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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第九章 オセリエ伝統皇国・エオール革新統国相克記 後編
351/363

351 神の御業

強化された結界を破るにはかなりの労力を割く事になった。

ネイが本来の姿に戻った影響は想像以上であり、結界は最初よりも遥かに強固となり、大陸の領域化も同様だった。

それでもトゥテラリィの魂を取り込んだ私に力は何とか及んでくれ、結界の打破と領域の拡大は出来た、、、物凄く疲れるけれど。

せめてスコーネだけでも居てくれれば幾らかは楽になるのだけど、気配すら捉えられない。

恐らく、ネイの力によって別の場所に飛ばされ、遮断されているのだろう。

フェアレーターは、最悪の場合結界によって消滅した可能性もある、、、まぁ、一応生存を願ってはいるけれど。

ともかく、ゆっくりとではあるけれど前へと進んではいる。

ただ、何とも言えない不快な気配が大陸を覆っていて、常に見られている気がするのだ。

「神様って随分と好き放題出来るのね」

空を見上げて嫌味を零してみるけど、流石に反応は無い。

けれど、前へと進むにつれて気配は濃く強くなっているから、きっとオセリエの皇都にネイは居る。

あそこには避難したであろう各地の住人が居るだろうから、彼等を守る為に留まっているのだろうか、、、いや、今のネイならきっとそんな人々も切り捨てるだろう。

だとすると、他の何かの為に留まっていると考えた方が良いだろうし、それはきっと私や邪神に対する策だ。

この結界にしてもそうだ、まるで私が壊せるギリギリの状態で敢えて留めていると言われても納得出来てしまう強度になっていて、消耗させるのが狙いだと考えた方が良いとさえ思えてしまうのだ。

でも、だからこそ思い通りになるなんて御免だ。

全て真正面から破壊して、ネイであろうと殺して見せる。


オセリエ伝統皇国の中心、皇都が目の前に迫る。

予想通り、ここまでの結界は私の力で破る事が出来たし、妨害も無かった。

そして今、

「予想よりもちと早いな。そこまで馴染んでしもうたか」

結界の向こう側に立つネイ。

「良く言うわ。全て狙い通りだったくせに」

余裕を見せる彼女に思わず苛立ってしまうけど、、、いや、今の彼女ならそれも当然か。

こうして向かい合っているだけで力量の差を肌で感じる程なのだ、果たして何処まで迫れるか。

「私の下僕共は何処にやったの?」

「妾の与り知らぬ事よ。結界で弾き飛ばされたか、或いは飲まれて滅したか。どちらにせよ、ここで其方を滅する、、、それが妾の贖罪であれば」

その言葉と共に彼女が結界から足を踏み出す。

その足が私の領域の紅に触れ、激しい閃光を撒き散らす、、、けれど、

「想像以上に濃い瘴気、、、彼奴め、この様な魂を如何にして手に入れた、、、」

それを意に介する事無く、別の事に表情を苛立たせるネイ。

それで、彼女は私の魂について何も知らないのだと気付く。

(へぇ、、、勝ち目が見えたかも、ね)

力の差、魔力の差は歴然。

だけど、私にはネイですら持ち得ないであろう力が一つだけある。

果たしてそれが通用するかは賭けになるけれど、もしも上手く行けば、、、

「そう、貴女ですら私の魂が何処から来たか知らないんだ」

「、、、何が言いたい」

餌に掛かった、浮かび上がる笑みを何とか抑え、答えを見せつける、、、左手を差し出し、その上に。

「っ!?其方、何をっ!?」

「今の私はこんな事も出来るの。分かる?これが私の魂、、、この醜く歪み罅割れて、紅い茨に絡め取られたモノが」

勿論、それは本物では無く魔力で映し出した幻影だ。

だけど、嘘偽りない今の私の魂の姿。

それを目の当たりにしたネイが目を逸らそうとして、それでも引き寄せられる様に視線が向けられる。

「このような、、、ワルオセルネイ、貴様は、、、貴様はこのような所業をも成していたというのか!」

流石は神様、例え己の領分で無くともこれがどういう手段で創り出されたのか気付いたらしい。

「そう、これこそ神の御業。邪神が来たる時の為に講じた最後の策、、、世界を欺き、全てを滅する為の。お前達は始めから負けが決まっていたのよ」

「いいや、それは否であるぞ。もしもそれが真実であるとしたら、、、妾達は、、、妾達が為すべきであったのは、、、」

ようやく気付いたその事実に、或いは過ちに、ネイが言葉を失う。

そう、彼女でさえもその事に気付けなかった、、、だからこそ、全てが手遅れなのだ。

「そうよ。貴女がするべきだったのは私を殺す事。魂を欠片も残す事無く焼き尽くし、邪神の痕跡を消し去る事だった、、、どうして助けてくれなかったの?私が救われる道は、死以外に無かったのに」

私の言葉に、ネイの表情が崩れる。

いや、、、きっと彼女も本当は気付いていたのかも知れない。

だからこそ、邪神の思惑通りに私を生かして救おうとした、、、その過ちの負債が、目の前に立ちはだかっていると思い知らされてしまったのだ。

「、、、なれば」

いや、それもまた希望的な考えだ。

目の前の神は、それでも役目を果たすだろう。

全ては世界の為、兄弟姉妹の為、、、そう、その根底にある愛の為に。

「妾は、例え其方であろうと、、、己が使命を果たすのみ」

「そうよね、それが愛ってやつだものね、、、私も彼女も、そんなもの知らない。だから、否定する」

これで言葉を交わすのは終わり。

互いに魔力を高め、互いの役目を果たす為に、信念のぶつかり合いが始まる。

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