の正体であると理解する。

「プリエール様、それは一体・・・」

「・・・これは邪神の力によって与えられた傷。そして胸にある肉塊は・・・私の魂です」

「魂・・・」

「はい。300年前、私は邪神に飲まれた聖女リターニアと戦い、破れました。その際、邪神の力が宿る武器にて切り裂かれ、この傷を負いました。本来であれば、私はそこで死んだはずでした。しかし、当時のミデン様はそれを押し留めようと神の力を行使された・・・そのせいで、あの御方は重大な局面で万全を期する事が出来ず・・・いえ。その結果、腐り堕ちた心臓の代わりに魂が私を生かした。しかし、それも本来であれば邪神に喰らわれたはずのもの故、このような形になったのです。そうして私は生者でも無く、さりとて死者ですら無い存在と成り果てました」

いやいや、待て待て待て!

いきなりの話、しかもその突拍子の無い内容に頭が追い付かない。


何度か深呼吸をして頭を落ち着かせる。

隣のミーリスも目を閉じて情報を整理しているようだ。

そうしている内にプリエールは服を着直し、相変わらずの無表情で俺達を見つめていた。

「えと、つまりプリエール様は300年前から生きておられたと?」

「はい。無論、表には出ておりませんが。付け加えるなら、今の私はある意味邪神の眷属に等しい存在。そんな存在がマンベルに居るとなると宜しくは無い・・・故に、私は存在しない存在であるのです」

信じられない話ではあるが・・・いや、その真偽はともかくとしてだ。

「つまり、貴女は聖痕の聖女同様、邪神の気配を感じる事が出来る。だから聖女を追う事もまた出来る、と?」

俺が口にした考えに、彼女が静かに首肯する。

「はい。一つ訂正するならば、こちらから邪神を追う事は出来ません。存在の規模が違い過ぎる故、こちらからの干渉は弾かれてしまう。しかし、少なくとも私とリターニアの間に於いては話が変わります」

だから、ミデン様はプリエールを俺達の下に遣わせたのか。

正直、全てを信用する事は今は出来ない。

けれど、宛ても無く聖女を探すのも時間の浪費、ならば今はコイツに頼るしかない、か。

「分かった。俺達にはアンタしか頼りが無い。よろしく頼む」

「承知致しました。では改めて、今後の事をお話致しましょう」

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