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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第九章 オセリエ伝統皇国・エオール革新統国相克記 後編
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360 シゲルムの謎

重い沈黙を破ったのはネイだった。

「、、、そこな幻獣から聞いたか。かつては妾も同じであった、、、人は取るに足らぬ存在と。じゃが、その献身あればこそ我等は在る事が出来たのだと気付き、改めた。今更言い訳でしかないがの」

本当、今更な事だ。

それに、そんな事を知った所で何の意味も無い、、、アイツの魂は私には取り込めない、余りにも綺麗過ぎる。

恐らくそれもあってネイは私をここへと誘ったのだ、同じ轍を踏まない様にと。

結局、根底にある考えは変わってはいない、ネイはこの地を武器として利用したのだ。

だけど、本当にそれだけだろうか。

ここはワルオセルネイの魂が封印されている地だ、そんな所にわざわざ招き入れる理由も意味も分からない。

その困惑が顔に出ていたのか、ネイが何かを示すように顔を彼方へと向ける。

「この先に行けば分かる、、、ここは、あの頃のままを残しておる故にな」

そう告げ、私の返事を待たずに歩き出す。

ネイの言葉に乗る訳では無いけれど、私の内にも何か予感めいた感覚があるのだ、、、ここには知らねばならない事があるのだと。

警戒はしつつ、ネイを追って私も足を踏み出す。


このシゲルムと呼ばれる地は小さな島だ。

それこそ、マンベルの島と同等か、それよりも小さい位か。

そして何より、ここは空を漂う世界の更に上に浮いた島であるという事も分かった。

島は結界に覆われ、下からでは見つける事は出来ず、至る事も出来ない、、、ここの結界は、今のエオール同様、神によって張られた物だからだ。

極め付けが、

「この地は、メルダエグニティスを封じた際に共に時を止めた。彼奴の封印の地を知られぬ為にな」

そう語るネイが視線を前方に飛ばす。

そこは島の中心に当たる場所であり、同時にこの地に生きるかつての人々が住まう、謂わば村であった。

簡素な石造りの小さな家々が立ち並び、その周囲には最初に見た人影と似た様な姿をした連中がネイを出迎える様に立ち並んでいた。

「百人も居ないのね」

「封印と共にしたのは七十八人じゃ。皆、己が意思で決断してくれた、、、メルダエグニティスの為ならばとな」

「あの子の為?世界の為では無く?」

ネイにその言葉の意味を問うけど、返事は無かった。

その代わりとでも言う様に、彼女は歩を進めて何処かへと向かう。

そして、

「ここじゃ」

村の中心に佇む小さな石塔へと辿り着く。

高さは私の背丈の半分程、大きさも腕よりも少し太い程度の、本当に小さなそれに、私は目が吸い寄せられた。

「、、、ここに、居る」

まさに、魂が惹かれるとはこの事を言うのだろう。

メルダエグニティスはここに居る、これを壊せば解き放たれる、、、いや、そんな簡単な話では無い。

「そうじゃ、彼奴はそこに居る。そして其方も気付いたであろう、そう簡単に最後の封印は解けぬと」

「わざわざそれを知らしめる為にここへ連れて来たの?」

少し離れた所で私を見つめるネイを睨む。

だけど、それに対して返された彼女の視線は、何故か優し気であった。

「無論、それもあるがの。気付いておるじゃろうが、ここに住まう者達は一切の穢れを知らぬ。故に、其方は喰らう事は出来ぬ。そして彼等の命を奪い、魂を輪廻に戻してしもうたら」

「、、、邪神の力は大きく削がれるわね」

邪神の力の源は魂の穢れだ。

他の神々が取り込む純粋な魂の力とは対極にあるそれこそ、メルダエグニティスが武器として用いるに相応しと目を付け、事実それは有効であった。

だけど、その反面にもしも穢れの無い魂が巡ってしまえば、穢れは容易く掻き消されてしまう、謂わば諸刃の剣でもあった。

だからこそ、あらゆる策を講じて穢れた魂が増える様に仕向けたのだ。

そして、神々もまた同じ様に策を講じていたのだ、、、シゲルムを残すという強引な手を。

メルダエグニティスの封印が解けそうになった時、ここもまた目覚める。

この地自体が邪神としての力を抑え込む、そしてそこに住まう者達の存在もまた同じ。

その彼等を迂闊にも排除してしまえば、それこそが致命的な失策となる、、、何とも良く出来た罠だ。

これでは私は彼女を解き放てない、、、周囲を取り囲む住人達のせいで。

「これも躾の成果?」

「彼等の意思ぞ。妾は何一つ強制などしておらぬし、寧ろこのような役目なぞ背負わせとう無かった。じゃが、メルダエグニティスが如何な策を講じていたか分からぬ以上、必要はあった、、、よもや、この様な状況を齎すなぞ思いもしなかったがな」

私が動けば彼等も動く、その身を賭して封印を護るだろう。

せめてここを領域化出来れば少しは好機も巡るだろうけど、余りにも相性が悪過ぎてそれも叶わない。

そうしてどうしたものかと考えていると、

「、、、貴女様は、あの御方の現身ですね」

不意に、住人の一人が声を掛けてくる。

突然の事に私が戸惑っていると、そいつは私の傍まで歩み寄り、その場に膝を突いてみせたのだ。

「何を、、、」

「あの御方にお伝え頂きたいのです。我等皆、貴方様をも同様に敬い、愛していました、と」


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