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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第九章 オセリエ伝統皇国・エオール革新統国相克記 後編
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358 聖域の真実

トカゲ姿に戻ったスコーネの背に乗り、海を渡る。

そう、私は今、東の彼方にある聖痕遺跡へと向かっているのだ。


そもそも、あそこは海の彼方にあり、尚且つ今ではネイによって海洋探査の禁止、結界の展開などで立ち入る事が不可能になっている。

だけど、それは普通の人に対する対策であり、今の私やスコーネという逸脱した存在には通用しない。

そして現状、ネイはエオールを最後の砦として結界を張り、その中に籠っている。

となると、果たした聖痕遺跡にまで気を回す余裕はあるのだろうか。


まぁ、結論から言えば対策はしているだろう。

但し、私の予想が正しければ、それは結界の強化などでは無い。

何せ、あの場は神々の力が満ちた聖域であり、邪神を封じる為の地なのだ、今の私が踏み込めばそれだけで影響を受けるのは確実、そうでなくても全力を出す事が難しくなるのは明白だ。

となれば、元の姿に戻ったネイが存在しているだけでその効果は増幅されている筈なのだ、領域とはそういった物なのだから。

「しかし、そう上手い事運ぶのか?」

最もな疑問をスコーネが投げ掛ける。

私とてそんな簡単では無いだろうと思ってはいる、だけど、

「ネイが本気で私を殺す覚悟を決めたのなら、あの場は確実に私を殺し得る地になるわ」

「何故じゃ?如何に真の神であろうと、未だ其方の方に天秤は傾いておろう」

「だからよ。今のネイなら、刺し違えてでも私を止める、、、かつて神々が邪神にそうしたようにね」

私の言葉で合点がいったのか、スコーネが僅かに首を縦に振る。

「なるほどのう。極論、其方さえ封じてしまえば、事実上邪神の復活をも阻止出来る。ネイはかつてを再現する覚悟をしたやも知れぬ、という事か」

「ええ。だからこそ、勝機があるのよ、、、フフ」

意味深な笑みに、スコーネもまた鼻を鳴らして応える。

そう、これはお互いに諸刃の剣となる。

ネイが勝てば、私は封印される。

私が勝てば、邪神の魂は解き放たれる、、、まぁ、どちらを取っても私という存在は別の何かへと変貌する、その時に私は私で居られるのかは、、、どうでもいい。

そう、私の結末は既に決まっているのだから、そこに向かって進めば良いだけ、、、決戦の場は、もう目前だ。


思った通り、聖痕遺跡は東の海の果てにあった。

かつて、ウルギス帝国皇帝ゼイオスが見たという世界の終点、海が空へと落ちていき、その先にはただ雲の海が広がるだけだという光景、、、今、こうして見てみるとその謎も分かる。

「結界、、、私達が住む世界そのものが空を飛び、結界で覆われている、、、こうしてこの目で見ても信じられないわね」

聞かされた真実の通り、この狭い世界は巨大な島に過ぎず、更には空を飛んでいる、、、言葉にするとあまりにも現実離れした滑稽な話にはなるけれど、こうして目の当たりにすると嫌でも理解させられてしまう。

そしてそれは他にも、

「、、、私と似た力を感じる。本当に邪神の力を利用しているのね」

この世界を覆う結界、そこから感じ取れる邪神の力の残滓。

かつての神々は中々に頭の良い事をしたらしい。


邪神はその特性故、ほぼ尽きる事無く力を得続ける事が出来る、だからこそ倒す事を諦め、封印するという形を取った。

だけど、それだけでは力を取り戻した邪神自身が結界を破ってしまう、だからその力を利用する事にした。

邪神の力を吸い上げ、魔力に変換して結界の維持に充てる、、、そうする事で、邪神は永遠に目覚めぬ微睡みに囚われ、この世界もまた永劫切り離された聖域と化す。

そんな場所に人々がいて、何も知る事無く生かされているのも納得だ。

彼等はこの世界を維持する為の餌なのだ。

その魂が死後にあるべき場所へと帰り、その時邪神は負の感情を得て、それを吸い上げ結界へと流す。

その結界の中で人々は産まれ、生き、死んでいく事を繰り返す、実に合理的で、神らしい傲慢だ。

だけど、それでも綻びは産まれた、、、私が、産まれた。

見てみなさい、既にこの世界から多くの命が失われた、それも本来の流れを遥かに超える勢いで。

それが何を齎すのか、何て事は考えるまでも無い。

既に邪神は吸い上げられる以上の力を取り戻し、封印を解こうと世界に干渉を始めている。

もしも、その封印が本当に解けてしまったとしたらどうなるのか、、、そう、世界の終わりだ。

結界は失われ、外側と繋がる。

そうすれば、断たれていたであろう外界からの力も邪神は取り込めるようになり、力を増した邪神は復讐を果たすだろう、、、世界を滅ぼすという、かつての望みの通りに。

ただ、それでもまだ一つだけ残る謎がある。

「スコーネ、この世界はいつから空に浮いているか分かる?」

「む?それは無論、メルダエグニティスの封印の時であろう、、、いや、それでは辻褄が合わぬ」

そう、結界はそうだとしても、この世界を浮き上がらせる何ていう想像を絶する所業を、果たして神々は為せたのだろうか、、、だから、それはきっと違う。

まだ、この世界には隠された秘密があるのだ。

そしてそれは、きっとあの場所に隠されている。

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