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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第八章 マンベル・秘されし者達の蒐集録
325/363

325 見えない答え

崩壊した町を大きく迂回して、巫女と話をした離れへとやってきた。

途中、スコーネの攻撃を運良く回避出来た町の人達や、飛空機関船から投げ出された怪我人なんかを見つけて治療をしたりと、何度か寄り道をしつつの移動だったから、かなり時間は掛かった。

ただ、その間も廃墟に佇むスコーネは微動だにしなかったのは不気味ではあった。

とは言え、

「うぅ、、、助かりました。まさかリターニア様だけで無く、巫女様まで居られるとは」

「私達は運に恵まれました。あの破壊から無事とは言えずとも、命は助かったのですから」

そう、オイトとデゾイトを見つける事が出来たのは本当に幸運だった、、、但し。


デゾイトは幾つかの怪我を負ってはいたけれど、どれも回復魔法で治療が出来た。

だけどオイトは、当人の言葉とは裏腹に重傷と呼ぶべき状態だった。

左腕は肘の上辺りから失われ、左足もまた、膝下辺りから先が消えていたのだ。

母としての本能か、あの時彼女は娘であるデゾイトを庇い、その結果左の手足が爆発によって飛んできた飛空機関船の破片によって切断されてしまったのだと言う。

それでも尚二人が無事だったのは、落下した先が雪深い場所で、尚且つスコーネの攻撃の余波が及ばなかったからだろう。

泣きじゃくるデゾイトを宥めながら、最低限の止血と治療を自身で施して、私達と同じく北の離れを目指していたそうだ。


そうして合流出来た私達は、最終的にはそこそこの人数の集団となってここまでやってきた。

幸い、離れは無事で中も異常無し。

当初はすぐにでももう一つの町へと移動する予定だったのだけど、かなりの数の負傷者が居てその人達の治療と、そして回復魔法でも手の施しようが無い人の看病とで数日留まることになった。

突然の災禍に見舞われた彼ら、実際の所は肉体的な傷よりも精神的な負担の方が大きいのだろう、誰もが鎮痛な面持ちで、それでも出来る事をと動き回っている。

いや、少しでも何かをしていないと耐えられないのだろう、デゾイトも重傷を負ったオイトの世話をしつつも時折辛そうに涙を浮かべる時もあり、その度にオイトから叱咤と慰めを貰っている。

「、、、酷い有様ね」

「全ては私の責です。スコーネから目を離してしまいました」

「それは私の言葉よ。アイツの態度に油断したのだから」

項垂れるように俯く巫女が悔しげに唇を噛む。

幻影だから触れる事は出来ない、だから言葉で慰めるのだけど、きっと彼女はそれでも自分を責めるのだろう。

でも、ここで立ち止まる訳にはいかない。

「、、、ちょっといい?」

「はい、私もお話をしようと思っておりました」

私が声を掛けると、彼女もまた顔を上げて歩き出す。


前回、巫女と話をした部屋へと移動すると、椅子にも座らずに話を始めた。

「本の改竄、あれはスコーネでは無いわね」

「彼女は幻獣、我らの理解が及ばぬ力を持っています。ですが、私もまたリターニア様と同意見です」

スコーネなら、集積堂の本に掛けられた魔法を解除する事は簡単だろう。

だけど、私も巫女もそれは無いと確信している。

何故なら、彼女がそれをやる理由が無い。

スコーネは邪神によって生み出されたのであって、魔王とは何ら関係は無い。

事実、彼女の口から魔王という言葉は一度も出ていないのだ。

であれば、私に対する彼女の認識は邪神の聖痕を持つ、復活の要程度のはず。

そして、彼女の力であれば余計な小細工も必要無い、、、つまり、本の改竄などという面倒な事をわざわざしない。

「歴史書を改竄した者は別に居る、、、そして、そいつは」

「ええ、まず確実にここに居る生存者の中に潜んでいるでしょう」

「問題は、そいつとスコーネが繋がっているかどうかよ。本の改竄とアイツの攻撃、余りにも機が合いすぎている。だけど、私はそれは無いと思ってる」

「ええ、私もそう思います。恐らくですが、どちらも切っ掛けは貴女様なのです。邪神の復活を目論む者達にとって、その鍵である貴女様が訪れた事こそが行動開始の合図となったのでしょう」

悔しいけど、巫女の言葉は正しいだろう。

そもそも、私がマンベルへと来た理由は自身の事を知る為でもあるけど、その最初の切っ掛けは断絶山脈の麓へと転移したからだ。

もしもあれが、邪神の意思が介入しての事だったとしたら、、、

「リターニア様、以前もここで言いましたが、考え過ぎないで下さい。決して貴女様の所為では御座いません」

分かってはいる、分かってはいるのだけど、今回は余りにも被害が大き過ぎる。

死んだ人も多い、怪我を負った人なんて数え切れないだろう、そして、オイトの様に治療不可能な重傷を負った人も決して少なく無いのだ、それを目の当たりにして、私に何の咎も無いなんて思う事は出来ない。

「リターニア様、、、」

気遣う様に私を見つめる巫女の視線から目を逸らす。

何故だか分からないけれど、今は彼女の優しさが辛く感じる。

その視線から逃げる様に、私は部屋から出て廊下を歩いていく。




、、、私の行き着く道の先に、一体何が待ち受けているのか、、、()()()が訪れる予感が、胸の内で渦巻いていた。

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