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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第七章 オセリエ伝統皇国・エオール革新統国相克記 前編
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283 皇王と盟主

靄が掛かった様な微睡みから意識が浮かび上がる。

霞んでいた目がハッキリとして、その視界に飛び込んできたの青空だった。

「あれ、、、私、、、」

「む、目が覚めたかの」

何があったのかを考えながらだったせいか、自然と呟いてしまったけど、それに対して頭上から返事が降ってきた。

それで、ようやく自分が誰かの膝に頭を預けているのだと理解し、その相手が誰なのかも思い出す、、、同時に、私が意識を失っていた理由も。

それを問い質そうと口を開きかけ、だけどそれよりも先に盟主ネイは私の口に指を添えて遮る。

「言わぬで良い。済まなかったな、彼奴めの気配が濃くなった故、説明する間もなかったのじゃ」

目を伏せて申し訳なさそうに話す彼女に、私は半開きのままの口を閉じる。

確かに、思い返してみると以前にも感じた違和感が出てきていたような気がする、、、いや、本当にそうだろうか。

何だか分からない違和感を覚えるけど、それが何なのかハッキリと言葉に出来ない。

「まだ意識が朧気かの。ここはあまり良い地では無いからのう、早々に引き上げるとするか」

「もう良いのですか?」

「うむ、見たいものは見れた。とは言え、謎は謎のまま。其方も当面は己が身に気を配るのじゃ。出来るならば、聖痕は使わぬ事じゃが、、、」

難しい話、ではないけれど、どうにもここ暫く厄介事が舞い込んでくる事が続いている、、、私の意志とは無関係に。

事情を知った以上、私としても彼女の言葉通りにはしたいけど、果たしてこの先平穏で過ごせるか。


私の調子が戻るのを待って島を後にする。

この身にある、邪神以外の聖痕については本物である事は確認出来たけど、それ以上の収穫は残念ながら無し。

それについては盟主ネイが調べてみるとの事で、私はとりあえず今日の疲れを取る為にゆっくり休めと言われたのだけど。

来た時とは違い、私と彼女は別々の馬車に乗っている。

気を遣ってくれたのか、車内は私一人。

それほど広くは無いけれど、一人で乗ると足を延ばす程度は出来るし、少々はしたないけれど座席の上に寝転がる事も出来る。

多分そういう意味なのだろうと好意的に解釈して、今まさに寝転んでいたりするのだ。

造りが良いのか、馬車は揺れも少なく、あまり整備されていない道のはずなのに跳ねたりもしないから意外と快適だ。

少し視線を上げれば窓から空も見えるし、中々に快適で堪らず瞼が落ちてくる。

やはり疲れていたのだろうか、段々と微睡みが強くなり、そのまま睡魔に身を任せて目を閉じて、、、


突然、大きな音と同時に馬車が急停止する。

周囲に居た護衛達が大きな声を出しながら走り回る音が響き、だけどそれはすぐに静寂へと変わる。

最初は何かしらの襲撃かと思ったけど、明らかに外の雰囲気はそれとは違う。

「、、、嫌な感じがするわね」

ゆっくりと起き上がり、静かに馬車の扉を開いて外に出る。

私の前の馬車には盟主ネイが乗る馬車があり、その前には先頭を務める護衛の馬車があるのだけど、その前に小さな人影が一つ。

「なんで彼女が、、、」

「何しに来た」

私の呟きを掻き消す様に、鋭い口調の声が響く。

馬車の陰になっていて気付かなかったけど、盟主ネイが既にそこに立っていたらしい。

そして、その彼女が相対しているのは、驚くべき事に皇王ネイだった。

外見年齢こそ大きく離れているけど、その顔立ちや纏う空気、何よりも互いにぶつけ合っている剣呑な視線はまるで同じで、事情を知らない人が見れば姉妹だと思うだろう。

勿論、ここに居るのは全員彼女達の事を知る者だけだから騒ぎにはなってないけど、一様に困惑の表情は浮かべていた。

私とてその一人だ、何せ、来る筈の無い人物が、まるで襲撃でも仕掛けたかのように現れたのだから。

だけど、その当人達は今にも殺し合いを始めそうな程に睨み合い、何なら魔力すら高めている。

「我は言うたぞ、リタを遺跡へは連れて行くな、と」

「妾は言うたぞ、あの子は真実を知る必要がある、と」

そのやり取りの直後、更に魔力が膨れ上がる。

それは最早人が扱える領域を超え、周りに居た護衛や側付き達が次々に意識を失い倒れていく。

さしもの私も、聖痕を使って障壁を張っていなければ膝くらいは突いていてもおかしくはない。

「見よ、其方のせいでまた要らぬ力を使わせてしもうたぞ」

「黙れ、其方が約定を守らぬせいであろうに。我の分け御霊如きが口を出すでない」

「異な事を、妾は其方の本来の領域ぞ。本分を忘れておるのは其方じゃ、肩入れが過ぎれば目が曇る。妾の役目、忘れた訳ではあるまい。それとも数千の歳月を捨て去り、兄弟姉妹の犠牲を無に帰すつもりか」

話している内容はまるで分からないけれど、いよいよ二人の纏う空気は殺気を含み始める。

「いや、二人とも待ちなさい!こんな所で喧嘩しないで!」

あまりの部外者感に呆けていたけど、慌てて止めに入る。

あれだけの魔力でぶつかり合ったら、この辺りは焦土どころでは済まない被害になるのは確実だ。

頭に血の上った二人が大人しく聞くとは思えないけど、それでも止めないと色々ととんでもない事になる、、、と思ったのだけど。

「む、、、其方が言うなら仕方が無い」

「むぅ、、、其方の言う事ならば仕方が無い」

いや、それでそうもあっさりと納まるのはどうなのよ。

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