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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第八章 マンベル・秘されし者達の蒐集録
314/362

314 集積堂

笑顔で先導するデゾイトと、やけに疲れた表情のオイトと共に町を歩く。

「スゴいんですよ!集積堂には蒐集者達が集め、編纂者が纏めた、あらゆる記録が残されているんです!」

聞いてもいないのに、まるで自分の事のように自慢げに話すデゾイト。

その横で深い溜息を吐くオイト、彼女の横顔は何だか一気に疲れ果てて見えてくる。

まぁ、事情の知らない私ですら、今の話は軽い口調で話していい内容じゃないと分かるから、彼女の心労は途轍も無いものだろう。

とは言え、それは私に対してのみ。

オイト自身も言っていたように、基本的に蒐集された世界各地の記録は誰でも見る事が出来る。

但し、

「先程も言いましたが、ある程度の権限により見れる範囲は定められています。全ての閲覧を許されるのは教導者以上、蒐集者や編纂者も特例を除いて自身が携わる範疇のみ。そして、、、貴女には巫女様より特例対応が指示されております」

当然だけど、この世の全ての出来事を知るなんて事、まともな奴なら考えない。

何故なら、知った所で何の意味も無い。

だけど、もしも良からぬ企みを持つ者が現れたとしたら、この先に納められているあらゆる情報は危険な武器となり得る、、、だからこそ、オイトは警戒しているのだ。

「別に何もしないわよ。ただ、自分の過去を他人の目線から見た時に何か気付く事もあるかもしれないってだけよ」

「、、、貴女の過去は危険極まり無い。故に、最大権限によって制限が課されています。それだけはお忘れなきように」

やや棘のあるオイトの言葉に、私は肩を竦めて応える。

そんなやり取りをしている私達の背後、辺りを見回しながら付いてくるスコーネだけは呑気に欠伸をしていたのには、気付かないフリをしておく、、、自分で付いてくると言っておいて退屈しているのか。


中央大陸北部に築かれたマンベルの町は意外と広大だ。

飛空機関船に乗り降りする為の広場があったり、多くの人が行き交ってもまだ余裕のある通りや建物。

その中でも、町の南にある建物は一際だった。

造りこそ簡素だけどその分大きさは途轍も無く、私が知る中で最も大きな建物であるウルギスの帝城、そのエントランスと同等か、下手すればそれ以上かもしれない。

その建物に、オイトを先導にしてデゾイト、そして私とスコーネが続いて入る。

「これは、、、世界中の事が集まってるって言うのは本当に思えるわね」

「ほほー、人とは勤勉じゃのう。人生を賭しても読み終えんぞ、これは」

スコーネと二人、思わず立ち止まり辺りを見回してしまうけど、こればかりは仕方が無いだろう。

何せ、目の前の広間には所狭しと本棚が立ち並び、更には吹き抜けになっている二階部分も本以外何も見えないと思わせる程の状況なのだ。

「これらの本には多数の魔法が掛けられています。劣化防止や破壊行為の無効化、改竄や不正の防止に、勿論閲覧の可否を判定する選別魔法も」

「ねぇ待って、聞いた事の無い魔法がいきなり出てきたんだけど。そんな都合良く便利な魔法があるなんて知らないわよ」

さも当然の様に話すオイトに思わず突っ込んでしまう。

確かに、やってやれなくは無い魔法ではあるけど、実際にそんな魔法は存在していなかったはず。

わざわざそんな事をしなくても、本なら定期的に書き直せばいいし、物なら直せばそれで済む。

確かに、この数の本ともなればそう簡単に管理は出来ないかも知れないけど、その為だけの魔法をわざわざ創り出すなんて、あまりにも時間と労力の無駄だ。

「確かに、ずっと昔はそうしていたと聞きます。それを生業とする修繕士も居たとか。ですが、これらの知識は永劫保存される物。ならば、例え人が居なくなろうとも残る様にしなければなりません。それ故に、先先代の巫女様が幾つかの魔法を創り出したと言われております」

それは何とも、ご苦労な事であるけど、巫女自らが創り出したとなると、或いはそれも神々の意志なのだろうか。

だとすると、神々はこう思っているのか、、、人は、やがていつかこの世界から消え去るのだ、と。


余計な雑念は一度置いておくとして、とにかくまずは。

「しかしまぁ、この中から特定の過去だけを探すのは中々に大変ね」

「ある程度の仕分けはされていますが、そもそもこれらは特定の事象を知る為の物ではありませんからね。貴女の様な方が稀なのです」

オイトの言う通り、そもそも自分の過去を知りたいなんて話が有り得ないのだ。

彼女や私はそれを理解しているから、最初の一歩をどうするか考えて棚を観察している、、、けど。

「多分この辺じゃないですか!?」

「うむぅ、我はこの手の物はイマイチ分からん」

何とも平和な二人があちこちを駆け回りながら棚を漁る。

「そもそも何を探すか知らないでしょ」

「あっ!そうでした!」

閃きを得たと言わんばかりに顔を上げ、こちらに戻ってくるデゾイト。

一度だけオイトに目を向け、だけど彼女は無反応を貫いた。

なら、私も遠慮はせずにデゾイトに目的を伝えるとしよう。

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