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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第七章 オセリエ伝統皇国・エオール革新統国相克記 前編
280/362

280 語らずとも

外はすっかり雨が止み、綺麗な星空が一面に広がっていた。

盟主ネイと並んでその光景を見上げて頭と心を落ち着ける。

とはいえ、この身に宿る内の八個が本来なら存在しないはずの聖痕と言われては、流石に混乱は簡単に治らない。

しかも、それらの聖痕には気配すら無いと来ている。

これが一体何を意味するのか、私は勿論の事、盟主ネイですら今は何も分からないというから困ったものだ。

まぁ、そうして行き詰まったからこそ、こうして外の空気を吸いに来ているのだけど。

「、、、」

「、、、」

互いに無言のまま、空を見上げ続ける。

何かを話そうにも、その話題さえ今は思い付かない、というか考えたくない。

私は、私と邪神の関係性が余りにもややこしく、しかも一方的であるせいでどうにもならないが故に、何をした所で意味が無いという結論が出てしまっている。

だけど盟主ネイ、彼女も彼女でまた、これまで認識出来なかった事があったという事実に困惑し、更にはそれが何を齎そうとしているのか、その糸口も掴めていないという状況に頭を痛めているようだ。

何せ、彼女が兄弟姉妹を失い、一人きりとなった原因を作り出した張本人が相手なのだ。

どれだけ警戒しても、それが意味のある事かすらも見えないのでは気が休まる時も無いのだろう。


そうして夜も更けていき。

「、、、行ってみるかの」

ポツリと、盟主ネイは空を見上げたまま呟いた。

それは明らかに私に向けたものではなかったから、特に反応はしなかったのだけど。

「其方も共に行くぞ」

「えっ?」

さも当然の様にそう言われ、思わず真抜けた声で聞き返してしまった。

それに目を丸くした彼女は、クスリと笑い、

「ああ、いきなりじゃったな。聖痕の謎を知るならば聖痕遺跡へ行くのが早い。確かめられる事もあるでな」

少しだけ緊張の面持ちを見せてそう告げる。

だけど、私はその言葉に疑問を抱いた。

何せ、彼女自身があそこには何も無いのだと告げたのだ。

その場所へ向かい、何を確かめるのだろうか。

「うむ、妾の先の話と違うとな?さもありなん、あの時点では明かす必要の無い話故、告げなかった事じゃ。我が兄弟姉妹の名を刻んだ碑は、特殊な魔法を用いておる。即ち、聖痕となりし我が兄弟姉妹の名が自然と刻まれるようにの」

「それはつまり、、、」

「うむ、其方の持つ、あり得ぬ筈の聖痕。それが紛れも無く我が兄弟姉妹の物であるすれば、それに呼応して碑にも名が刻まれている筈じゃ」

それならば、確かに見に行く事に意味はある。

だけど、最初に話をした時にそれを明かさなかったという事はつまり私に、そして私を通して見聞きしているであろう邪神に知られたくはないという事でもあるはず。

なら、私は同行出来ないだろうし、どの道、行き方も秘されているのであるなら、尚の事私は行くべきでは無いのだろう。

自身の中でそう結論付けていたのだけど、

「何を我関せずな顔をしておる。其方も参るのだぞ」

「えっ、、、?」

その一言に間の抜けた声が漏れ出てしまう。

確かに、今回に限れば私は関係無いというか、色々と宜しくない状況だからと考えてはいたけれど、まさか彼女にそれを言われるとは思いもしなかった。

「いえ、私にというか、邪神に知られたくないから話さなかったんですよね?」

「それは確かにそうじゃ。だが、もしも其方の聖痕が彼奴の策によるものであるならどの道無意味じゃ。遺跡にしても、そも彼の地は彼奴によって我等が追いやられた因縁の場所でもある。妾が秘しておきたかったのは其方に対してのみじゃよ」

邪神にでは無く、私に知られたくない、、、それは一体、、、

「其方の事じゃ、ともすれば自力で辿り着かんとする事もあろう。じゃが、それで彼の地の結界が破られては堪らんでな。まぁ、簡単にいくとも思うてはおらぬがの」

そういう事か。

確かに、そう言われるとやってみようかと思うけど、、、いや、流石にそんな墓荒らしみたいな真似はする気は無い。

「いえ、流石にそこまでは。それに、どの道辿り着けませんよ。いえ、それよりも結界ですか?」

「無論、彼の地を秘匿する為よ。辿り着けぬと言うても、何かしらの偶然で至ってしまう事もあろう。それを避ける為の物よ」

、、、多分だけど、今の話は嘘だろう。

そもそも、ついさっき彼女が言ったのだ。

聖痕遺跡のある島にはどうあっても乗り込む事は出来ない、と。

であれば、島の存在自体が知られたとて、そこに何があるかまでは全く分からないのだし、そもそも再び辿り着ける可能性も低いはずなのだ。

そんな場所に対してわざわざ結界を張る意味なんて、どう考えても他に隠しておきたい何かがあるのだろう。

そして、そう考えてみると、さっきの私に対する言葉にも納得がいく。

結界を破られたくない、そしてそれ以上に、それが守る何かを知られたくない、或いは見られたくない。

だとすれば、聖痕遺跡の本質はそれなのだろう。

それが果たして何なのか。

それが私に、そして邪神にどんな関係があるのか。

彼女は全てを分かっていて尚、共に行くと言っているのだろうか。

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