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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第九章 オセリエ伝統皇国・エオール革新統国相克記 後編
353/365

353 魂を呑む

思わぬ形で目的を達成出来たけど、果たしてスコーネとフェアレーターは何処に飛ばされていたのか。

「間に合って良かったですぅ!アイツ、私達を大陸の外にまで吹き飛ばしやがったんですよぉ!」

「我も少々油断した。よもや、ワルオセルネイがああも迷い無く元の姿に戻るとは」

それで、大急ぎで戻ってきたという事か。

まぁ、ネイとしても最早私を殺すしか無いと悟って、確実にそれを実行しようとしていたのだろう。

だけど、何だか得体の知れない何かを感じるのは気のせいだろうか。

先の戦いにしてもだし、この二人にしたって本気で排除しようとしていたらフェアレーターは成す術も無いし、スコーネだって結界に封じ込めてしまえば無力化出来たはず。

そう考えてみると、全てネイの思惑通りとも思えて、唯一の誤算は私の暴挙くらいだろう。

あの時の慌てぶりは演技には見えなかったし、結局はあれで撤退を決めたようにも思えてくる。

「、、、考えても無駄ね。二人共、よく戻ってきたわ」

得意げに胸を逸らすスコーネと喉を鳴らして私に擦り寄るフェアレーターに声を掛けて、改めて視線をネイの館へと向ける。

果たして、ここに何が隠されているのか、それを暴いてやろう。


静寂に満たされた館の中、私達の足音だけが虚しく響き渡る。

人気は勿論無く、あるのは私によって魂を喰らわれた抜け殻だけ。

悪食が過ぎたと自分でも思うし、胸の辺りが苦しく感じるのは気のせいでは無いだろう。

まぁ、所謂食べ過ぎというやつだ。

余りにも大量の魂を喰らった反動が出てきているけれど、それもその内治まる。

そんな事よりも、今はやるべき事に集中しよう。

「前に来た時もだけど、何となく変な感じがするのよね」

「変、ですかぁ?」

「うむ、確かに何かがあるのう。しかし、これは一体、、、」

相変わらずなフェアレーターはともかく、スコーネも何かを感じ取ってはいるらしい、けれどそれが何なのかはやはり分からず。

となると、魔法的な阻害では無く、神の力による封印とかだろうか。

もしそうだとしたら、それだけ厳重に隠そうとした何かとは一体、、、

「スコーネ?」

いつの間にか足を止め、壁を見つめるスコーネに気付いて声を掛ける。

「、、、この壁、何とも言えぬものがあるのう」

呟く彼女の隣に立って同じ場所を見つめてみる。

一見、何も無いただの壁であるけど、、、いや。

右目の聖痕で壁とその周囲の魔力の流れを見てみると、ある一点にだけ集中する所がある。

罠という感じはしないし、魔力である時点でこれはネイの手によるものでは無く、他の者によって施されたものだと分かっている。

そしてその術者はこの館の中で死んでいて、それでも効果が残っているという事は魔導具の類。

となると、答えは、、、

「スイッチね」

念の為に指先へ魔力を集めておき、スイッチに触れる。

すると、小さな音と共に壁が天井へと上がり、人一人が通れる通路が現れる。

「おお、やはり聖痕には敵わぬ。しかしまぁ、何とも面妖な絡繰りじゃのう」

目を丸くするスコーネと、その隣で呆けているフェアレーターを促して現れた通路へと進む。


狭い通路の先は階段だけがあり、それを降っていく。

かなりの距離の階段の先、微かに灯された魔導具の光に導かれて辿り着いたのは、小さな部屋だった。

館とは違い、地面の土を掘り返したままの武骨で、何処か寂しさを感じさせるその部屋の奥に、小さなテーブルと、その上に置かれた小さな箱が一つ。

「、、、スコーネ。あの箱に近付きたくないんだけど」

「奇遇じゃな、我もだ」

「うぅ、、、何だか寒気がしますようぅ」

それを見た私達全員が思わず足を止め、不快感を口にする。

そう、たかが小さな箱一つが、これまでの何よりも恐ろしく感じるのだ。

体の奥底、つまり魂が感じ取っているのだ、、、あの箱には触れてはいけないと。

だけど、、、そんな物を何故ネイが持っているのか。

こうまでして隠し、だけどあっさりと放棄していったのか。

「、、、二人はここに居なさい」

ゆっくりと足を踏み出し、箱へと近付く。

一歩踏み出す度に魂が震え、それが体へと伝わってくる。

それを抑え込み、箱へと距離を詰めていく、、、そして。

「、、、何だか吐きそう。いえ、いっそ何もかも吐き出してしまいたくなるわね」

手を伸ばせば触れられる距離、そこで感じる不快感は想像を遥かに超えるもので、だけどだからこそ確かめないといけない。

何故なら、この感覚を私はかつて感じた事があるからだ。

「、、、まさか、ヤーラーンのアレと繋がるなんてね」

そう、ヤーラーンで見たあの青い宝石、結局何も分からず仕舞いだったそれと、この小さな箱は全く同じ感覚を齎している。

この二つは、きっと本質的には同じ物だ。

ヤーラーンではラウの手が加わり悪意に満ちた兵器へと成り果て、多くの命を喰らった。

だとすれば、、、この箱もきっとそうだ。

だからこそ、魂が恐怖している、、、これはきっと、魂を呑み込む物だ。

そして、他ならぬ私が恐怖を抱くという事はつまり、、、

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