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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第八章 マンベル・秘されし者達の蒐集録
318/364

318 悪意の手の先で

邪神。

事ある毎にその存在が語られ、そしてその際に必ず並んで話に上がるのは私だ。

この胸に宿る聖痕、それこそが邪神の力の欠片であり、私自身も邪神の意識に操られる事が何度と無くあったという。

だけど、このマンベルで初めてその形は崩れた。

「本来であれば、その様な事は有り得ない筈。現存する神はワルオセルネイ様ただ御一方であり、他の神々は皆永久なる眠りへと旅立たれた。辛うじて、その総体とも言うべき意志のみが僅からながらに留まり、巫女たるこの身に意志を伝えて下さる、、、そして、その他にこの世界に干渉する者は唯一人」

そう、邪神は今も封印に内に居る、、、それを食い破ろうと足掻いてもいるけれど。

かつて現れた魔王も、今の私も、その影響を受けているのだと聞かされて、未だに信じて受け入れた訳では無いけれど、それでもそうと考えるしかない事もこの身に起きた。

だけど、今回は違う。

そう、何もかもが違うのだ。

「ここに居る者は皆知っている事でしょうから詳細は省きます。これまで邪神は、世界に対して直接的な変化を与えてきました。それは負の感情を世界に蔓延させ、穢れを巻き散らし、封印を破る為の策でしょう。にも拘らず、その裏で此度の様な策をも弄していた、、、それも、私達の知り得ぬ手の者を介して。これは恐るべき事です」

そう、もしも私以外にも邪神の干渉を受けている者が居たとしたら、、、かつての魔王は世界に影響を与えた元凶でありながら、同時に体の良い陽動であった可能性もあるのだ。

今回は事件は数年前、だけど本当にこんな事が今回だけなのかは知りようが無い。

かつての時も、魔王が暴れている裏で何かしらの行動を起こしていた可能性も有り得る、、、そして、それがどんな事なのかは、、、

「今朝、巫女たる者の権限に於いて、意志ある全ての者に命を下しました、、、大集積堂の全ての蒐集物の再調査です。そして、各地にある集積堂も同様に」

「では、我々もここの再調査を?」

この場に来ている教導者の一人、先日、本の改竄を指摘していた男が緊張した声色で問い掛ける。

だけど、巫女はそれに対して首を横に振り否定した。

「いいえ、ここに居る者達には別命があります。それこそが緘口令の理由です、、、即ち、邪神に魅入られた者の捜索です」

巫女の言葉に、集積堂にどよめきが走る。

それもそうだろう、今の言葉はつまり裏切者を探せという事、、、それも、身内から。

それに加えてもう一つ。

「巫女様、それはつまり、その者は今もここに留まっているという事なのですか?」

さっきの男とはまた別の教導者が僅かに震える声で問い掛ける。

だけど、それに対しても巫女は首を横に振る、、、それはつまり。

「いいえ、事は邪神の意思が関わる領分、神々の意思すらも見通せぬ事象です。しかしながら、此度の改竄は明らかに客人であるリターニア様の来訪に合わせた所業。であれば、最後の一手であろう魔王に関する記述の消去もまたそれに合わせて行われた筈」

確かに、巫女の言う通りだとすれば下手人はここに留まっている可能性はあるし、緘口令を敷くのも納得ではある、、、けれど。

「私が聞いても大丈夫なの?邪神に筒抜けになるんじゃないの?」

「可能性はあるでしょう。しかし、そうであれば逆に貴女様が此度の件に気付いていたという事にもなり得ます。そうでない以上、今回は邪神が直接的に干渉したのではなく、邪神の意思に自ら傅いた者による行いと言えましょう。故に、早急に探し出し、問い質すのです」

何を問うか、なんて分かり切った事だ、、、お前は、世界の敵か、と。

ああ、だからこそ私も呼ばれたのか。

私なら、きっと気付けるかもしれない、、、自らの意思で世界の敵となった私になら。

「っ、、、リターニア様、、、」

「言わなくていいわ。私の経験が役立つなら好きに使いなさい。さっきも言ったけど、これは私に対する挑戦、いえ、最早挑発と言っても良い事よ。喜んで協力してあげる」

私の考えを読み取ったのだろう巫女が何かを言う前に、私から答えを告げる。

きっとこのお優しい巫女様だ、私を体良く利用する形に罪悪感でも抱いたのだろうけど、そんなものは必要無い。

そんな事よりも、やるべき事が決まったならさっさと動いた方が良いだろう。

「、、、ありがとうございます。では皆の者、良いですね。真相を明らかにする為にも、一刻も早く下手人を探し出すのです」

巫女の言葉が終わると同時に、教導者達は速やかに動き出した。

オイトも、デゾイトを連れて集積堂を出て行き、後に残されたのは私とスコーネ、そして。

「リターニア様、せっかくお越し頂いたのに、この様な事になってしまい申し訳ございません」

深々と頭を下げた巫女。

もう一度頭を上げた時、その目には強い決意と、揺れる悲しみが浮かんでいた。

それでも、彼女は小さく口元に笑みを浮かべ、

「では、私もこれにて」

短く別れを告げると、その幻影は掻き消えていった。

それと入れ替わる様に、集積堂に人の気配が一つ増える、、、それで、誰が来たのかを察する。

「、、、久しぶりかしら」

「はい、、、」

歯切れの悪い返事をしたのは、転移で現れたプリエールだった。

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