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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第七章 オセリエ伝統皇国・エオール革新統国相克記 前編
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273 皇王の失敗

故郷の跡地を離れ、道なき道を歩く。

いや、本当に僅かではあるけど、街道らしきものが草や土の隙間から見えてはいる。

当時はちゃんとした道が存在していたのだろうけど、百年以上も放置されればこうなるのは当然だろう。

でも、お陰で迷う事無く進む事は出来ている。

このまま行けば何処かしらの町に辿り着けるだろう。

そこでなら、何かしらの情報も得られるはず、、、何せ、魔王が生まれ、滅ぼした町に隣接しているのだ。

復興の為の調査や、それ以外にも色々とあの地は人が訪れているだろうから、であれば最寄りの町がその拠点として使われたのは間違いない。

そして更に言うなら、私に残る当時の記憶では隣町を滅ぼした覚えは無い。

勿論、忘れているだけの可能性もあるけど、恐らくそうはしなかったはず。

今の私が、かつての私の延長線上に居るのならこう考える、、、敢えて近隣の町は残し、私の存在を刻み込ませる、、、その噂が広まれば、誰も手出しはしないだろう、と。

結果だけを見れば目論見は外れたけど。

何せ、この大陸の外から攻めてくるなんて考えもしなかったのだから。

そう言う意味では、当時の私は世間知らずな子供だったという事なのだろう。

闇雲に力を見せつけ、それで全部が収まると考えていた、、、何と浅はかで、そして憐れなのだろう。

「はぁ、自分で自分を評価するのって、想像以上に効くわね」

滅入り始めた自分に気付いて、思わず溜息と共に呟く。

どうにも、ここ最近はこんな事を繰り返している気がする。

いや、過去が過去なのだ、思い返せばそうなるのは当然か。

だけど、これからはそれとも付き合っていかないといけないのだ。


程無く、町に辿り着いた。

いや、見た目だけで言えば村と呼んでも間違いじゃないくらいには質素というか、ハッキリ言ってしまえば寂れている。

それも仕方が無い、少し行けば魔王に滅ぼされた町の跡地があるのだ。

それに、恐らく地理的に見てもここにわざわざ人が訪れはしないのだろう。

調べた訳ではないけど、確か私の生まれた町はこの大陸の北の方にあったはず。

それも、最北端の町で、あそこの先にはもう人の住む場所は無かったと思う。

なら、今はこの町こそが最北端に位置する事になる。

まぁ、それは置いておくとして、とにかく小さな町に人気は少なく、たまに見掛ける人も明らかに余所者の私を警戒している。

それも仕方の無い事だろう、何せ、こんな寂れた町に、いきなり見ず知らずの若い女が一人で現れたのだ、これを不審に思わない人などまず居ない。

加えて、さっきから姿を見せている町の人は、そのほとんどがそれなりに高齢の方ばかり。

察するに、若い人はこの町を出て皇都か、或いは別の国へと出て行ったのだろう。

この町が寂れている理由は恐らくそれで、そう遠くない内にこの町も地図から姿を消す事になるだろう。

何かしら情報を得たかったけど、この状況ではそれは難しいだろう。

怪しまれない程度に様子を観察し、そのまま町を抜ける。

皇都に至る前にもう幾つか町はあるはずだから、そこに期待をしたいけど、、、


で、次の町が見え始めたのだけど、、、

「何だろう、やけに人が多い?」

町の規模はさっきと然程変わらず、だけど人の姿が多く、雰囲気も何だか物々しい。

警戒しながら町の入口へと近付き、特に人だかりの出来ている場所に近付こうとして、

「っ!」

それが何なのかに気付き、すぐに踵を返して去ろうとする、けれど。

背後から近付く気配と、

「待つのじゃ!」

呼び声と共に腕を掴まれる。

最早確かめるまでも無く、それは皇王だった。

呼び止められただけならまだしも、腕を掴まれては逃げようが無い。

振りほどいてもいいのだけど、何故か私を引き留める彼女の手から震えが伝わってくる。

「、、、何か御用ですか?」

代わりに、少しだけ語気を強めて問い掛ける。

「落ち着くのじゃ、我は敵ではない。其方を救いたいのじゃ!」

私の言葉に表情を強張らせた彼女だけど、それでも私から手を離さない。

それに、その言葉にも何処か必死さが窺える、、、多分、彼女の言葉は本心なのだろう。

だけど、

「なら、アレはなんですか。わざわざ私をあの場所に飛ばしてあの光景を見せつけて。私にあの時の事を思い出させようとしたのではないのですか?」

「違うのじゃ!アレは我ではない!」

「なら誰の仕業ですか?いえ、そもそも転移させられる直前も私の身に異常が起きていた。それも含めて、一体誰が為した事なのです?」

皇王は口を開こうとし、だけど何故かそのまま口を閉じ、目を逸らしてしまう。

その顔からは、明らかに迷いが見て取れる、、、けれど、この状況で何を迷う事があるのだろうか。

その態度こそが、やましい事を隠している証明なのだと、彼女は分かっているのだろうか。

これ以上は意味が無いと判断し、皇王の腕を振りほどく。

「あっ、、、」

「答えが無いなら、私が貴女を信じるに足る要素はありません。私は私自身で己を知ろうと思います。これ以上邪魔をしないで下さい」

彼女が何かを言う前に一気に捲し立て、そのままそこから立ち去る。

その背に何かを訴える視線を感じつつ、それでも私は振り返る事無く歩き続けた。

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