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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第六章 ヤーラーン帝国淫蕩録
249/363

249 涙

無数に分裂した蔦を躱しながらどうやって宝石を破壊するか考える。

始めは、あの触手を切り落として安全を確保してから飛び上がろうと考えていたのだけど、まさか切り落としたら数が増えるなんて。

いや、そもそもこれまで見てきた、宝石によって変化させられた物を考えればこうなる可能性は分かったはず。

それが、ああも容易く攻撃が通って功を焦ってしまった。

冷静に考えれば、あの爆発的な膨張から十分に想像が出来たはずなのに、、、いや、過ぎた事をウダウダ考えても仕方がない。

とにかく、これ以上あれを増やさない為にも、余計な攻撃は出来ない。

だけど、迂闊に飛び込めばあっという間に串刺しにされてしまう。

こうしている間も蔦による攻撃は続いている上、その動きが少しづつ鋭く早くなってきている。

あれにもうリアメノの意識は無いだろうから、本能的に魔力を持つ物を追っているのだろう。

「、、、魔力を追う?それって、あの時と同じ!」

自分の考えに思わず声が出る。

そうだ、この見た目に動き、ウルギスで戦った魔導人形の一体に似ている。

アレは唯一、魔導人形の中で人の形を保てておらず、ただひたすらに魔力を求めて暴れていた。

今目の前で暴れているリアメノの成れの果ても、そう考えて見てみると同じ様に感じる。

いや、恐らくはその資料もラウは得ているはず、だとすると、やはりあの宝石は何かしらの魔導具と言えるのだろう。

そして、もしもそうだとすると、あの時とは逆の手が使えるかもしれない。


冷静に蔦を躱しながら機を窺う。

結果がどうなるにせよ、一回限りの勝負だ。

上手く行けばリアメノに終わりという名の救いを与えられ、そしてその代償に、私もほぼ確実に動けなくなる。

失敗すれば、、、言うまでも無い。

全ての聖痕を使って限界まで魔力を搔き集めていく。

それに釣られて蔦も動きを更に早めて私に迫り始める。

何とか逃げ続けるけど、身体強化も最低限になっているせいで少しづつ体を掠り始める。

それでも魔力を更に搔き集め続けるけど、ついに蔦に一本が私の足に絡みつく。

動きの止まった私目掛けて一斉に蔦が伸びてくるけど、それが届く前に、

「まずは、これぇ!」

両手を前に突き出し、集めた魔力を少しだけ放出する。

目には見えない塊がリアメノ目掛けて飛んでいき、それを感知した蔦が急角度で反転してそれを追いかける。

当然、足に絡んだ蔦も離れていき、動けるようになった私もリアメノへと駆けていく。

そして、

「全部持ってきなさい!」

大きく跳躍して蔦を飛び越え、リアメノの体に両手を押し付ける。

途端、何とも言いようのない不快感が走るけど、それを無視して溜め込んだ魔力を全て流し込む。

その瞬間、蠢いていた蔦が痙攣する様に震えだし、リアメノの体が爆発的に膨れ上がる。

魔力が空になった反動で、強烈な眠気にも似た感覚に体が思う様に動かず、弾き飛ばされて地面を転がるけど、何とか気合で気を失うのだけは耐える。

倦怠感で重い体を無理矢理引き摺り、少し離れた位置にあった壁の背後に飛び込む。

そのまま体を丸め、何が起きてもいいように身構え、、、




・・・



・・・・・・


体の痛みで目を覚ます。

揺さぶられているかの様に目が回っている錯覚に、これまたやけに重く感じる左手を何とか持ち上げて頭を押さえる。

その手が何かに濡れている事に気付いて目を開けてみると、少し血が付いていた。

「、、、ああ、そっか」

それで、ようやく何が起きたかを思い出す。


細かい事は抜きにして、とにかく私の考えは当たった。

私がぶち込んだ魔力によって、変貌を遂げたリアメノの体は急激に膨張した。

何にだって限界という物はある。

私が流し込んだ魔力は、あの宝石が齎す変化をも上回る変化を彼女に与えた。

その結果、体が耐えきれずに吹き飛んだ、、、それはもう、私の予想を遥かに超える大爆発が。

それこそウルギスで戦ったあの魔導人形も、私が焼き尽くさなかったらこうなっていた。

あの時は魔法が通用したからこそどうにか出来たけど、今回のは魔法が効かない。

それだけでなく、尋常じゃない再生能力によって物理的な攻撃も出来なかった。

元凶たる宝石さえ砕ければそれで済んだのだけど、最初の失敗でそれも難しくなった。

だから、逆の発想をした、、、それがこの結果だ。

まぁ、予想外と言うか、爆発の規模が想像以上だったのだけど、、、これは私がやり過ぎただけの事。

お陰で全身が痛むし少なくない傷も負ったけど、既に魔力は戻りつつある。

怪我を魔法で治療し、一応警戒しながら物陰から這い出る。

そして、目に映った光景は巨大な穴。

私自身も相当吹き飛ばされていたと理解出来る程の威力があったのだろう、だけど、そんな事はまるでどうでもよかった。

「、、、リアメノ、、、せめて安らかに」

最早、跡形も残っていない彼女へと呟く。

例え彼女がどんな考えでラウに付き従っていようと、エオローで過ごした時間は私にとっては初めての物だった。

それが、こんな事になるとはあの時はまるで思いもしなかった、、、

空を仰ぎ、頬を濡らす何かをそっと拭う。

その跡に、ポツリと雫が落ちてきた。

雲に覆われた空から、また雨が落ち始めていた。

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