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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第六章 ヤーラーン帝国淫蕩録
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243 終わりなき深淵

一瞬、それが誰なのか分からなかった。

それ程、目の前に立つキネレイは生気を感じさせなかった。

虚ろな目は私を見ている様で、恐らくは何も映していない。

そして、他の町人と同じように箱を持ち、私が邪魔なのか何をするでもなく佇んでいる。

声を掛けようとしたけれど、その姿に何を言えばいいか浮かばず、横に移動する。

音も無く動き始めたキネレイが少し離れた場所に箱を置き、また別の箱を持って何処かへと歩き去る。

その後ろ姿をただ見送る事しか出来ず、だけど、そこでふと疑問が浮かぶ。

「あの二人が居るなら、フェイネルも、、、」

そう、あの三人は共に移動していたはず。

その内の二人がここに居るという事は、必然的に彼女も一緒にここに連れて来られたという事になるはず。

辺りを見回してみるけど、少なくとも見える範囲に彼女は居なさそうだ。

いや、、、こうして改めて見てみると、一つ気が付いた事がある。

箱を運搬している町人、その大半が男だった。

女も居るには居るけれど、誰もそれなりに年齢の高い人ばかり。

要は、若い女が見当たらないのだ。

加えて、子供の姿も見当たらない。

最早散々見聞きしたし経験した事ではあるけれど、、、嫌な想像しか浮かばない。

一先ずヴァネスとキネレイの事は後に回し、フェイネルや他に居たであろう人の捜索をする。

ただ、そこまで広くは無い町だから、そう時間も掛からずに見つかるはず、、、


そう考えて探し回った結果。

「ここには居ない?別の場所に連れて行かれたのかも」

全ての家の中を見て回り、それ以外の建物も同じ様に探したけど、人の気配すら無かった。

左目の聖痕で何か隠されていないかも確かめたけど、こっちもまるで反応無し。

他に何か手掛かりは無いかと粘ってみたけど、そういった痕跡は綺麗に消されている様で、何なら、かつて居たはずの住人の生活の跡すら消している徹底ぶりだ。

であるなら、恐らくだけど後を追われない様にそういった痕跡を全て消し去ったと考えるのが妥当だろう。

そうなると、後は町の外を調べるだけなのだけど、、、

広場に戻り、その中央に佇む像の前に立つ。

どうにかしたいとは思うけど、事実として助ける術は無い。

これがラウや皇帝の影響によるものなら、彼等を打ち倒せばまだ可能性はあるけれど、残念ながらこれは明らかに別の物だ。

しかも、まるで手の付けようがない謎。

私の手の届かない領域が存在する、それに対しては思う所は無いけれど、だからと言って全く歯が立たないというのは少し腹立たしい。

それが出来れば救える命もあった、その事実もまた尚の事己の無力さを突き付けられている様で、、、

「、、、せめて、解放だけはしてあげる」

言い表せない感情を振り払う様に鎌を呼び出し、宝石を砕く。

音も無くそれは砕け、魔力と化して霧散する。

悍ましい姿に変貌していたヴァネスの体が元の戻り、本来あるべき亡骸となって地面に倒れる。

それを合図にしたかのように、周囲に居た町人達も次々に倒れていく。

念の為確かめてみたけど、やはり彼等も既に息絶えている。

そして、勿論キネレイも、、、

流石に知った顔、それもそこそこに付き合いのあった顔が事切れているのを直視するのは胸がざわつくけど、感傷に浸る暇は無い。

まだ、フェイネルは助けられるかもしれない。

恐らく無事ではないだろう、けれど、それでもまだ生きているなら、せめて彼女だけでも助け出す。


町を後にして、次に何処に行くかを考える。

フェイネルや町に居たはずの女性達、彼女達が連れて行かれるとしたら何処になるだろうか。

一番は帝都だろう。

彼女達が慰み者として扱われているなら、あそこにあるそういう店に売り払われたと考えるのが妥当だろう。

ただ、もしもこれがラウの指示によるものだとすると、事情が変わってくる。

その場合、彼女達は何かしらの実験台にされている可能性が出てくる。

女を壊す為の何か、、、私を壊す為の何かを。

もしもそうだとすると、厄介な事として何処に連れて行かれたかの推測が難しくなる。

奴の息が掛かった軍事施設系が怪しくなるけれど、迂闊に飛び込めば人質として盾にもされてしまうだろう。

それにそもそもとして、東の島にはそういった施設は無かったはず。

地図を思い出してみても、そんな物があった覚えは無い。

、、、いや、そういう思い込みは当てにしない方が良いだろう。

ここまで規模が大きくなっているのだ、人々の記憶から消されている何かがあってもおかしくない。

寧ろ、そういった可能性も疑って動いた方がいい。

幸いにも、これまで旅してきた地の中ではまだ土地は広くない。

虱潰しで探すとしても、本気で行けば今日中には何かしらを得られるだろう。


そうと決まれば悩む暇は無い。

少しでも早く囚われている人々を探し出し、救出する。

或いは、その途中で双血の楔とも合流できるかもしれないし、そうなれば情報の共有も出来るだろう。

また雨が降り出しそうな空を仰ぎ見たあと、真っすぐに前を睨む。

軽く息を吐き出し、身体強化を掛け、一気に街道を駆け抜ける。

まずは、ここから程近い所にある町へ行く。

果たして、そこは無事なのか、それとも、、、

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