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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第六章 ヤーラーン帝国淫蕩録
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245 兆しを掴んで

再び中央の島へと戻ってきた私は、島の北部へとやってきた。

ヤーラーンの三島はほとんどの海岸線が崖になっていて、港が設けられているのは限られた場所だったりする。

一部、長い年月を掛けて土地を切り開き、海岸への道を造った場所もあるらしいけれど、まぁ今はどうでもいい。

とにかく、私はヤーラーンの中央北部の崖の上に居る。

そこから見渡せるのは、北から東に掛けては広大な海。

そして、北西の方角にエオローがあり、ここからなら見渡す事が出来る、、、のだけど、今はそれを遮る様に聳える壁しか見えない。

こうしてみると、あの壁が途轍もない大きさである事が改めて分かる。

そして、前に見た時とは違う点がある事にも。


前回見た時はエオローの東の島、ドランドの案内を受けた時だ。

その時は砂浜、つまり目線が低く、壁もかなり遠目で見る事になったから仕方が無いのだけど、もしかするとそれもまた計算されていた事なのかもしれない。

何せ、こうして広い視界で見てみると、明らかに不自然なのだから。

「、、、幻影。実在している訳では無いのね」

一番に目に付くが、海面だろう。

今日は割と穏やかだけれど、それでも海は常に波が起きている。

そして、当然それが何かに当たれば波は打ち消され、飛沫が上がる。

だけど、あの壁の当たっているはずの波は何事も無く消えていく。

左目の聖痕によって間近で見ているかの如くその様を捉えている以上、あの壁が虚構の物であるのは確実だろう。

であれば、あの幻影を生み出している起点が必ずある。

少なくとも、私が遭遇した幻影の内、二つにはそれがあった。

、、、そう、あの悍ましい人の成れの果てと、それを造り出していた謎の宝石。

どちらもたった一つで相当な規模の幻影を造り出してはいたけど、あの壁はその比ではない。

だとすると、あんな物を造り出す為にどれだけの人が犠牲になったのだろうか、、、想像するだけで吐き気すら込み上げる。

だけど、だからと言ってここで引き下がる訳にはいかない。

風を纏い、体が地面から浮き上がり、体を前に傾ける。


瞬く間に壁の間近へと辿り着き、海面と触れている辺りを見てみると、やはり波は壁をすり抜けていた。

念の為に障壁を展開し、右手を壁へと伸ばす。

「まんまとしてやられたって訳ね」

その手は壁に触れる事無く、その中へと吸い込まれていった。

一切の感触すら無く、異変も感じない。

ただ、僅かながらに魔力を感知しているから、やはり何かが映し出している幻影だともはっきりしたから、これでようやく、この壁が唐突に現れた理由が判明した。

但し、この壁の建設に携わったという奴らも、記憶が弄られていたという事が分かったのだけれど。

なら、後は起点となっている物を探すだけなのだけど。

「これは、、、海中にあるの?」

見渡した限りに不自然な所は無いし、もしもあの宝石が使われているとしたら逆にそこが不自然な空白として認識できるはず。

それが無い、という事は結論は一つになる。

時間があれば探し出して破壊していたけど、今は一先ず後にするしかない。

幻の壁を一睨みして、陸地へと戻っていく。


結局の所、今回の騒ぎは始めから嘘塗れだったという事だ。

そして、それを企んだのはラウ、、、と断言し切れない。

アイツが最初にこの壁について私に話した時、嘘は感じられなかった。

もちろん、私にそう思い込ませる為の演技も有り得る。

嘘を嘘と思わせない術なんて、アイツなら幾つも身に付けていそうだしね。

だけど、それならそれで犯人を島主達に擦り付ける事も出来たはずだし、それなら、わざわざドランドを殺す必要も無く、リアメノを懐柔して手駒とする意味も無い。

それに、もう一つ気になるのはその後の、残る三人に対する動きだ。

私が囚われてヤーラーンへと向かう最中にラウはヴァネス達を捕縛した。

だけど、あの時点で彼等の壁への関与はまだはっきりしていないし、何よりもドランドが殺されたという状況があった以上、島主が結託して反乱を起こしたという理由付けは通らなくなっていたはず。

寧ろ、姿を眩ませたリアメノが怪しまれて然るべき状況だったのに、ラウは彼女をヤーラーンへと向かわせた、、、いや、そうか。

まだ一人、真実の一端を知るであろう人物が居たじゃないか。

「貴女はどこまで知っているの、、、リアメノ」

ここに来てから一度も、姿どころか名すら聞いていない彼女。

ラウに手籠めにされ、甘い言葉で操られ、今回の騒ぎの協力者となっていたあの子が、何処まで聞かされているのか。

あのラウの事だ、恐らくほとんど語ってはいないだろうし、大半が嘘で誤魔化しているだろう。

だけど、全てが嘘では逆にボロが出る。

必ず、幾つかの真実は語って聞かせているはず。

なら、あの子の目を覚まさせ、こちらに引き戻す事が出来れば、、、いや、それも可能性としては低いだろう。

恐らく、そんなまだるっこしい事なんてせず、記憶を弄っている可能性が高い。

だとすると、あの子ももう手遅れだろうし、下手をすれば、リアメノも既にヴァネスと同じ末路に至っているかもしれない。


、、、それでも、探す必要はある。

どの道、フェイネルも探さないといけないし、何ならゼムもまだ居場所が分からないままだ。

回り道にはなったけど、少しは前進したと思う。

次は彼等を探し出し、間に合うなら助け出す。

今はそれが、私に出来る反撃なのだから。

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