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〈第二部開幕〉転生聖女の逃亡放浪記  作者: 宮本高嶺
第九章 オセリエ伝統皇国・エオール革新統国相克記 後編

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357 永遠の別れと本当の始まり

目を開けると、あの小部屋へと戻っていた。

いや、どうやら今の出来事はほんの一瞬でしかなかったようだ。

背後の二人は周囲を警戒しつつ私を見守り、特に動いた様子も無い。

(、、、まさか、こんな所で求めていたものを得るなんてね)

最初は、これこそが邪神の封印に関わる何かだと思っていたけれど、まさか私の過去が封じられていたなんて、予想外にも程がある。

だけど、お陰でようやく全てが繋がった。

ネイはわざと私を誘い込んだのだ、、、これを取り戻させる為に。

そして、、、巫女の最後の言葉の意味も。

「愛、、、」

リサとして生きた時代、私は捨てられた、、、そう記憶を変えられ、それを糧にして全てを憎んだ。

それは、私が私として生きる為に必要な事だった。

そうだ、あの感情があったからこそ、私は戦い続けられた。

その果てに迎えた結末も、例え記憶を取り戻した今でも後悔なんてしていない。

だけど、

「、、、」

もう、手遅れだ。

あの時の様に、今の私ももう戻れない場所にまで来てしまった。

ここで足を止めたら、それこそ心が砕けるだろう。

だから、

「さようなら、リサ・ダエーグ」

思い出の詰まった小箱を、この手で破壊する、、、欠片も残らぬ様、丁寧に。

これでようやく私は始まる、終わりへ至る為に。

リサと言う名の少女も、グレイスの加護も、もう無くなった。

今ここに居るのは、もうただのリターニアだ。

なら、やるべき事は一つのみ。

「行きましょう、、、ネイを殺し、封印を解き、メルダエグニティスを目覚めさせる為に」


夜空は深く遠い。

だけど、それは私の心とは真逆の暗さで、そうと気付いてしまったら不快としか感じなくなってしまった。

「何だか雰囲気が変わったか?」

そんな私の顔を見つめながらスコーネが問い掛けてくる。

確かに、自分でも何かが変わったとは思う、けれど、それが何なのかは正直分からない。

でも、

「そうね、、、ようやく自分を理解したから、かしら」

過去を取り戻したお陰で、ずっと抱えていたモヤモヤした気持ちが消えたのは確かだ。

「して、あの箱は結局なんだったのじゃ?我が見る前に破壊してしもうたからな」

「、、、ただの小物入れよ」

「なんじゃそれは?って、待たぬか」

適当に返事をして、館の前から歩き出す。

こればかりは、教える気は無いし、意味も無い。

だからこそ、示すのだ。

スコーネとフェアレーターを先に行かせ、振り返る。

そのまま右手を掲げ、胸の聖痕から魔力を引き出していくと、紅い光が辺りを照らし上げる。

その魔力の塊を握り締め、ネイの館へ向けて放つ、、、それで終わり。

痛い程の静寂の後、衝撃が走り抜け、館は崩れ去っていく。

同時に、地面を紅い光が駆け抜けていき、その色に染め上げる。

北、東、西、そして、、、

「結界に弾かれた。範囲が狭まった分、強固になったわね」

こうして、オセリエ伝統皇国は滅亡し、私の領域へと染め上げられた。

そして残すは南のエオール革新統国、そこで、今度こそネイとの決着を付ける事となるだろう。


やはり紅は心が落ち着く。

オセリエ全土が領域化した事で私達の足取りは軽いどころでは無い。

それこそ、羽でも生えたかのように歩を進め、あっという間にエオールとの国境へと辿り着いた。

問題なのはここからだ。

まず、目の前の結界を押し返し、あわよくば破壊したいところではある。

だけど、軽く手を伸ばしてみると、触れる前から掌が焼ける様に熱くなる。

「フェアレーターは近付いちゃ駄目よ。スコーネ、どう思う?」

「むぅ、、、何ともじゃのう。ネイめ、馴染んだのか力が増しておるようじゃぞ」

やはりスコーネも同じ意見か。

こうして結界を間近で見て私も思ったけど、想像以上に結界が強固なのだ。

多分、破れない事は無いとは思うけど、すぐに押し返されるだろうし、私も動けなくなりそうだ。

かと言って、マンベルの時のように起点を破壊するなんて策も取れない、、、何せ、起点はネイ一人なのだから。

一度そこから離れ、見渡せる限りを俯瞰してみる。

「、、、これはまた、どうしたものかしらね」

右目の聖痕で見たのを後悔する程度には、結界に満ちる魔力量は膨大だった。

元よりそれ程大きくない東大陸、その南半分だけという範囲を覆う結界に注ぎ込まれた魔力、これがネイの本気であり、世界を護る覚悟の表れだ。

同時に、私とは戦いたくないという意思でもあり、だからこそここまでの結界を展開したのだろう。

「いえ、、、そうだとすると、もしかすると」

ふと、ある事に気付いて二人に声を掛ける。

「一度退くわよ」

「えー、でもでも、どうするんですかぁ」

「何か思い付いたのか?」

腕にしがみ付くフェアレーターを撫でながら、スコーネの言葉に頷く。

もしもネイが私に目を向けているのだとしたら、一つだけ盲点となっている場所がある。

今ならスコーネも居るし、恐らくそこにまでこの結界は及んでいない、、、となると、面白い事になりそうだ。

「もしかしたら、面白い事になるかもね」

結界の向こうに居るであろうネイに語り掛け、その場を後にする。

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