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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第七章 オセリエ伝統皇国・エオール革新統国相克記 前編
294/363

294 封印の地・シゲルム






・・・わたしはどうなったのだろうか


とつぜん、なにもわからなくなって、だけど、きゅうにひかりがあふれてきて


そのひかりは、とてもくるしい


ちかくにだれかがいるけど、なぜかそのひとをおもいだせない


いしきがとけていき、じぶんとせかいのきょうかいがあいまいになっているような、ふしぎなかんかくだけにつつまれていて


そのへんかがあまりにもとつぜんだったから、わたしは・・・






私の手の中で震える魂。

それはまるで、産まれたての赤子が初めて世界に触れ、恐怖しているようだ。

いや、それは間違いなく正しい。

何故なら、この魂は今初めて、本当の意味で世界に触れているのだから。

「貴様ぁ!今すぐ愛し子を戻すのじゃ!」

小さい方の姉が怒りに任せて吠えたてる

その姿はあまりに滑稽だけど、大きい方の姉は冷静にこちらを睨んでいる。

「お姉様、何を企もうがもう手遅れなんですよ?私がここに至っている、その意味が分からない訳では無いでしょう?」

「、、、無論じゃ。遺跡の封印は既に貴様に奪われていたのじゃな。いや、そも妾が押し返したのも貴様の茶番であったか」

流石、大きい方はすぐに気付いたみたい。

まぁ、それこそ全てが遅すぎた訳だけど。


私の得意とする事は、暗躍。

かつても今も、私が表立って動く時は必ず全ての策を張り巡らせた後。

だからこそ、兄や姉を屠りその力を奪い取る事が出来た。

だからこそ、封印を破るだけでなくそれを我が物として姉の目を欺いてきた。

それが今、こうして結実した。


ここは封印の地、シゲルム。

我が親愛なる姉、ワルオセルネイが人の世に干渉してまで隠していた本当の封印の要。

聖痕遺跡はただの入り口に過ぎないのだ。

あそこはこの地に通じる唯一の道であり、だからこそ姉はその事を知られまいと何人たりとて近寄る事を赦さぬ聖域としたのだ。

勿論、そんな事私はとっくに気付いていたし、更に言うならその聖域もとっくに手中に収めていた。

そして目論見通り、姉は人形を伴って聖痕遺跡を訪れた。

姉はこんな事態を恐れていた筈で、だからこそ私に見せつける為に敢えてそうするだろうと考えたのだ。

お陰で、全ての準備は整えられた。

結局、姉は長い間人と共にあったせいで失念したのだ、、、聖痕遺跡のある地は私が兄姉達を堕とした呪われた地であり、そしてここ、シゲルムは例え短くとも我が領域だったのである、と。

そう、ここはかつての神々が住まう地。

今や神など無く、自然だけが残された最後の聖地、、、私の帰る場所。


目の前の二人の姉が神力を発する。

「あら、私と戦うの?今?ここで?この状況で?」

見せつける様に、手に握る人形の魂を軽く握る。

「やめい!その子はもう関係無かろう!」

「無駄じゃ、あ奴にその様な心は無い。だからこそ我が兄弟姉妹は皆喪われたのじゃ」

その通り、私に慈悲など存在しない。

何故なら、全ては()()()に与えられた力のせいで。

「そうよ、恨むなら私じゃなくて私に全てを押し付けたあの女を恨みなさい」

左手を掲げ、その手にある魂を握り潰さんと神力を放出し、、、




「いいえ、その穢れた手でその子に害為すは赦しません」




凛とした声と同時に、私の左手から魂がすり抜ける様に飛び出す。

一瞬だけ何が起きたか理解出来ず、だけどすぐに私は事態を把握する。

確かに、今の今までコイツが反応を示さなかったのは怪しんではいた。

だけど、そうなるまで追いつめたのもまた事実で、確かに油断はしていた。

私の手を離れた闇に染まった魂、それが眩い光に包まれる。

そして、その光は黒い魂を優しく包み込む手となり、そこから広がる様に人の形へと広がっていく。

「この時を待っていました。これ以上、リターニアを苦しめる悪行は認めません」

声と同時に光が収まり、その中から一人の女が姿を現す。

そう、アレこそが憎きあの女の加護を受けた真なる聖女、、、私の願いを踏みにじる蛆虫を超える塵芥。

「グレイス・ユールーン、、、この期に及んでまだ私に抗うか」

「無論です。私は私の役目を果たすまで死する事はありません、邪神、、、いいえ、メルダエグニティス!」

「我が真名を軽々しく口にするな、蛆虫以下の分際が!もう一度死の苦痛をその魂に刻んでくれる!」

私の怒りに呼応して真紅の茨が天より降り注ぐ。

それはグレイスを貫かんと伸びていき、

「いいえ、今この場に於いて貴女の力は私に及びません」

グレイスの放った言葉が魔力を伴い、強固な障壁を生み出す。

茨は障壁に突き刺さり、だけどそれを突き破る事無く消滅していく。

「馬鹿な!?私の力に抗うだと!」

「お忘れですか?私に与えられし神の加護を。確かに、この地はかつて貴女の領域となりました。ですが、原初はこの地こそが全ての始まり、大いなる女神が世界を見守りし地なのです。故に」

グレイスが両手をこちらに翳す。

その手の先に、瞬時に膨大な神力が集まっていく。

「今この時に於いて、私は女神の力を借り受ける事が出来ます。分かりませんか?私は貴女と共にあの子の内に居たのですよ。なればこそ、貴女の企みも予見したのです。故に、貴女の真似をし、全てを耐え抜きました、、、雌伏の時は終わりです」

私が反応するよりも尚早く、グレイスの手から一筋の光が解き放たれ、それはあらゆる速さを超えて私を貫いた。

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