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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第六章 ヤーラーン帝国淫蕩録
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247 二つの再会

ヤーラーンの東の島には既に訪れた場所も含めて6つの町がある、、、いや、今となってはあったと言った方が正しいだろう。

私が巡った町は、その悉くが既に死を迎えていた。

考えうる限りで最も最悪な展開であり、加えてどの町にも例の宝石を埋め込まれ醜悪な像と化した人が置かれていた。

そしてこれも同じく、町の人々も生ける屍の様な有様で同じ行動を繰り返していた。

幸い、とは言い難いけれど、私が訪れた二番目の町の様な惨状は無かったのがせめてもの救いだろうか。

ただ、やっぱり女性の数は少なかったように見えたし、その行方も見当たらなかった、、、これで、少なくともその人達が東側には居ないという事がはっきりした。

付け加えるなら、ゼムや双血の楔の連中もこちらには居ないという事も。

まだ確定した訳では無いけど、いよいよ最悪な結末も覚悟はしておく必要もある。

今居る場所から薄っすらと影が見える帝城を睨みながら、この町に置かれていた宝石を破壊する。

これで一先ず、東側の町に置かれていた宝石は一つを除いて破壊した事になる。

これで何が変わるかは分からない、けれど、全く影響が無いとも思わない。

この宝石がどうやって作られているかは今は置いておくとして、こうしてわざわざ各所に配置している以上、何かしらの意味はあるはず。

それこそ、あのラウが意味も無くこんな事をするとは思えない。

或いは、これもまた別の本命を隠す為の陽動の可能性もあるから、何が起きてもいいようにだけは構えておく。


それから暫く。

結界の様子や町や周辺の状況を観察し、特に変化は無く。

これ以上は時間の無駄かな、と出発しようとした時だった。

「、、、何か来る?」

ふと、遠くに何かが動いているのが見えた。

徐々にこちらへと近付いてくるそれが馬車だと気付き、目を細める。

馬車で来るという事は、それなりな身分の者だという証拠。

そして、現状そんな事をする奴は一人だけだ。

僅かに緊張しつつ、魔力も巡らせて臨戦態勢を整える。

少し距離の離れた辺りで馬車が停まり、中から人が降りてくる。

「わざわざこんな所にまで来るなんて、余程暇なのかしら?」

「ご挨拶ですね。貴女のせいでですよ?流石にこれ以上の放置は許さぬと陛下から申し付けられてしまいましてね、不承不承ながらこうして赴いた訳です」

言葉とは相反する、満面の笑みを浮かべながら優雅な仕草で一礼するのは、やはりラウだ。

身構えていたとはいえ、やはりこうして対面すると胸がざわつく。

それを表に出さない様にしつつ、それでもこうして言葉を交わす機会がする事は一つ。

「あの宝石は何?」

一切の逃げを許さない、怒りを込めた声音で問う。

それに対し、奴が笑みを消す、、、のだけど、その後に見せた表情は、何とも言えないものだ。

強いて言うなら、諦観のような?

「残念ながら、今はまだお答え出来ないのです。貴女が素直に私の物になって下さってればこうも拗れずに済んだのですがね」

珍しく、何も取り繕う事の無いその表情に思わず言い返そうとした口を閉じてしまう。

だけど、その沈黙は。


「殿下ぁ、早く戻りましょうよぉ~」


猫を撫でるような、甘ったるい声が馬車の中から聞こえてきた。

それに、ラウは呆れた様に肩を竦め、そして、私は眉を顰めた。

「、、、まさか、、、リアメノ?」

少し前まで毎日、間近で聞いていたのだ、まるで違う口調でも聞き間違えようが無い。

そして、私の呟きが聞こえたのか、馬車の中からもう一人降りてくる。

煌びやかなドレスに身を包み、気怠げに目を細めて私を睨むのは、、、見紛う事は無い、間違いなくリアメノだった。

服装もそうだけど、それ以上に目を瞠る変化が、その表情だ。

いつも見せていた朗らかな笑みとはまるで違う、何処か妖艶さすら感じさせる憂いを受かべ、だけど目元はあからさまな不機嫌に細められていた。

そんな視線を私に向け、だけど、不意にラウがリアメノに顔を向けた瞬間、まるで恋する乙女のそれへと瞬時に切り替わる。

「中で待っていなさいと言ったでしょう?」

「ごめんなさぁい。でもでもぉ、あんなの相手にしてる殿下もいけないんですよぉ?未来の妻を待たせちゃダメですよぉ?」

いっそ目を背けたくなるほどにラウにしな垂れ掛かり、甘えた声で話す彼女の姿、果たしてあれこそがリアメノの本当の姿なのだろうか。

「それもお得意の記憶操作の賜物なワケ?」

「はぁ、そうであったならどれだけ簡単な事か。まぁ、これに関しては自ら蒔いた種なので受け入れてますよ」

目の前にリアメノが居るにも係わらず、隠す事無くそう告げるラウ。

だけど、当の本人はまるで聞こえている素振りを見せない、、、あれは、完全に己に陶酔して周りの事など意に介していない。

何処か鬱陶しそうにしながらも、させるがままにしているラウがようやく笑みを浮かべ、私を見つめる。

「まぁ、全てはどうでも良いのです。貴女も、今度は一切の容赦無く徹底的に身も心も躾け、屈服させ、涙と涎と愛液を垂れ流して私の足を舐める雌犬にする、、、ええ、それだけが、終わりにする唯一の術なのですから」

懐から何かを取り出し、それが何であるのか見えた私が動くよりも早く、リアメノにそっと押し当てる。

そして、、、


目を丸くして、何が起きたのか理解出来ていないリアメノを、青い光が包み込んでいった。

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