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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第八章 マンベル・秘されし者達の蒐集録
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307 天を往く鋼

その威容に私もクローネも思わず足を止めて見入ってしまう。

下から見る形は海を渡る船と近しい。

けど、その船体の下部には筒状の何かが幾つも飛び出ていて、更には側面からもそれは伸びていた。

そして、この位置からでも分かるのが船体の周囲を漂う雲、、、いや、煙だ。

明らかに船体上部から吐き出されているそれは、恐らく町のあちこちから上がるそれと同じ物だ。

その謎の飛行物体は、微かに風を切る音を響かせながらゆっくりと進んでいき、町の上から北の方へと飛び去って行く。

「船が、、、飛んでる、、、」

「なんじゃあれは?山の下にはあんな魔物がおるのか?」

二人並んで見上げていると、

「飛空機関船、貴女方は初めて目にする物となるでしょう」

いつの間にか並んで空を見上げていた女がそう口にする。

「飛空、、、機関船?」

「はい。そうですね、道すがらお話しましょうか。あの船の事も、この町の事も」

返事を待たず、女はまた歩き出す。

既に彼方へと小さくなった影を振り返り、私とスコーネは女の後を追って歩き出した。


私達を案内する女、名はオイトと言うそうだ。

随分と変わった名ではあるけど、どうやら本当の名では無く、教導者に選ばれた際に与えられる称号の様なものらしい。

そのオイトが言うには、この町も、さっきの飛空機関船も、蒸気機関という物が使われているらしい。

詳しい事はまるで分からないけど、そこら中から上がる煙がその蒸気とやらと関係があるそうだ。

特に、あの飛空機関船は最大の発明の一つらしく、あれ以外にも存在しているというのだ。

「とりあえず、魔導具とは違う、という事なのね?」

「はい。部品の一部として利用はしていますが、本質的には関係がありません。その魔導具にしても、蒸気機関により魔力を補給していますので、魔力補給の為の人員も必要ありません」

「人を介さずに魔力を補給ですって!?そんなのあり得ないわ!」

魔力は生き物が持つ力、命そのものと言ってもいい代物だ。

それを、訳の分からない何かが生み出せるなんて訳が分からない。

もしもそれが事実だとしたら、人が存在する意味が無くなってしまう。

だけど、オイトは私の穏やかならぬ声にも平静なまま、

「無論、魔力は命の源。本来ならば神の領域の産物でしょう。しかし、それ故に人の発展が妨げられるのもまた神の本意では無いと、巫女様に神託が降ったのです。それ以来、我らは許される範囲で更なる進化を模索して来たのです」

ここでもまた巫女か。

今の話が本当だとすれば、巫女とやらは神からの言葉を聞いているという事になるけど、、、

「つまり巫女は神からの言葉の代弁者という事?」

「そうです」

オイトは淀み無く答えた。

それ自体は周知された事実なのだろう。

だけど、そうなると一つ疑問が浮かぶ、、、巫女に言葉を与えている神は何者なのか。

私が知る限り、今存在し続けている神は一人だけだ。

そして彼女はその口で語ったのだ、他の神は皆居なくなった、と。

唯一、復活を遂げようと足掻く邪神が居るらしいけど、それを成し得ていない時点で論外という事になるはず。

「、、、何かございますか」

私の懐疑的な視線に気付いたのか、背を向けたままオイトが声を掛けてくる。

彼女に聞いてみるのも手ではあるけど、これまでの発言からすると、果たして答えを得られるかは分からない。

「、、、無駄だと思うけど一応聞いておくわ。巫女に言葉を与える神って何者?」

「、、、」

これまですぐに返事をしていたオイトが、言葉に詰まる。

その背からは、触れてはならない事に触れてしまった、とでも言いたげな気配が漂うけど、私には関係無い。

何よりも、彼女のその反応で大体の予想は付いた。

「巫女以外に神の正体を知る奴は居ないのね。ならいいわ、直接会って問い詰めるだけよ」

そう、どちらにしろ巫女と話をするのだ。

どうせそれすらも見越しているのだろうし、私は私の事を知る為に何だってする。

巫女が答えを出せるなら良いし、もしも何も得られなければ、、、得られなければ、私はどうしたらいいのだろう、、、


オイトに案内されたのは町の北側にある屋敷だった。

やはりここも蒸気とやらを吐き出していて、少し蒸し暑く感じる程だ。

特に説明なども無く、そのままオイトは中へと入っていったので私達も後に続く、、、その途端、

「、、、」

「何と、ここは胃袋であったか」

何処に隠れていたのか、私とスコーネを取り囲む様に数十人の武器を持った人影が現れ、その刃をこちらに向ける。

いや、これは私一人に向けられた明確な敵意だ。

それに気付いたのか、スコーネは早々に我関せずを決め込んでいる。

「流石は巫女とやらの手下ね。これもソイツの思し召しって事?」

ただ一人、何の感情も感じさせないままこちらを見つめるオイトに向けて、私も明確な意志を持って言葉を向ける。

「、、、いいえ、これは私の判断です。貴女の様な危険な存在を、マンベルに招く訳にいきません」

そう言い放ち、直後大量の魔力が彼女の周囲に集まる。

そして、、、

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