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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第八章 マンベル・秘されし者達の蒐集録
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313 記憶と記録

デゾイトと合流した私達は、来た道を引き返して町へと戻る。

元々、デゾイトの出迎えはオイト一人で行く予定だったらしいけど、私達が来たり、それに合わせて巫女も現れたりとで予定が狂ったらしい。

ついでに言うと、飛空機関船も巫女の来訪のお陰で降りてくる事が出来なかったそうだ。

それだけ、巫女の存在と言うのはマンベルの人々にとっては大きいらしい。

実際、巫女と直接言葉を交わした私に向けられる視線は羨望やら嫉妬やら、色々と入り混じった物だ。

同席したオイトは、やはり教導者だからか巫女と、それもちゃんと実物と対面した事があるらしく、何でも教導者に任命されると巫女との謁見が必ずあるそうだ。

対して、デゾイトは蒐集者と呼ばれる、要は修業を積む段階の立場らしく、巫女とは謁見どころか直接声を聞いた事すらも無いらしい。

そのせいか、私に向けられる視線がとても眩しい。

「本当にスゴイ事なんですよ!巫女様とお言葉を交わせるなんて、生きてる内に一度あれば奇跡です!」

目を輝かせて話す彼女が、何故か私の周りをグルグルと回りながら捲し立てる。

その様子は子犬がジャレついているようで微笑ましいけれど、また転びそうで危なっかしい。

相変わらず前を向いたまま歩くオイトも、時々後ろの様子を窺っているから、普段もこんな感じで落ち着きが無いのだろう。

「しかしまぁ、暖かくて過ごしやすい町じゃの。何だか眠くなってきたぞ」

対する私の連れは、何とも暢気に欠伸をしていたりする。

いや、というか本当に目を閉じたまま歩いているんだけど、まさか本当に寝てたりしないわよね。


町の一角には多くの人が集まっていた。

どうやらさっきの飛空機関船から降りてきた人達が集まっているらしく、その彼等は何やらしている。

「彼等はデゾイトと同じく蒐集者達です。こうして定期的に戻り、蒐集した事を報告しているのですよ」

そうか、蒐集する以上、それを集める必要もある、、、のだけど。

「どうしてあの飛空機関船で戻って来てるの?貴女達、魔法でも魔導具でもない転移を使えるでしょ」

そう、プリエールが見せたあの謎の転移、それがどういった力かはともかく、便利な移動手段があるならそれを使うのが普通なのだけど。

「あれは限られた者のみが扱える禁術です。事実、今代に於いてはプリエールのみが扱う事が許されています」

「私達は各地にある回収地点で船に拾ってもらうんです。それで、ここに戻ってきたら編纂者様に見聞きした事をご報告するのです」

オイトに続いてデゾイトが説明をしてくれ、そのまま人混みの中へと駆けていった。

彼女も何かしらを報告しにいったのだろう。

「しかしまぁ、世界中の事を調べて何をしようっていうのかしらね」

「この世界は未知に溢れています。世界を創世した神々ですら、予測出来ない発展を続けているのです。蒸気機関もそうですし、その先にあるであろう次なる形も。そうして新たな物を手にする一方で、古くなった物は捨てていく事になる。それは不要になったからではなく、私達が忘れ去ってしまうからです。だからこそ、あらゆる足跡を、痕跡を、記憶し、記録するのです、、、いつかそれを思い返し、時に懐かしみ、時に戒める為に」

人混み揉まれながらも自分の役目を全うするデゾイトの背を見つめながらオイトが訥々と語る。

その言葉は、私にとっても他人事ではない、、、今まさに、それをしているのだから。

だけど、、、果たしてここに、私の望む答えはあるのだろうか。

いや、そもそも私は、ここで答えを得たとしてそれに納得する事は出来るのだろうか。

ここに集められるのは、確かにこの世界で起きた事実ではあるのだろう。

だけど、所詮それは記録でしかない。

その目が私ではない別の誰かである以上、それは記憶では無く記録に過ぎない。

そこに居た当人の思いや感情なんて、そこから読み取る事なんて出来はしないのだ。

そういう意味では、彼等の蒐集した事に興味は無い、、、のだけど。

「ねぇ、聞きたい事があるんだけど」

オイトに声を掛けると、彼女は怪訝な表情を浮かべながら私へと顔を向ける。

「何でしょうか」

「蒐集した事って、私でも見れる?」

「それは、、、基本的には大丈夫なのですが、、、」

何だろうか、誰相手にもハッキリと物を言うオイトが珍しく言葉を濁している。

この感じは、どちらかというと部外者に見せたくない、というよりは私に見られたくない、という感じだろうか。

「何か不都合があるの?それとも、私だから都合が悪い?」

敢えて突っ込んでみると、オイトの表情が僅かに翳る。

やはり、何かしらの問題があるみたいだ。

興味は無かったけど、こういう反応をされるとそれはそれで気になってしまう。

オイトを説得するのは難しいだろう、なら。

「お待たせしました!報告完了です!」

満面の笑みで仕事をやり切ったデゾイトが戻ってきた。

これは何とも、狙ったような好機だ。

「ねぇ、デゾイト。一つお願いがあるのだけど」

オイトの横槍が入る前に、デゾイトの手を握って人混みの方へと歩き出す。

背後でオイトが動く気配がするけど、その前に話を進める、、、この子なら、簡単に丸め込めるだろうからね。

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