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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第八章 マンベル・秘されし者達の蒐集録
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340 信託の巫女・ミデン

スコーネとトゥテラリィが同時に地を蹴り、姿が消える。

直後に突風が吹き荒れ、背中から翼を生やした二人が空高く飛び上がりながらぶつかり合う。

そんな状況を無視して、巫女が途轍も無い量の魔力を放出し始めて何かをしようとしていた。

そうはさせまいと全ての聖痕を全開にして対抗、フェアレーターにも合図を送ろうとしたその時、

「っ!?フェアレーター!」

私の声とほぼ同時に彼女の姿が視界から消え、後方へとその気配が遠ざかると共にこれまで無かったはずの気配が現れる。

「ノーヴ!何故ここに!?」

「貴女様一人に背負わせは致しませぬ!我ら、生きるも死ぬも巫女様と共に行くのみ!」

ノーヴと呼ばれた男が高らかに声を上げ、フェアレーターを追撃する為に走り去る。

それと入れ替わるように、巫女の周囲に無数の人が転移してきて、彼女を護る為に立ちはだかる。

「へぇ、愛されてるのね、巫女様?」

誰もが覚悟を決めた表情で私を睨んでくるけど、それは悪手でしかないと理解しているのだろうか。

思わず笑みを浮かべ、胸の聖痕から力を引き出していくと、美しく禍々しい紅い光が辺りを照らしていき、

「っ!いけません、皆逃げて!」

巫女の悲鳴染みた声が響くけど、もう遅い。

他の聖痕から流れ込む膨大な量の魔力が胸の聖痕から溢れ出し、血を滴らせる荊となって弾け、そして、、、


爽やかな緑だった広場、それが一瞬にして紅く染まった。

巫女を護らんと転移してきた教導者や蒐集者、その他の連中は一人残らず血の海に倒れ伏した。

今ここに立っているのは私と巫女の二人だけ、その巫女も目の前の惨状に体を震わせて涙を溢している。

その隙にフェアレーターへと意識を向けてみると、さっきのノーヴとやらと戦っているのか、返事は無い。

まぁ、あの程度に後れを取ったりはしないだろうし、結果的とはいえそれぞれ一対一の形になったので良しとしておこう。

それに、雑魚共を皆殺しにした以上、ここからは彼女も本気で私を殺そうとしてくるだろう。

現に、こうして状況を把握している内に彼女は顔を上げ、私を見据えているのだから。

そして、その目にはこれまで見えなかった炎が、確かに灯っていた。

「、、、もう、本当に私の手は、声は、思いは、届かないのですね」

「そんなもの、始めから届いてなんかいなかったのよ。本当は分かってたんでしょ?神々の意思は始めから私を敵だと言い続けていたんじゃないの?」

「、、、邪神の聖痕を宿した者を打ち滅ぼす、それこそ巫女が代々受け継いできた役目です。それが私の代で訪れてしまったのも、あの子の娘として産まれたのも、その全てが運命などという言葉では語りたくなどありませんでした。ですが、、、」

巫女がその身から溢れ出す魔力を手繰り、何かを象っていく、、、いや、あれはそんな生易しいものでは無い。

「、、、まるで幻獣ね」

「これこそ私が賜りし力の一つ。この身に宿る魔力を具現化し、使役する。マンベルの巫女、その名と責務は生半可な物ではありません!」

気迫の声と同時に魔力が実体化し、一角を生やした白馬が顕現する。

それは嬉しそうに巫女に頬擦りをするとこちらに顔を向け、強烈な敵意と共に咆哮を上げ、その背から翼を造り出した。

その背に巫女が飛び乗り、再び魔力を高めるとその手の中で一つの形へと変化していく。

「それを象った上に、まだ出せる魔力がある、、、随分と愛されてるのね、神々の意思に」

私の嫌味に巫女が僅かに瞳を揺らし、だけどそれはすぐに覚悟へと変わる。

「邪神の復活は必ず阻止します。その為にも貴女を、貴女である内に、、、私が止めます!」

魔力で創り出した弓を構え、白馬が勇ましく嘶いて駆け出す。

「止めてみなさい、身の程を教えてあげる!」

対する私も紅炎の鎌を取り出し、迫り来る彼女を迎え撃つ為に身構えた。


魔力から産み出された白馬は自身で思考して動いていながら、巫女の意思をも受け取っているようだ。

加えて、そもそもが魔力であるからか、本物の馬では不可能な挙動を取るせいで動きが読み辛く、想像以上に厄介だ。

極め付けが巫女の放つ矢、これもまた魔力により造られ、更には魔力で制御している結果、複雑な軌道を描いて私へと飛んでくるのだ。

なんなら、躱したと思って油断していたら背後から再び飛来してきて肝を冷やした、なんて事もあった。

(流石は巫女様。まるで複数人を相手にしているみたいよ)

思考を乱してみようとしても、先の失敗で学んだのか今の彼女は全てを私一人に向けていて通用しない。

本気になった巫女がここまで厄介だとは流石に予想外ではあった、、、けれど。

数度目の交錯が過ぎ、距離を取る巫女、その肩が微かだが上下している。

白馬は魔力の塊である以上、呼吸などしない、、、ならば。

「性に合わないけれど、ここは持久戦が得策かしらね」

如何に神々の意思に祝福をされていようと、彼女自身は極普通の人でしかない。

それがあれだけの芸当を同時に、長時間続けるとなれば相応に消耗が激しいのは必定だ。

つまる所、私はあの子の攻撃を躱し続けて自滅するのを待てばいいだけ。

勿論、そんな事は彼女自身も分かっている筈だから、そう簡単にはいかないだろうけども、、、

「フフ、もっと面白くしてあげないと、ねぇ」

既に私には一つの策が出来上がっていた。

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