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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第二章 アンスリンテス魔道国珍道中
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37 アンスリンテス魔導国

雲一つない快晴の下、私はのんびりと街道を歩いていた。

フェオール王国との国境を越え、普通なら馬車で行くべき道程を、あえて徒歩で進んでいる。

色々あって持ち合わせが無い、というのも理由だが、今の私の目的は世界を見て回る事。

馬車から流れる景色を眺めるのも良いけど、こうして直接肌で空気を感じるのもまた、旅の醍醐味だ。

何せ、先日まで居たフェオール王国では逃げ回った挙句になんやかんやと巻き込まれて、ゆっくりとする暇が無かったのだ。少しくらいはのんびりしても文句は言われないだろう。

いや、そもそも突っかかって来るようなら叩き潰すまで。

何せ、色々あった末に私は本来の力、即ち、魔王としての力を解放している。

まだ若干馴染んでない上、かつての戦いでの失敗により幾らか力が削がれている、分かりやすく言えば、浄化されているようなのだ。

時間が経てば戻るとは思うけど、それでも今のままで十分に強いと自負している。

だからこそ、こうして旅を満喫しているのだし。


国境から歩く事5日ほど、野生の獣を捕らえたり、食べられる野草を見つけたりと、野宿生活を満喫しながら新たなる地であるアンスリンテス魔道国を西に横断、木々が並ぶ小高い丘を貫く街道を抜けた私の視界に、

「あれが、アンスリンテス魔導国の首都、、、」

異様と言うべき光景が飛び込んできた。


都市の大きさはフェオール王国王都ブライテスと同じ位か。

その広大な都市を白い幕が覆っているのだ。それも一切の隙間無く、全てを。

つまり、都市が丸々天幕の中に納まっている様な形なのだ。

周囲を覆う外壁こそ普通の壁だが、建物1階分から上から全てが謎の天幕で覆われ、中を窺う事が出来ない。

その天幕も、重力に逆らうかの如く真っ直ぐに、壁の様にそそり立っていて、空の色と溶け合い境界が曖昧になっている。


「魔力を感じる。これはまさか、魔導具?」

思わず、呟いてしまう。

あの天幕は魔導具だ。魔力の流れを感じるし、それを追ってみると無数の魔導具が配置され、天幕の内側から壁を形成しているようだった。

だけど、

「あんな魔導具、見た事も聞いた事も無い。これが、アンスリンテス魔導国の技術なの」

魔導具とは、一般的に魔法を行使する為の補助具だ。

魔法を強化したり、複数の魔法を同時に扱う為の物、或いは魔法が使えない人が一時的に魔法を扱えるようにする為の道具。それが魔導具だ。

一部、日常生活を便利する物もあるにはあるが、それも副作用的なものに過ぎない。

あれは、一体どういう目的で、どんな効果を齎しているのか。

私は気付かない内に笑みを浮かべていた。

ここは、間違いなく面白い!

丘を掛けて、都市の入口へと走る。

まだまだ距離はあるけど、浮き立つ心に急かされて私はアンスリンテス魔導国の入り口を目指していた。


入口の検問は呆気なかった。

いつも通り身分証を提示、するまでもなく訪れた目的を聞かれただけ。

私は素直に魔導具が気になると告げると、担当の人は満面の笑みで私を迎え入れてくれたのだ。

思わず首を傾げてしまったけど、本当に中に通されて思わず笑いそうになってしまった。

なんとか堪えて中に進むと、もはや驚きを通り越して呆然とするしかない光景がそこには広がっていた。


外から見えた白い天幕は、内側から見上げると青く澄み渡る空を映し出していた。

壁の部分は、一方は広大な海が広がり、別の壁は雄大な山脈を映し出し、また別の所は草原を駆ける馬の群れが生き生きと走り抜けていく。

「スゴイ、、、」

一歩踏み入れた足はそのまま地面に縫い付けられて、この目は何度も壁や屋根に吸い込まれる。

外界から切り離されたはずのこの都市は、その内に入るとまるで夢の世界だった。

風景が映し出されている壁も、しばらく見ていると船がやってきたり、鳥の群れが悠々と舞っていたり、本物の景色がそこにあるかのようだった。

そんな私を道行く人達は微笑ましく見ていたのだけど、私はそれにすら気付く事無く、この光景に見入っていた。

息をする事すら忘れそうになって、そこでようやく我に返った。

この光景だけでも十分満足できてしまいそうだけど、せっかくここまで来たんだし、もっと色々見て回りたい。

縫い留められそうになる足を何とか前に押し出して歩き始める。


魔導国の内部は以前訪れたフェオールとは打って変わって、何と言うか、雑だった。

建物は立ち並びも大きさも規則性も無く好き勝手。

だから当然、道も真っ直ぐな所が少なく、曲がりくねっていたり、突然階段が出てきたり、進んだ先が行き止まりだったりと、それはもう退屈しない。

ここの住んでいる人達は何を目印に目的地へと向かっていけるのか。

よくよく観察してみると、どうやら魔導具を使っているようだった。

魔導具から光が伸びて、道を指し示していた。

どういう仕組みなのかも気になるし、それ以上に、生活に魔導具が密接している光景が不思議だった。

何とか町の出入り口まで戻ってきた私は、改めて周囲を観察してみる。

すると案の定、周辺には幾つもの魔導具を扱う店があり、ちょうど近くにある店の看板を見ると予想通り、目的地を指し示す魔導具が置いてある事が書いてあった。

しかも、購入だけでなく、旅行者の為に貸し出しを行っているとも書かれていて少し恥ずかしくなってしまった。

本来なら、ここで目的地へ行くための魔導具を手に入れて、それから繰り出さないといけなかったのだ。

すっかり景色に見惚れた私はそれを見過ごし、危うく迷子になってこの町を永遠に彷徨う所だったのである。

あまりに恥ずかしい末路に内心で苦笑いしつつ、私は目を向けた看板の店に入ってみる事にした。

いよいよ本格的に新章開幕でございます!ぜひお楽しみ下さい!

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