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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第九章 オセリエ伝統皇国・エオール革新統国相克記 後編
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362 終焉を謳う最後の神

手に持ったソレを引き摺り出し、掲げる様に頭上へと持ち上げる。

それを、驚愕しながら見つめるネイが唇を震わせながら何かを発しようとする。

けれど、

「抜け殻に用は無いわ」

そう告げ、胸の聖痕から伸びた無数の茨がその体を貫き、魔力へと変換して私へと流れ込む。

そして、

「ワルオセルネイの聖痕は何処に現れるかしらね」

最後に残ったネイの心臓、それを胸の聖痕へと押し当て、取り込む、、、私に、十個目の聖痕が刻まれた瞬間だ。

魔力を流し、それを確かめてみると、

「あら?何て事かしら、まさか、私と並んじゃうなんて!」

ネイから得た聖痕は、皮肉にも私の聖痕の下、所謂鳩尾の辺りに浮き出た。

「アハハハ!こんな所に顕れるなんて、一体何を司るのよ!ホント、最後まで滑稽な存在だったわね!」

前にも語った通り、聖痕の顕れる位置は意味がある。

だけど、ネイのそれはまるで訳が分からない。

鳩尾になんて、一体どんな意味があると言うのだろうか、いいえ、それは彼女の存在と同じ、即ち無意味という事だ。

それが余りにも可笑しくて嗤いが止まらない。


一頻り嗤い、気を取り直して辺りを見回す。

既にここの住人達は魔物へと成り果てた。

お陰でシゲルムも聖域としての機能を失い、力を増した私の瘴気で紅く染まり始めている、、、ただ一部を除いて。

「腐っても魂の封印。そう易々とは破れないって事ね」

石碑の周囲だけは未だ聖域として維持されている、それはつまり、まだ封印を解けないという事になる。

正直な話、力尽くで解き放つ事も出来るし、逆に無理に取り戻さなくても構わない。

だけど、ここまで来て何もしないで帰るというのもネイの思惑通りみたいで面白くない。

「、、、そうね、どうせもう終わりは近いのだから」

最後は派手に、何もかもを巻き込んで幕を下ろしましょう。

周囲をうろつく魔物共を茨で掴み、そのまま魔力を流し込んでいく。

連中を興味深そうに観察していたスコーネとフェアレーターが、その魔力によって引き起こされる事象に巻き込まれないように私の下へと戻ってくる。

「さぁ、カワイイ屑共。まずはこの閉ざされた楽園を徹底的に汚し穢し犯しなさい」

茨の先端、魔物達が光に包まれ、次々と姿を消していく。

「何とも好き放題しよる。アレらは何処に飛ばしたのじゃ?」

「さぁ?取り敢えず人が居る所に送り込んだだけよ。あとは穢れが蔓延して、蛆虫共が勝手に堕ちていくのを待てばいいわ。もう邪魔をする奴も居ないのだから」

スコーネに答えながら封印の石碑を足蹴にする。

力が反発して火花が散るけど、それも既に弱弱しい。

もう少し世界が穢れれば自ずとこの聖域も破壊され、私の魂は解き放たれる。

あとはただ、ここでその様を高みの見物していればいいだけ、、、




「まだ私が居ます」




何処からか声が響き、後ろを振り返る。

視線の先、ゆっくりと歩きながらこちらへと歩んでくるのは、見紛うことは無い、

「いい加減しつこいわね、お前も。そんなにまでして私を葬り去りたいの?、、、グレイス・ユールーン」

因縁たる存在、この世界に残された最後の希望が、私の前へと姿を現す。

しかし、とうに消え失せたと思っていた彼女が、一体どうやって、、、

「、、、そう言う事。やってくれたわね、ネイ」

そうか、ネイは己の魂を賭して彼女を解き放ったのか。

こうなる事を見越し、敢えて私に喰らわれる事で内へと入り込み、グレイスの身代わりとなったのだ。

だから、あんな場所に聖痕が刻まれた、、、最後まで憎たらしい奴。

だけど、それでももうどうにもなりやしない。

魔物は世界に解き放たれ、守護者たる神も死んだ。

それでも、、、いえ、愚問ね。

私を真っ直ぐに見据えるグレイスの瞳に迷いなど微塵も見えない。

「ワルオセルネイ様の最後の思い、しかと受け取りました。故に、私は貴女を止めます」

「それは百年前の事も言っているの?」

「無論です。あの時の判断は間違いでは無いと今でも思っています。ですが、それをも上回る貴女の奸計によって水泡と帰した、、、だからこそ、救います。リサの魂を」

くだらない。

余りにもくだらな過ぎて、だからこそ今度は、

「ええ、貴女の魂を完全に葬り去りましょう。いいえ、それでは私の怒りは収まらない。そうよ、お前も絶望の彼方へと堕とし、魔物にしてあげましょう。面白そうね、女神に祝福されし聖女様が成り果てた魔物、一体どんな姿なのかしらね?」

想像するだけでゾクゾクとしてしまう、、、けれど、グレイスは眉一つ動かさない。

「、、、もう、あの子なのか邪神かすらも分からない、魂の同化が深すぎる。けれど、それでも諦めません。私が今日まで生き永らえたその意味、それを証明しましょう」

誰でもない、自身に向けた静かな言葉。

だけど、それとは対照的に彼女から溢れ出す魔力は凄まじかった、、、いえ、たかが人如きが何故あれ程までの魔力を持っている?

しかも、長年私の魂に囚われていて、少しづつ力を奪い取っていたというのに、、、

「参ります。女神様、私に力を!」

高らかな声と共に、グレイスの体が光を放つ。

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