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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第八章 マンベル・秘されし者達の蒐集録
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315 消えた歴史

半泣きのデゾイトがあちらこちらと棚を行き来する。

その様子を楽しげに見守りながら適当に本を手に取っているのはスコーネだ。

そして、

「、、、私の言い方が悪かった?」

「、、、あの子は話をちゃんと聞かないので」

デゾイトには私の過去は濁して伝えたのだけど、何故か結果的に私が魔王だったと勘違い?をしてしまい、ああして必死に魔王に関する歴史が記された本を探しているのだ。

勿論、脅すつもりなんて無かったし、あの純真な性格のデゾイトなら困っている様に振舞えば率先して探してくれるだろうと思ってはいたけど、まさかそれが違う方に働くとは。

隣のオイトも流石に呆れて物も言えないようで、ただただ深い溜息を吐いて本の捜索に動いていった。

流石に私だけ眺めている訳にもいかないし、彼女達に混ざるとしましょうか。


そうして四人でアチコチの棚を探し、凡そ百年前辺りの出来事が記された本の置かれた棚を見つける事が出来た。

そこから更に手分けをして、魔王に関する事が書かれた本を探し始めた、、、のだけど。

「幾ら何でもおかしいですね」

最初に口を開いたのはオイトだった。

教導者という立場上、ここの管理などもしている彼女。

その彼女が、最初は丁寧に一冊一冊調べていたのに、今では手に取る本を次々に床に投げ置いているのだ。

その理由が、

「何故、魔王に関する記述の部分だけが無いのです、、、」

そう、年代的には間違いなく魔王が居た、つまり過去の私が生きた時代が書かれた本なのだ。

私の記憶に残る部分と合致する点も幾つかあったし、国の興亡に関しても、あの時代は私の手で滅んだ国すらあって、それ自体はちゃんと書かれている。

なのに、その中に魔王という言葉が一つも出てこないのだ。

それに気付いたオイトはデゾイトに何事かを指示すると、自身は周囲の棚の本を次々と手に取り中を検め始める。

流石のスコーネも事態に気付いたようで、不慣れながらも本を手に取り中を見始めている。

そして、

「、、、」

そこに至って私は、ある違和感に気付く。

右目の聖痕を通して本を、棚を、そして建物全体を観察してみる。

「オイト」

「どうかしました、、、か」

煩わし気に返事をしてこちらを見たオイトが、私の右目から浮かび上がる聖痕を見て語気を弱める。

「まさか、、、」

「ええ、そのまさかよ」

察しの良い彼女が私の行動から状況を察し、目を丸くする。

「本に掛けられているっていう魔法、、、全部消えてるわ」


集積堂の管理者、更にはたまたま飛空機関船で来ていたという数人の教導者までもが集まり、状況確認が行われている。

その結果、

「、、、恐らく、数年前から徐々に魔法効果が弱められていたのでしょう。新たに納められた本も、古い物は魔法の効力が弱まっているのが確認出来ました」

管理者が重々しく口を開き、結果を語る。

オイトやデゾイト、他の教導者達も事態が理解出来ずに困惑しているようだ。

だけど、今の内に確認しないといけない事がある以上、このままでいる訳にもいかない。

「聞きたい事があるわ。ここにある本って、全てではないでしょう?より古い物はどうしてるの?」

「期限や時期で判断してはいません。客観的に見て、重大と思われる出来事が記された本はその地域の集積堂に残され、その他の本は数年程で本土にある大集積堂に移送されます」

そうか、歴史の転換点となるような出来事は、歴史を辿る上で重要だ。

だから、それが記された本はその地に残し、調べ物をする際にそれを参考にして齟齬が出ない様にするのか。

逆に、大して重要ではない事は、その地に生きる人々の実態を推し量るのにうってつけなのだろう、だからそういうものは本土とやらに送る、、、つまり、巫女の下へ。

であれば、魔王に関する事が書かれた本は間違いなくここにある筈、なのにそれが無いとなると。

「本の持ち出しは?」

「本来は出来ません。それを禁ずる魔法が掛けられていますので、、、ですが」

そう、その魔法の一切が何故か消えているのだ、、、であれば、肝心な部分が何者かに持ち出されている可能性も有り得る。

「いえ、恐らく持ち出されてはいないでしょう」

それを否定したのは、オイトの隣に座る男の教導者だ。

彼はこの場に居る全員の顔を見回し、目を閉じる。

「私も先程本を検めましたが、私の記憶にあるのと内容が変わっている様に思えました、、、即ち、何者かが改竄を施した可能性があります」

「そんな、、、」

デゾイトが口を両手で覆いながら小さく呟き、他の面々は口を閉ざしたまま事態を理解する。

決して起こり得ない、起こってはいけない事態が起きたのだ、、、それも、気付かれない様にと長い時間を掛けて。

そして、それが出来るのはマンベルに関わる者達のみ。

私とスコーネはここへと来たばかりで、しかもマンベルがここに居を構えて以来初めての外部の来訪者なのだ。

それに、気にすべきはそれだけじゃない。




改竄をした者は、何故魔王に関する事だけを消し去ったのか、、、

それも、私に見られるのを阻止するかの様に。

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