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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第七章 オセリエ伝統皇国・エオール革新統国相克記 前編
286/363

286 平等の価値

まず初めに訪れたのは、盟主の住む町から南に位置する一番近い町。

外観は勿論、町の中の景色も最初の町と同じで、それこそ地図を見ていなければ元の町に戻ってきたと錯覚しそうな程だ。

今の時間としては昼の少し前位という事もあり、かなり賑やかで活気に溢れている。

ただ、困った事にこの国は基本的に観光客を受け入れていないから、町の案内がまるで無いのだ。

つまり、調べ物をしようにも何処に行けばいいか分からないのである。

しかも、それだけではない。

道行く人々から向けられる視線はかなり鋭い。

敵意とまではいかないけど、あからさまに外から来た私に対して警戒をしているのだ。

ただ、それで何かをしてくるという訳でもない。

寧ろ、遠巻きに見ていて知り合い同士で何事かを耳打ちし合っているだけ。

まぁ、私からすると何だか見せ物にでもされてる気分であまり面白くはないけれど、実害がある訳でもないからとりあえず放っておく。

「とりあえず移動しようかな」

このままここに居てもどうしようもないから、適当に歩き出す。

本当に町の造りが同じなら、重要そうな建物のある場所にも凡その検討が付くから、まずはそこを目指してみる。


で、最初の町で盟主の館があった場所と同じ辺りに来てみたのだけど、ものの見事に何も無かった。

いや、それを言うならここに至るまでの道でも、外観で重要と分かる様な建物が全く無かったのだ。

何処を見ても同じような造りの建物が続き、見た目こそそれなりに煌びやかではあるけど、それが全ての建物に施されているから貧富の差なんかも見分けが付かない。

これがこの国の政策方針なのだろうけど、こうして見ていると何とも言えない気持ちの悪さがある。

人の営みにおいて、どんな物に於いても差というものは生じる。

それは必然の物もあれば、偶然生まれる物もある。

人はそういう理不尽を飲み込んで生きていくのだ、、、いや、それを受け入れられずに世界を滅ぼそうとした私が語る事では無いけれどね。

とにかく、そういった不平等と向き合う事こそ人生と言うのだろうし、それをどうにかしようと足掻くからこそ人は輝くのだ。

それに、恵まれているからとてそれで一生安泰という事も無い。

その恵まれた環境を維持する為には相応の努力が必要だし、逆に少しでも何かを怠ればそれはあっという間に霧散する。

そうして上流階級に居た者が一夜にして最底辺に落ちるなど少なくない。

そしてそれらの全ては、必ず人それぞれの形がある。

何故なら、そこには必ず違いが生じるからだ。

言い換えれば、不平等な要素が必ずある。

その不平等を、この国は人の手によってでなく、国が取り除いているのだ。

一見すれば、それは素晴らしい事のように思えるだろうけど、実際こうしてみてみると、その歪な形に気持ちが悪くなる。

これではまるで、生きているのでは無く、生かされているようだ。

「、、、あながち、間違いでは無いかもね」

自分の考えに、ある事を思い出した。

そう、盟主ネイの言葉だ。

彼女はこの国を、邪神の封印の為に興したと言っていた。

それがもしも言葉通りの意味だとしたら、ではこの国に生きている人達は何なのか。

封印を守る為なら、別に国である必要も無いし、人も居らないはず。

それを敢えて、こういう形の国を作ってまでしているのだ。

そこには必ず何か秘密がある。

盟主ネイが、そして皇王ネイも語っていない何か重要な事が、この国を作った理由なのだろう。

その良し悪しについては、私が語る資格は無いのは十分承知している。

そもそも、私が全てを滅茶苦茶をしたのだ、それをここまで復興させてくれたのは感謝する。

でも、ここまで見てきた物を考えると、果たしてそれが単なる善意なのか疑わしくもある。

それに、何だか予感があるのだ、、、この謎を追う事は、私自身の謎に迫る事になる、と。


余計な事を考えながら町の散策を続けてみたけど、結局何処に何があるかはまるで分からないままだった。

ただ、私を見る人々の視線に紛れて様子を窺う様な気配も混じっていたから、恐らく盟主ネイの息が掛かった者が密かに付いてくれているのだろう。

気を遣ってくれるのは有り難いけど、それなら案内くらいはしてもいいのでは、と思ったのはここだけの話。

まぁ、あの様子からすると、町の人達が私に関わらないように何かしら話を付けているのだろう、、、或いは、だからこそ町の人達は奇異の目で私を見ているのかもしれないけど。

何せ、盟主の付き人が直々に動いてるだけでなく、忠告までしているのだ、それを不思議に思っても仕方が無いし、そんな待遇を受ける人物が一体何者なのか気になるのもまた然りだ。

でも、だとすると、彼らの目に私はどう映っているのだろうか。

全てを平等に、そんな国是とは正反対の特別な扱いを受ける存在に、この国に生きる人々は一体何を思うのだろうか。






・・・人形の目を通して見える虫共の滑稽な姿に、私は笑みを浮かべる。

そう、これはあの愚かな姉の失策だ。

人形はまだ気付いていないようだけど、私は既にこの国の秘密とやらに至った。

だから、楽しむとしましょう、、、人形は人形らしく、私の望むがまま、哀れに踊り続ければいいのだから。

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