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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
38/362

38 変人、現る

その魔導具店は、入った瞬間思わず気圧されてしまう程に異様だった。

壁際の棚には乱雑に、所狭しと魔導具が並んでいて、更には真ん中にも大きな棚が鎮座し、そこも同じ様に魔導具が無造作に置かれている。

少し奥に行くと、簡単に持ち運べない大きさの、よく分からない魔導具らしき物もあり、見た目とは裏腹に品揃えは悪くはないみたいだ。


魔導具と一口に言っても、大きさも形も、当然用途も多種多様だ。

世の中に出回る魔導具は、大半が魔法を補助する効果の物で、特殊な用途の物が極僅か、特注で作られている。

その性質から、基本的には身に付けられるように装飾品のような形状が採られていて、実用性のある物から見た目を重視した物まである。

いつだかに、日常生活で使うような魔導具は無いと言ったけど、実際に全く存在しないという訳ではない。

極一部、所謂お貴族様や、お貴族様御用達の店では、快適に過ごす為の魔導具という物がある。

かく言う私も、かつてフェオールの城に留まっていた時にその恩恵を受けていたりもする。

例えば、夏の暑い時期に部屋を涼しくする魔導具や、お風呂に温かいお湯を勝手に張ってくれる魔導具など、いわゆる贅沢品がそうだ。

普通の家庭では、夏場は氷の魔法で作った氷を置いて涼むか、風を操れるならそれで涼を取るか、当然魔力を消費するので、1日中などは望むべくも無い。

お風呂なんて、火を起こして水を沸かしそれを浴槽に移し替えて、と非常に重労働だから、中級層程度の稼ぎでも2、3日に一度入るかどうか、という贅沢な物だ。

低級層など向けに公衆浴場も当然あるが、そこもお湯の入れ替えなどの手間暇のせいでそこそこのお金を取られる。

いつかに入った天然のお湯が沸くお風呂などは貴重なんてレベルではない。あの町もあれを資源にすれば一気に大都市へと成長できるのだが、はてさてといった所かな。


少し脱線したけど、魔導具とは今や生活と切っても切れない程に深く根付いた便利な道具だ。

このアンスリンテス魔導国は、そんな魔導具の開発を担う世界屈指の国だ。

勿論、他の国が独自に研究開発している魔導具もあるし、多少は出回っても居るけど、どこも自国の技術を外に出したくないと、出回っている物の改良型など、大きく目立つことは無い。

対するアンスリンテスは、なんとあらゆる魔導具を世に放ち、世界中の生活水中を大きく引き上げた。

しかも、求められたらその研究成果をも提供している。勿論、相応の見返りは貰っているし、危険な改造や、軍事転用などは禁じている。

そうしてこの国は、魔導具のみならず、魔導具に込める魔法の研究も盛んで、世界で唯一、魔法や魔導具について学べる機関も存在している。

さらには、さっきも見掛けた行き先を示す魔導具、そして何と言ってもこの町全体を覆う魔導具の天幕など、見た事も聞いた事も無い物が当然の様に使われている。

それだけでこの国が如何に優れた技術を持っているのかを窺い知る事が出来る。

この店も、恐らく他の店も、見る人が見れば宝の山に違いないだろう。

惜しむらくは、私が大した知識を持たない事だろうか。

こうして店内を見て回ってもどれが何なのか、全く分からない。

効果を聞こうにも、店員が居ないからどうしようもない。

困ったなぁ、と手近な魔導具を手に取って眺めてみる。

(こうしてみれば、何となくは予想がつくけど、それでもちゃんとした説明が聞きたいんだけどなぁ)

そっと魔導具を棚に戻した直後、店のドアが勢いよく開けられた。

「ヒャハア、この店の空気はいつ吸い込んでも堪りませんねぇ!」

飛び込んできたその女性は私に気付く事無く叫んだ。

それもそのはず、彼女は目を閉じてウットリと表情を蕩かせているのだから。

呆気に取られて立ち尽くしていると、そこでようやく目を開いた彼女と視線がぶつかる。

「あっ、、、」

「ど、どうも、、、」

愛想笑いを浮かべて挨拶をすると、私はそそくさと店を後にしようとして、

「待って!怪しくないから!変態でもないし気が触れてるわけでもないの!」

もうその言い訳からして怪しさ満点。こういうのとは拘らないのが一番だと、私の本能が告げている。

「し、失礼しました~って、!?」

ドアに手を掛け、その手に彼女の手が伸びて抑えてくる。

ドアを開けようとする私と、それを阻止する謎の変人。

静かな攻防がしばし続き、

「ていうか、なんで邪魔するのよ?」

「え、いや、何と言うか、、、客を逃がすワケにはいかない、から?」

いや、私に聞かれても。ていうか、客って。

「貴女、まさかここの店主さん?」

「え?ああ、そっか!貴女外からの人ね!気付かなくてゴメンナサイね!」

ようやく手を放してくれた彼女が今更ながら居住まいを整えて私に向き直った。

「しっつれいしました!私はオーフェ・ローディアナ・アンスリンテス。このローディアナ魔導具店の店主であり、魔導開発局第一の局長を務めている魔導具大好きなただの人です!」

「はぁ!?」

衝撃の名乗りに、思わず大きな声が出てしまった。

自分で書いておいてこう言うのもおかしいけど、この作品変人しかおらんな?

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