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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第九章 オセリエ伝統皇国・エオール革新統国相克記 後編
346/364

346 侵攻

陽は完全に沈み、空は夜闇に満たされた。

だけど、それとは対照的に大地は禍々しい紅に染め上げられ、その上を歩く私達を照らしていた。


東大陸の最北端から歩き始め、まだ一つ目の町にすら辿り着いていないけれど、何だか妙に疲れた気がする。

「カカカ、たまにはこうして地に足を付けて歩くというのも悪くはないのう!」

「アハハハ、この地面の上歩いてると何だか楽しいですよぉー!」

、、、残念ながら気のせいでは無かった。

項垂れる私を余所に、解き放たれたペット二匹は辺りを好き放題駆け回りながら歓喜を上げている。

確かに、この紅い地面は私の領域であり、当人である私でさえも気分を高揚させてくれるのだけど、スコーネとフェアレーターにとっては殊更心地良いらしく、こうして妙にご機嫌になっているのだ。

まぁ、ちゃんと私の目の届く範囲には留まっているから好きにさせているけど、少し警戒感が無さ過ぎではなかろうか、と愚痴の一つでも零したくなってしまう。

と言いつつ、少なくとも結界の外に私達以外の気配は感じられないから別に良いのだけど、、、

「っと、噂をすればかしら」

そんな事を考えていたら、まさに結界の中から何かが近付いてくる気配。

境界まではまだ距離はあるけれど、気配の主はそれなりに力を持つ者らしい。

遊び回っていた二人もそれに気付いて即座に私の下に戻って来て何が起きてもいいように身構えている。


繰り返しにはなるけれど、私達は結界の中には入れない、この結界はネイによってそういう特性を与えられているからだ。

逆を言えば、私達以外は出入りが出来るという事でもあり、

「どうやら向こうから来てくれるみたいよ」

何者かの気配は結界を超え、真っすぐこちらへと向かってくる。

速さからしてすぐにでもその姿は見えてくるだろうけれど、果たして誰が来るのやら、、、

「むっ?よもやあ奴がここに居るのか」

真っ先に気付いたのはスコーネだった。

そのすぐ後に私もそれに気付き、最大級の警戒に移る。

そして、

「やはり来やがったな、クソ共が」

表面上は至って平静を装い、だけど肌で感じられ程に殺気を放つトゥテラリィが静かな怒りを露わにする。

「オレが言えた事じゃねぇがよ、よくも巫女さんを殺しやがったな」

「あの子に会う?今ならまだ感動の再会が出来るかも知れないわよ、、、私の中でね」

「テメェ!」

私の挑発に一気に怒りを爆発させて私目掛けて飛び掛かるトゥテラリィ。

だけど、振り抜かれた右腕はそれよりも尚早く繰り出された手によって受け止められる。

「どうした駄犬。何時になく直情的じゃな?」

「スコーネェ!邪魔すんじゃねぇ!」

「カカカ、主を守れなかった事をそれ程悔いておるか?ならば、我が為す事も理解出来ようて」

トゥテラリィの腕を難無く掴み止めたスコーネが更に挑発し、だけどトゥテラリィはその手を振り解く事が出来ずにいた。

「クソが!オレが力負けしてるってぇのか!」

「愚かよのう。この紅き地の上に於いて我らが敗する道理が無い。即ち」

握り締めた腕を引き戻し、そのままトゥテラリィを地面へと叩き付けるスコーネが、倒れ伏した彼の頭を容赦無く踏み付け、更に鋭い鱗の生えた尾の先端を残る左腕へと突き刺す。

「ガアアア!痛ぇなこのクソッたれがぁ!」

「ギャンギャン吠えるなと言うとろうが、この無能めが。いい加減理解せい、巫女を護れなかった時点で貴様は敗北したのじゃ。今ここに居るのはただ無様を晒す敗者のみ、それを承知で挑んできたのではないのか?」

スコーネの言葉にとうとう返す言葉を失ったトゥテラリィが悔し気に唸り声だけを上げ始める。

それが珍しいのか、スコーネが得意気な笑みを浮かべて頭を抑える足に力を込めている、、、けれど、私はそこで何とも言えない違和感を覚える。

そもそも、以前トゥテラリィは感情的の様でいて策士であると言ったのはスコーネだ。

そんな奴が果たして本当に護るべき対象を失ったからといってこんな自棄を起こすだろうか。

自分の感覚に従い、二人から視線を外し結界へと目を向ける。

「、、、」

少なくとも、こうして見ている分には何も変化は無い。

念の為に聖痕を使ってみるけど、やはり異常は無い、、、だとすると、この違和感は一体何だろうか。

「リターニア様?」

手持無沙汰にしていたフェアレーターの声に視線をスコーネへと戻し、

「っ!?スコーネ!」

私の声とほぼ同時にスコーネがトゥテラリィを離して大きく飛び退る。

「チッ。無駄に勘が良い連中だぜ、全くよぉ」

自由になったトゥテラリィがゆっくりと立ち上がる、、、のだけど、その姿はさっきまでの人の姿とは大きく変わっていた。

背中からは剣の様な鋭い棘が無数に飛び出し、手足は鋭い爪を生やした獣の形に変化し、そして最後に残っていた顔も今まさに変化をしている所だった。

「、、、確かにオレは負け犬だ。惰眠を貪り、代わり映えしねぇ世界を適当にブラついてた、、、そのツケがこのザマだ。だけどよ、、、だからこそここでテメェらを食い千切らねぇと気が済まねぇんだよぉ!」

トゥテラリィの叫びと同時にその体が一気に変貌する、、、それは、トカゲ姿のスコーネに匹敵する程に巨大な、四足歩行の獣の姿だった。

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