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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第八章 マンベル・秘されし者達の蒐集録
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338 教導者・流麗のセットゥ

必要以上に警戒したせいで時間が掛かってしまったけど、これでようやく二人目の基点を仕留めた、、、のだけど、

「ぐっ、、、まだ、終わりでは、、、ありません!」

フェアレーターに貫かれたままのドイシュがその右腕を掴みながら叫び、何かしらの魔法を発動させる。

それによって私が貫いた影の男達が掻き消え、代わりに何かが転移してくる予兆を捉える。

「悪足掻きとかやめてほしいですぅ!」

すかさずフェアレーターが動き、左腕でドイシュの顔を鷲掴みにして炎を放つ。

瞬く間に頭が燃え上がり、その火は体を包んでいくけど、どうやら一歩遅かったようだ。

島の北部から誰かが転移してくる予兆を捉え、いつでも魔法を放てるように魔力を高める。

右手の灰を振り払ったフェアレーターも私の横に戻り、姿勢を低くしていつでも飛び出せるように身構える。


転移はドイシュが最後に立っていた場所を到着点としていた、というよりも無理矢理呼び寄せたと言った方が正しいだろう。

そこに降りてきた影が見えた瞬間、私は即座に氷の刃を放ち、無防備なままの影を刺し貫こうとした、、、けれど。

影はそれを察していたかのように障壁を展開し、魔法を弾いたのだ。

微動だにしない影がゆっくりと視線を下に向け、そこに残る焼け焦げた跡を暫し見つめた。

「、、、君も逝ってしまったのか、ドイシュ」

風に乗って微かに声が届き、とりあえず影が男である事は知れた。

その男は顔を上げ、私を真っ直ぐ見つめて口を開いた。

「君が、巫女様の予言に示された人だね?」

「さぁね、そんなの知った事じゃないわ。それより、アンタも結界の基点役の教導者よね?」

「、、、なるほどね。もしもそうだと答えたら、どうするんだい?」

男の問いに、私は魔力を高める事で応える。

「やはりそうなるよね、仕方が無い」

それに対し、男は静かに体をこちらへと向け、息を吐き出すと共に力を抜いていく。

側から見れば完全な無防備、それにいつの間にか目まで閉じ、隙しか無い状態なのだけど、、、

(アイツ、、、オイトやドイシュよりも強いわね)

あの男の、あの状態こそが戦闘体勢だ。

横に居るフェアレーターは能天気に機を窺っているようだけど、何かしらを感じ取ってはいるようで迂闊な事はしていない。

とはいえ、このまま膠着していては時間の無駄だし、恐らく奴の狙いもそれだろう、、、なら。

「これはどうする?」

右手から炎を、左手からは雷を放ち、男を囲んで逃げ道を塞ぐ。

それでも男は身動ぎ一つせず、障壁すら張らずに魔法の直撃を受ける、、、と思ったその時。

「確かに、君は邪神によって尋常ならざる力を得たのだろう。だけどね」

男の姿が霞み、私の魔法がその体をすり抜けて彼方へと飛んでいく。

ドイシュのように、何か特殊な能力を持っているだろうと見越して両目の聖痕を使っていたにも関わらず、何が起きたのかまるで分からなかったのだ。

「さて、改めて。僕はセットゥ、もちろん巫女様より賜った名だよ。実を言うと、僕はあまり戦いは得意じゃあないんだ。だからか、巫女様より授けられた祝福は避ける事に特化しているんだ」

中性的な声音の男、セットゥが静かに語る。

確かに、オイトやドイシュも魔法とは異なる力を使っていたし、プリエールも謎の転移を使っていた。

ともすれば、巫女自身ですらそうだった。

なら、コイツらの言う祝福というのは、その能力の事であり、そんな大それた力を人に与えられる存在なんて、どう考えても普通の存在では無い、、、つまりは。

「神々の意思、、、そいつらが巫女を始めとするお前らに力を与えているってワケね」

「それこそ、巫女様のみぞ知る事だよ。ただ、僕やドイシュ、オイトなんかは教導者としての役目以外にも密かに与えられた使命があるんだ。それが何か、君には分かると思うよ」

やっぱり、、、コイツらは私を殺す為に力を与えられたのか。

プリエールもオイトも、そしてあの巫女も、私に向かって上っ面だけの優しさを見せ、隙あらばこの首を落とそうと狙っていたのか。

「どうせそんな事だろうと思ったわ、、、なら、もう本当に、、、今度こそ全部ぶっ壊してやる!」

いつかと同じように怒りが湧き上がり、真紅の髪が溢れ出る魔力で逆立つ。

隣に居たはずのフェアレーターが怖気付いて後ろで丸まり、向かい合うセットゥもまた目を見開いて体を強張らせている。

胸の聖痕が勝手に浮かび上がって眩い紅を放ち、そこから放たれた魔力がセットゥの周囲を取り囲んで不可視の壁を造り出す。

「なっ!?これは一体、、、」

体を霞ませてそこから抜け出そうとしているけど、あの壁はそんな事を許さない、、、何故なら、あれもまた奴らの使う力と同質の物であり、奴らのそれよりも遥かに強い力を持っているのだから。

右手を翳し、指先に紅い魔力が収束していく。

そこに更に魔力を押し込み、凝縮された魔力の塊を造り出し、

「避けられるものなら避けてみなさい」

言葉と共に紅い光が奔る。

それはセットゥを囲む壁をすり抜けると、その内側で猛烈な勢いで反射していく。

「これでは、、、ぐっ、ぁぁあああああ!!!」

セットゥの断末魔が紅い光によって焼き尽くされ、最後に眩い光を放って壁諸共弾け飛んでいった。

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