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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第八章 マンベル・秘されし者達の蒐集録
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332 叫びは届かず

振り下ろした鎌の刃を見下ろし、ゆっくりと視線を上げて前方を睨む。

「今更何をしに出てきたの?」

「、、、」

私の言葉に返事は無く、代わりに返ってくるのは鋭く、そして深い悲しみに包まれた視線だけだった。


私の鎌はプリエールの首を正確に捉えていた、、、だけど、それが触れる直前に彼女の姿が掻き消えた。

そして、離れた場所に気配が現れたのだ、、、巫女と共に。

「巫女、様、、、申し訳、ありません」

「全ては私の失態です。遠見に幻惑を重ねられ、邪神の気配をも悟られない様にされていた、、、気付いた時には既に、、、」

巫女が悔しげに唇を噛み、そこから血が流れる。

それでも尚、私に向ける視線に敵意は無く、それがとても不愉快でしかない。

「まさか、まだ下らない妄言を言うつもりじゃないでしょうね?」

「私の想いは変わりません」

静かに、毅然と私と向き合う巫女。

その姿に私は違和感を覚え、、、そして気付く。

「驚いた。貴女、本体ね?そこまでして、私を助けたい(殺したい)の?」

「私が倒すべきは邪神のみ。決して、貴女ではありません、、、だから、どうか心を強く!邪神などに屈しないで下さい!」

巫女の言葉に私はわざとらしく溜息を吐き出す。

何故誰も彼も勘違いをしているのだろうか、、、結局、私の事なんて誰も見てはいない、理解なんてしてくれていない。

「巫女様の力も万能じゃないのね。それとも、その目が濁ってるの?今ここに居るのが誰かも理解出来てないじゃない」

「、、、いいえ、それは違う、違います!」

「分かっているはずよ。あの時だってそうだった、皆私から目を逸らして、分かろうとすらしなかった、、、その結果が何なのか、貴女なら知っているはずなのに」

「それは、、、」

図星なのだろう、巫女が言葉に詰まる。

結局、神の意思とやらを受け取れた所で彼女も所詮はただの人でしか無いという事だ。

「貴女が言ってくれたのよ?私は私だって。だから、私はもう私を偽るのをやめたの。お前達が奪った()()()()()()を解き放つ、、、それで終わりよ」

「その終わりがどういう事なのか、お分かりなのですか!?」

「それが私が産まれた理由、この胸に聖痕を刻まれた意味よ。そう、、、全てを終わらせる、ただそれだけ」

突き刺さった鎌を持ち上げ、切先を巫女に向ける。

それを受けて、巫女は一度目を閉じて静かに開く、、、それで、彼女の纏う気配が変わる。

今の彼女は巫女では無く、神々の意志の代弁者、つまりは、

「参ります、神よ我に力を!」

「来なさい、魔王と呼ばれた力を見せてあげる!」

もう二度と、私達は共に歩む事は無くなった。


プリエールの状態を見て私の鎌の危険性を察したのか、巫女は距離を取って魔法での攻撃ばかり仕掛けてくる。

だけど、今の私に生半可な魔法など通用しない。

聖痕による障壁を纏い、あらゆる攻撃を無視して巫女へと斬り掛かる。

それをも予見しているのか、巫女は私が動いた時点で既に回避の為に姿勢を低くし、鎌を振り被った瞬間には既にその刃の届かない場所まで飛び退っているのだ。

「鬱陶しいわね、お前の魔法は私には通用しないって分かっているでしょうに」

「その刃、邪神の気配が濃い、、、彼の者より直接借り受けているのですね」

それを理解した所で、対処のしようが無い事実もまた変わらない、何せ魂に対して直接傷を与えるのだから。

とは言え、それもまた当たらなければ意味は無く、巫女はその特異な力のせいでとにかく回避行動が早く正確だ、、、いや。

(すっかり忘れてた。アンタ、心が読めるんだっけ?)

私が思い浮かべた言葉に巫女が僅かに身動ぎ、そのお陰で私は巫女の弱点に気が付いた。

(へぇ、それも万能じゃないのね。余計な事に気を向けてると死ぬわよ!)

いくら神の力を借り受けようと、所詮はただの人でしか無い、巫女が心を読めるのは常に一人に対してだけだ。

さっきの動揺は私の心を読んだからでは無く、フェアレーターの動きを探っていた所に私の声が割り込んできたからだろう。

巫女は戦闘の最中、私の心とフェアレーターの心を交互に読み取り、それぞれの動きを読んでいたのだ。

確かに、それはそれで凄い事ではあるけど、

「お前は何も出来ない、誰も救えない!」

(フェアレーターも助けるつもり?あの子の心すら見通せなかったお前が!)

「っ!」

言葉と心の声、それを同時に放って巫女の意識を私へと強引に向けさせる。

普段は自らの意思で切り替えているそれを、相手から無理矢理合わせらたらどうなるか。

「ダメ、思考が絡まるっ!」

さっきまでの動きが嘘の様に巫女が焦りを滲ませ始める。

鎌の刃を躱すのにも余裕が無くなり、徐々にその体はと迫っていく、、、そして。

「リターニア様っ!」

巫女の声を断ち切る様に振り下ろした鎌、その刃が巫女の体を斜めに切り裂き、、、




「あら、、、」

「っ!?」

巫女の体が横に突き飛ばされる。

鎌の一太刀は代わりに飛び出してきた影の体を紙のように切り裂き、

「プリエール!」

巫女の慟哭の叫びが響き渡った。

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